特集 2023年10月18日

化学を「ばけがく」と読むみたいな言葉一覧・完全版

各分野で使われている説明よみが続々あつまった 

説明読みは、各分野で独特に使われるものが多数あり、とくに目立ったのは役所関係で使われるものが多くあった。

言われて「あぁ、そういえばあったな」となったのが「くびちょう(首長)」。これは市長だとか首相と紛らわしいので説明読みしているやつだ。
子供の頃、初めて「くびちょう」を聞いた時は、そんな妖怪みたいなふざけた読み方が許されるわけがないと思ったものだが、もう慣れた。

そのほかにも「せさく(施策)」というのもあったが、これは普通によく聞くので、そういう読み方のものかと思っていた。

しかし「せさく」を国語辞典で引いてみると、どの国語辞典も「しさく(施策)を見よ」になっている。これは気づかなかった。

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区議会のようす「せさく(施策)」とかを普通に使いそう

試行と施行もおもしろい、「ためしこう(試行)」は、試しにやってみることで「ほどこしこう(施行)」は実地に行う、実施することだから、意味がまるで違う。これを聞き間違ったらたしかに大事なので、説明読みの本領がいかんなく発揮されている例といえる。

ちょっとおもしろいなと思ったのが「しまち(市町)」。

自治体の「村」が無い県。全国に13県(栃木、石川、福井、静岡、三重、滋賀、兵庫、広島、山口、香川、愛媛、佐賀、長崎)あるけれど、そういった県で県内の自治体をまとめた言い方をするとき、市町村(しちょうそん)とは言えない。だって村が無いから。
というわけなので「市町(しちょう)」というけれど、しちょうだと、市長だとか市庁みたいな同音異義語が多くて分かりづらいので「しまち(市町)」という。思わず膝を打ってしまうトリビアではないでしょうか?

「しゅっしょう(出生)」は、もともと「しゅっせい」であったものの、出征とカブるので、しゅっしょうと読むようになった……という話は、インターネットを検索するといっぱい出てくるが、どこに載っていた誰の説かちょっと分からなかったので真偽不明である。

国語辞典では、出生をしゅっせいで引くと「しゅっしょう(出生)を見よ」となっているものが多いので、今はしゅっしょうと読むのが普通になってきているのかもしれない。

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法律関係の説明読み 

法律関係もけっこうな数の説明読みがあった。

「けんばら(権原)」というのもたくさん寄せられた。権限と区別するため、こういうらしい。
法律の知識がゼロの人間にとっては、権限と権原のなにがどう違うのかわからないが、国語辞典を調べると、「けんばら(権原)」は、その行為を正当化するための法律上の根拠や原因のことをいい、「けんげん(権限)」は、命令や判断を下すことができる権利とそれを行使できる範囲のことをいう。権利の原因を言っているのか、権利を行使できる能力を言っているのかの違い、ということで合っておりますでしょうか?
同じ発音だったり、よく似た発音なのに、意味がまるで違う上に、同じようなシーンで使う。というのはまさに説明読み誕生の条件だろう。

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最初の方に「権原」の文字がみえる/志田[コウ]太郎 講述『民法總則編』明治大學出版部

法律関係でもうひとつ気になったのが、科料と過料だ。

どちらも「かりょう」と読むが「とがりょう(科料)」と「あやまちりょう(過料)」というふうに読み替えることがある。素人だと、このふたつのなにがどう違うのかよくわからない。

調べたところ、どうやら我々素人がぼんやり考えている「法律違反したときに払う罰金」というものは、金額によって言い方が違っており、千円以上1万円未満の比較的軽い罪の罰金を「科料」といい、1万円以上のものを罰金と言うということがわかった。

科料は刑事罰なので、払わなかったら(納付しなかったら)刑務所に収監されて罰金の金額分まで働かされることになる。そして刑事罰なので、めでたく前科1犯となる。

一方、過料の方は、行政上の秩序罰といい、科料とは異なり、民事上、行政上の義務違反に対するものと、条例や規則違反に対するものを過料と呼ぶ。例えば、住民票をずーっと移してないとか、裁判員に決まったのに出頭しなかった、市の条例違反をした……などの場合の罰金(過料は罰金ではないが)が過料にあたる。

過料は、前科がつかないうえに、刑務所にぶち込まれることはないものの、払わないでいると、税金の未納と同じく、財産を差し押さえられる可能性がある。

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これで「かりょう」の見分け方は完璧

※ちなみに、交通違反のときの反則金は科料の方にあたるが、運用が特別なので「反則金」というふうに区別して言っている。(で合ってますか? 詳しい方)

こんなに性質の違うものが、おなじ「かりょう」という言葉になっているのは、さすがに紛らわしいし、わかりにくい。とがりょう、あやまちりょうと説明読みしたくなるのもうなずける。

自衛隊ならではの説明よみ 

この調子で、一個ずつ紹介するときりがないので、気になったものを紹介して終わりにしたい。

「みぎげん(右舷)」「ひだりげん(左舷)」「はたぶね(旗艦)」「ぶっかんば(物干場)」は、自衛隊で使われている説明読みのようだ。

ただ、これらは騒音が激しい場所で確実に伝えるため、こう読むというものらしい。普通の説明読みと比べるとその成立の経緯がちょっと特種と言えるかもしれない。(工場などでの言葉もそうかもしれないが)

うげん、さげん、は短すぎて騒音の中だと判断つかなさそうだし、きかんは機関や帰還みたいな同じシーンで使いそうな同音異義語が多そうなので、納得できる。

ただ、物干場のことを「ぶっかんば」というのは、自衛隊豆知識みたいな話でよく聞くのでなんとなく知ってはいたものの、これは説明読みかどうかというと、微妙かもしれない。

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騒音が激しそうな自衛隊の護衛艦(「ダイエーの裏に軍艦がある」より)

各分野のひみつの合言葉を知る

法律や行政、自衛隊など、関係なければ絶対知ることがない世界だが、説明読みという切り口で見れば、その世界のひみつの合言葉を知れたような、そんな気になるのだった。

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