人は猫草を食べない方がいい
奇跡を期待してやってみたのだが、奇跡というのはそう簡単に起きないから奇跡なのである。人は猫草を食べない方がいい、というあたりまえのことだけがわかった。
しかし、やってみないとわからないことがあるのだ。こういうことはこれから先も進んでやっていきたいと思います。そうですよね!
猫が喜んで食べる猫草。
猫があんなに喜んで食べるということは、あの草じつは美味しいんじゃないだろうか。
どんなもんなのか、いっぺん食べてみました。
園芸屋さんや花屋さんなんかで「猫草」と呼ばれる植物が売られているのを見たことないだろうか。
猫草はその名の通り猫が食べる草である。
調べてみると、原料は燕麦、大麦、エノコログサなど、らしい。
猫が食べるといっても彼らは肉食なので、食べて猫草から栄養を補充しているわけではなく、嗜好品としてか、食べることで胃を刺激して飲み込んだ毛を吐く、みたいな理由で食べているらしい。
我が家の猫も猫草が好きでよく食べている。
猫があんなに嬉しそうに食べるのである。美味しいとか食感が気持ちいいとか、きっとそれなりに理由があるに違いない。それなら僕も食べてみたい、そう思いたくなる気持ちは理解していただけるだろう。
とはいえ一人で食べて感想を書いても客観性に欠けるというか奇行に過ぎるというか、簡単に言うと道連れがほしかったので、一緒に食べてくれる友を呼んだ。
盟友、ライター江ノ島くんと月餅さんである。
江ノ島くんは以前「ねこになりたい」という記事を書いていたので素地は確かなはずである。月餅さんは前日に、猫草食べるけど興味あるかと聞いたらあるというので来てもらった。
その前に、そもそも猫草は人が食べて大丈夫なのだろうか。理科の先生であるライターの加藤さんに聞いておいた。
というわけで大丈夫だ。安心して食べてみたいと思う。
いざ実食である。二人には自分のタイミングで食べて下さいと言っておいた。
まずは二人とも、匂いを嗅ぐ。
二人ともこの「匂いを嗅ぐ」という行動にかなりの時間を割いていた。
これははじめて猫草を与えた時のうちの猫と同じである。嗅いでみて、これは食べていいものだと判断し、そして食べる。遺伝子に刻み込まれた生き残るための行動なのかもしれない。
意を決して月餅さんが、続いて江ノ島くんが猫草を食べた。
「安藤さん!」
ごめんて、ごめん!
「これは!」
そうですよね!そうですよね!
「草ですね!!」
はい!!
責任を感じて僕も食べてみたのだが、なるほど草だった。
ドレッシングをかけたり火を通したりしたら何か少しは変わるかもしれないが、大勢が逆転することはないだろう。そのくらいに草である。
とくに苦味やエグみがあるわけではない。噛んでいるとむしろほのかに甘味を感じる瞬間もあった(二人は同意しなかったが)。だがしかし、いかんせん匂いがずっと草なのだ。地域の草刈りに参加したみたいな味がする。
猫にはこの匂いを感じる受容体がないのだろうか。それともそれを超えるなんらかの味覚が備わっているのか。
とにかく人は猫草を食べない方がいい、なぜなら美味しくないから。これ以上いうことないのでつきあってくれた二人に謝りつつ、さっさと終わりたいと思う。
奇跡を期待してやってみたのだが、奇跡というのはそう簡単に起きないから奇跡なのである。人は猫草を食べない方がいい、というあたりまえのことだけがわかった。
しかし、やってみないとわからないことがあるのだ。こういうことはこれから先も進んでやっていきたいと思います。そうですよね!
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