特集 2020年4月26日

練馬に県境が一目でわかる場所がある!【デジタルリマスター版】

東京都と埼玉県で明らかに歩道の作りが違う!

今まで何回か県境にまつわる記事を書いてきた。あるときはくびれた県境を見に行ったり、またあるときはショッピングセンターの中にある県境を見に行ったりしてきた。
しかし、県境は見た目でわかるというものではなく。「県境を見に行く」というレクリエーションはだいたいにおいて「境目は見えないけれど、ここが境目だと思うとテンションがあがる!」という形而上的な興奮や感動であるため、写真などのビジュアルでは伝えにくいというジレンマを抱えている。
※以下都県境は県境と表記します

2012年6月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

見た目で県境が分かる場所はないか?

一般的に県境は、川の上だとか、山の稜線にそって引かれていることが多い。
しかし、川の上や山の稜線に境目が描いてあるわけではなく、よくて県境があることを示す標識やカントリーサインと呼ばれる看板が申し訳程度に建っている程度だ。

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群馬県のカントリーサイン

ぼくのような境目好きの人間であれば「この道が群馬県と栃木県の境目か!」などと、盛り上がることができるのだけど、あまりそういうものに興味のないひとを県境に連れて行っても、何がすごいのか今ひとつピンとこない、という顔でいることが多い。

そんな県境初心者でもテンションのあがる場所が練馬区と新座市の境目にあった

そこで、見ただけでひと目で境目がわかるような場所。そんな場所があれば、県境初心者のひとでも十分楽しめるのではないだろうか?
そんな思いでGoogleストリートビューで目を皿にして探していたところ、あったのだ! 県境初心者でも楽しめそうな場所!

より大きな地図で 練馬区と新座市 を表示

地図でいえばちょうどこのあたり。大泉学園駅から北へ3キロほどの場所。これは行って見るほかない。

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県境初心者についてきてもらった

今回は、県境に関して思い入れゼロのデイリー編集部・古賀さんについてきてもらうことにした。

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地元のおばちゃんと一緒にバスを待つ

当日、大泉学園駅に集合だったにもかかわらず、間違えて隣の石神井公園駅で下車してしまうほど、地理に興味のない古賀さんに「県境面白い!」と思ってもらえれば、しめたものである。

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目的地まで10分ほどだ

大泉学園という地名は当初、大学を誘致するつもりで「学園」と名付けたものの、敢え無く大学の誘致には失敗してしまったという曰くのある地名である。
歌舞伎座を作るつもりで「歌舞伎」と名付けたものの、結局歌舞伎座は作られなかった歌舞伎町と似たようなエピソードだ。
大泉学園から北上するバスの中から町を見たかぎり、閑静な住宅街にが広がる落ち着いた雰囲気の町だ。

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バス停を降りるとすぐに県境!

しばらくすると、県境近くのバス停「天沼マーケット前」に到着。

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ほら! あそこ! 県境!

バス停を降りると、県境はすぐそこにあった。
「古賀さん! ほら! あそこ! 県境!」とぼくが興奮しつつ指し示す先を見ていただきたい。

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東京都と埼玉県で歩道のデザインがまったく違う

これほどまでに県境が明確にわかる場所はあるだろうか? 明らかに歩道のつくりが違う。

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練馬区のアスファルトは粒が粗い

車道のアスファルト舗装も、ちょうど東京都と埼玉県の県境で切れ目が入っている。すごい! 県境の明瞭さが予想以上で驚いた。
練馬区のアスファルトは粒が粗くて擦ると痛そうだ、とか皮膚感覚でもって県境を堪能できるのが素晴らしい。
古賀さんの反応はどうか!?
「ど、どうですか! 古賀さん! ちょっとワクワクしませんかっ!」
「これはちょっと面白いですねー。県境がこれだけ目に見えて判るとたしかに面白い!」
若干、感動の押し売りみたいなことになってるかもしれないけれど、なんとか「県境面白い!」との言質はとった。

そして恒例の、境界またがりの記念写真を撮る。

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一見何をしているのかわからない

この記念写真も、冷静に眺めると「なにもないところで何はしゃいでいるのだろう」という、ただのおかしいひとの写真にしか見えない。

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はしゃぎたくなる気持ちもわかるというもの

しかし、上のようにきちんと地名を書き込めば「あぁ、県境をまたいで記念写真とってんだな」とたちどころに判るという寸法である。

実は正直なことを言うと「この県境はGoogleストリートビューで見られるから、わざわざ来て見ても感動できるだろうか?」という気持ちもなくはなかった。
しかし、やはり本物を実際に見るというのは違う! 今は胸をはってそう言える。

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道路と歩道の間の境目もこの通り

なぜなら、こんな近くで県境を目の当たりにできるわけだから。
芸能人だって「実際に会うと腰が低くていい人だったよー」というような感想が多いわけだから、やはり出向いて本物をみるのは大切なのだ。

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地元のおばちゃんは知ってる

二人で県境をまたいではしゃいでいると、バス停で一緒にバスを降りたおばちゃんに「何してるの?」と訊かれた。

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偶然だろうけど、コーディネートがちょっとだけ似てる

おばちゃんの話によると、普段はそんなに県境を意識はしないけれど、歩道のつくりが違っているところが県境になっている、ということはみんなよく知っているらしい。
さらにこの後、自転車ですれ違ったおばちゃんも、すり抜けざまに「ここ、県境!」とわざわざ教えてくれた。
このあたりの県境マダムたちは、ビジターに県境の位置を教えたくて意外とウズウズしてるのかもしれない。

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よく見ると街並みの雰囲気もちょっと違う

県境鑑賞中、古賀さんが「練馬側は全体的に建物が低くて緑が多い気がする」と言い出した。
言われてみれば確かにそのとおりで、下の写真でも判るように道路が練馬に入ったとたん、両脇に街路樹が植わり始まる。植わり始まるって言葉あんまり聞いたことないけど、植わり始まってる。

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練馬区に入ると街路樹が始まる

調べてみると、大泉学園町は「風致地区」に指定されているため、建築や樹木の伐採に一定の制限が加えられているらしいのだ。この風致地区というのは、ライター三土さんが解説していた用途地域というやつの仲間だ。
もちろん、県境を越えればそこを境目に用途地域の区分も違うこともありえる。そこで、地図に新座市の都市計画図と練馬区の都市計画図を描き出してみた。

より大きな地図で 練馬区と新座市の都市計画 を表示

※東京都、練馬区、埼玉県、新座市のサイトを参考に作成。簡易的に作成したものなので正確ではありません。

地図を確認すると、一部、新座市の準工業地域と練馬区の第一種低層住居専用地域が隣接している場所がある。

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このなんともない風景も
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実は用途地域のルールに則った街並みなのだ

実際に行って見ると、ネジ工場の隣に低層住宅が建っていた。県境はわかりにくいという定説をくつがえす、まことにわかりやすい県境がそこにはあった。

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普通の風景に見えるけれど、境界があることを踏まえると……
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街並みの違いが一目瞭然

またこのネジ工場前の道も、よく見ると練馬側は樹木が多く、新座側は工場や駐車場といった無機的な街並みの境目が観察できた。
これはいい物を見た。ぼくみたいな県境好きであればこれでじゅうぶん目の保養になる。

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県境錯綜地帯へ

さらに県境を求めて住宅地を散策してみた。

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右が練馬区大泉学園町で左が新座市栄

このあたりには、家は隣同士だけど、別の県という場所も少なくない。住人の方に伺ったところ、近所付き合いは普通にするそうだけど、やはり県境を越えると隣同士でも町内会は別らしい。

県境周辺で気になるものといえば、マンホールがある。
マンホールは自治体によって管理が違うものの、中の水道管を県境通りに掘るのは難しいと見え、越境してマンホールが存在する場所がけっこうある。

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上が東京都、下が新座市のマンホール

このように、新座市の区域内に東京都のマンホールがあったり。逆に練馬区の中に新座市のマンホールがある場所もあった。
中でどういう風になっているのかわからないけれど、アボカド正しい言い方ぐらいややこしいことになっているのではないだろうか?


県境初心者におすすめの県境です

初心者にもわかりやすい県境を、地理に興味のない人に見てもらう。という趣旨で、編集部の古賀さんに同行してもらったのだけど、古賀さん放ったらかしで僕が興奮するだけの県境めぐりになってしまった感は否めない。
ただ、古賀さんはいい人なので「これぐらいわかりやすければ初心者でも十分楽しめますよ!」って言ってくれた。
ちなみに、古賀さんは歩道と車道の間の部分のつくりが、県境を境にガラッと変わっているところに、県境のダイナミズムを感じ取りグッときたらしい。そこか!

 

 

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