特集 2021年5月6日

段差スロープを知ってほしい

地面のちょっとした段差を越えるための段差スロープというものがある。まったく知らなかったが、見てみるとさまざまな種類と工夫に気づく。

これを今あえて取り上げる理由はとくにない。ただ、知ってほしいのだ。


基本3タイプを知ってほしい

段差スロープ、または段差解消スロープと呼ばれるこれら。今日はぜひ基本3タイプを知ってほしい。それさえ覚えれば、あとはおまけです。

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ミスギのハイステップコーナー

まずはこれを知ってほしい。ミスギのハイステップコーナー。

段差スロープに注目しながら歩くと本当によくこれを見かける。プラスチック製だが車に踏まれても大丈夫で、お値段もリーズナブル。シェアを広げる理由がわかる。

なお、最初に一応書いておくと、車道の側溝部分は公道であり、本来は私物を置いてはいけない。読者の皆様におかれてはお気をつけを。

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ミスギのキャスコーナー

鋳鉄製でピカピカしたタイプもある。高級感があり、重い車が乗っても大丈夫だが、その代わり高い。一枚で1万円近くするものもある。なので立派な家や高級マンションの前でよく見かける。

さっきのやつと違い、これが埋めている段差はごく浅い。車が出入りしやすいようにあらかじめ段差を切り下げる工事をしてあるからだ。しかしそのわずかな段差であっても、人はそれを埋めようとする。高級車ではなく、車椅子を押して段差を越えることを想像すると気持ちが分かる。

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縞鋼板(しまこうはん)

鉄板で段差を埋めるタイプもよく見かける。材料としてはとりあえず鉄板があればよく、加工すればその場に状況に対応できる。滑り止めにシマシマがついている縞鋼板というタイプがよく使われる。

ただし近年、都心部ではプラスチックタイプに置き換わっているようだ。車が通るとガランガランと音が響くことも影響しているだろう。

上の縞鋼板は手前に来るにしたがって幅が広がっていることに注目してほしい。ここが坂の途中のため、扉の入口での水平を保ちながら縞鋼板を並べると、地面と接するまでの距離が変わるからだ。

坂道の段差スロープはこのように現地の状況に応じて一点ものの工夫をすることがあり、それを「#ねじれの渡し」として鑑賞する人もいる。

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個性的なタイプを鑑賞していく

以上が基本3つである。ミスギのハイステップコーナー、そしてキャスコーナーを覚えれば、あたなはもう段差スロープの通だ。

ただ、段差スロープはこれだけじゃないということをどうしても知ってほしい。こんなにも個性があるぞという感覚をお伝えしたい。

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ステップエース 26

左上からアルファベットで「人間いたるところに青山あり・・」と書かれており、最後まで読むと製品の宣伝になっている(ぜひ読んでみてください)。

ただ、これがどこの製品なのかはいまだに分からない。一度、これを店先に置いているお店の方に聞いてみたが、昔のことで覚えていないとのことだった。

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ステップエース34

ちなみにこれは同じステップエースの34である。さっきのは26。つまりこちらが後発だろう。急にシンプルな滑り止め仕様になった。文字ばっかりのやつはもしかして評判がよくなかったのかもしれない。

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踏んで気持ちいいスロープNo.1

ぼくが一番好きな段差スロープだ。ミスギのセフティ・スロープ。

ゴムチップでできているので、踏むとふかふかして気持ちいい。街を歩いていてちょっと足が疲れたな、痛いなというときにこの上を歩くととても楽だ。

人様のものなので上を歩くのは抵抗があるが、ぼくは見かけたら「偶然」この上を歩くことにしている。そもそもここは公道なので、はみ出ているものを踏んでも文句は言われないだろう。

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壊れかけの radio

ただ、ゴム製のやつはぼろぼろになることもある。

それらはもともと端っこが欠けやすい。外で紫外線を浴びたり重い車に踏まれたりするのは過酷な仕事に違いないからだ。とはいえ、ここまで原型をとどめないのは珍しいが。

興味深いのは、仕事は一応果たしていることだ。原型がどうあろうが、それでも段差は埋めている。だからこそ所有者はこれをそのままにしている。本人にとっては、もう楽にしてくださいという思いかもしれない。

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鉄管スロープ

段差スロープのことを分かったつもりになっていたころ、岡山で現れた衝撃がこれである。太さの違う鉄管を横に並べて、スロープを作っている。

ピクトさん」で知られる内海慶一さんにより鉄管スロープと命名された。地元である岡山ではよく見かけるので、逆に意識していなかったという。その後の内海さんの調査により、岡山を含む周辺でもこのタイプが見られることがわかってきた。

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縦型鉄管スロープ

そして鉄管を縦に並べるタイプも見つかった。これは埼玉のものだ。

溶接のために横に通した棒は、滑り止めのステップの役割も果たしているものと思われる。右半分のほうがステップが多くて登りやすそう。

画面左側に切れているほうは、縦の管を密着させて、かわりに上から金網で覆っている。さまざまな種類の鉄の素材を自由に組み合わせて自作したことを伺わせる。たしか町の工場だった思う。こういうのを作れちゃうのってかっこいい。そして、1点ものはいい。

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鉄骨スロープ

踏む面がなく、骨だけで構成されたタイプもあった。謎だ。

本来はもっといろいろついた状態だったのが、剥がれてこうなっている、というのがありそうかなと思う。

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上部にスキマがある

よく見ると骨の上のほうにスキマがある。これは端っこまでそうなので、本来の置き方は天地逆で、排水を邪魔しないよう雨水を通すために作ったスキマだと考えると辻褄が会う。

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木じゃよ

もう驚かないと思うが、木のタイプもある。一番手前を見ると、木の板にハイヒールのようなかかとをつけることでスロープを作っている。木ヒール。

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木?

これも質感としては木だ。函館の港の近くで見つけた。船か港で使う材料を転用したのかもしれない。

奥のほうで若干そりかえっているところに味がある。また、スロープが急なのでこれ自体が新たな段差と言えなくもない。しかし90度よりはましなのだろう。

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じつはタイヤ止め

ここに置いてあるのは、もともと駐車場で車のタイヤを止めるための製品だ。コンクリート製なので丈夫だし、車関係の製品なので近いといえば近いのだが、別人である。

本来の仕事ではないことを無理やりさせる「転職」のパターンは街角物件でたまにみかける。ここでは慣れない仕事がたたり、4人中2人が真ん中から真っ二つになっている。完全に労災である。

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弱肉強食パターン

もともと置いてあった段差スロープを食うようにして、その上から新たな段差スロープを置く例もある。このようなパターンは弱肉強食と呼ばれる(『街角図鑑』著者の木村絵里子さん命名)。

もともとの鋳鉄製スロープの無言の恨みが聞こえるようである。


道路の端っこにやつはいる

足元を見てほしい。あなたがどこに住んでいようと、道路の端のほうにきっと段差スロープはいる。しかもいろんな種類がいる。びっくりするほどいる。

そして基本の3タイプ、覚えているだろうか。ミスギのハイステップコーナーとキャスコーナー、そして縞鋼板である。できればその現場ごとの工夫や生態にも目を向けてほしい。よい段差ライフを。

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