「説明読み」と言われているらしい
化学と科学が紛らわしいので、化学の化をわざと訓読みして、ばけがくと読むみたいな言葉。ウィキペディアを調べると「説明読み」と呼ばれているらしい。(武部良明「二字漢字語の音訓読み分けについて」)
正しい読みかたではないけれど、紛らわしさをさけるため、わざと読みを変える。
すぐ思いつくのは、私立と市立の読み分け。私立を「わたくしりつ」、市立を「いちりつ」と読み替える例だろう。
テレビのニュースなどでは、なんの説明もなく「わたくしりつの学校で〜」というふうに普通に読み上げるので、もはやこの読みが正しい読みのような印象をうける。
実際に、国語辞典で検索してみると「わたくしりつ」の読み方で項目があるものも多い。
こういう例って他にあるかな。と、数ヶ月前に、ツィッターでなんとなくツィートしたところ、めちゃくちゃな量のリプライと実例が集まったので、ひとまずそれをまとめたのがこちら。
※この一覧は、数ヶ月前にツィッターで寄せられた情報を元に、ひとまずまとめたものです。抜けているもの、読み方が違うだけのものも混じっています。完全版は白い表の方をごらんください。
「ことばてん(辞典)」、「ことてん(事典)」、「もじてん(字典)」の読み分けなどは、あぁ、そういえばそうだった……となった。
このまとめを作った後にも、引き続きかなりの情報がツィッターで寄せられたので、さらにそういった情報をまとめた一覧を作ったので見ていただきたい。
地名の説明よみ
寄せられた情報のなかで、意外と多かったのが、地名に関するものだ。
当初、固有名詞のことはまったく想定していなかったので、まとめに入れるかどうか迷ったが、そういうものもあるということで一応入れた。
複数寄せられたのが、中国の地名、広州と杭州の読み分けだ。
杭州も広州も、どちらも人口1000万を超える中国の大都市だ。
中国語では、杭州はハンジョウ、広州はグワンジョウという感じで、全く発音が異なっているので、中国語でどっちがどっちなのかわからなくなることはないだろう。
しかし、日本語で読むとどちらも「こうしゅう」という読み方になってしまう。そこで、杭州の方を「くいしゅう」と読むことがあるらしい。実際に中国在住の日本人などがよく使うようだ。
そのほか、地名では北海道の地名によくある同音の別地名を読み分ける例もたくさんあった。
門別と紋別、士別と標津、枝幸と江差などがそれだ。士別はさむらいしべつ。紋別はいともんべつ、また枝幸は「北見枝幸」、江差は「檜山江差」と言いわけることがあるらしい。
北見枝幸、檜山江差に至っては説明読みではないけれど、そういうこともある。という例として覚えておきたい。(リストには入ってません)
紋別、門別、士別、標津はアイヌ語の地名に似た発音の漢字をあてたもで、杭州と広州は元々中国語の発音があるものを、日本語の読みで読んだものだ。
これらはいずれも外国語で発音されるものを、日本語の読み方で読んでいるというところが共通している。
日本語は発音の種類が少ないので、中国語の漢字を日本語に持ってきた場合、杭と広の音読みが同じ発音のコウになってしまうような例が多い。漢語に同音異義語が多いのもそのせいだろう。
漢字そのものを説明するときに使うやつ
続いて、意外とあったのが漢字の読み方でどの漢字かを相手に伝えるときに使う読み方だ。
例えば、川と河の区別を伝えたいときによくつかう「さんぼんがわ(川)」と「さんずいがわ(河)」というやつだ。
また、異体字の文字を伝える際につかう「はしごだか(髙)」「くちだか(高)」や「おおさき(崎)」「たちさき(﨑)」または「つちよし(?)」といったものもけっこうあった。
これらはいずれも口頭で人の名前の漢字を伝える時に使うことが多い。というか、名前の文字を人に伝える時以外で使うシーンはほぼ無いのではないか?
なかには「かいかいおんな(櫻)」というのもあるという情報も寄せられたが、これは漢字の覚え方? のような気もしないでもない。
漢字を伝えるためだけに使うこういった言い方は、説明読みとはちょっと違う気もするが、それはそれで面白い。と思ったので、一部リストに入れておいた。