ちょっと聞いてよ 2023年10月16日

国名の語源をたどると「釣り針」につながる国はどこ?

英語で釣りのことをフィッシング(fishing)というのは、改めて言うまでもありませんが、このフィッシングの他に釣りを表すアングリング(angling)という単語をご存知でしょうか?

実は、国名の由来をたどると、このアングリングにゆかりのある名称を持つ国があります。それはどこでしょう?

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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フィッシングとアングリングの違い

いまのいままで、フィッシング(fishing)以外に釣りを表す言葉があるなんてことを知りませんでしたが、アングリング(angling)で画像検索すると、釣りをしている人の画像がズラズラッと出てきます。なるほど。

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anglingでGoogle画像検索すると、釣り人の写真ばかりでてくる。『AnglingFan』なんて雑誌もあるほどなので、知らないのは僕だけだったかもしれません

アングリングとフィッシング、なにがどう違うのか。

辞書などを調べると「趣味やスポーツなどで行う釣りのこと」を特にアングリングということがあるようです。

ここからは私の推測も混じりますが、アングリングと呼ばれる釣りは、基本的に釣り針を使う釣りのことを指すのではないか、ということです。

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フィッシングとアングリング

日本語で「フィッシング」というと、趣味の釣りのことを指すような気がしていますが、英語だと、でかい網でもって行う漁業も含めてフィッシングと言うそうです。それに対し、アングリングは釣り針や釣り竿を使って、個人的に行う釣りのことを指すわけです。

なぜ、そんなことを言うかと言いますと、古い英語やドイツ語で釣り針のことをアングル(angle)というからです。

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曲がった土地に名付けられたアンゲルン 

アングルは、もともとギリシャ語やラテン語や「曲がった」とか「角度」といった意味をもつ言葉のようですが、そこから釣り針を指す言葉となったようです。

地形が釣り針のように曲がっていたため、アンゲルンと名付けられたと言われる土地があります。現在のドイツ北部、ユトランド半島の付け根あたりにあるアンゲルン半島です。

5世紀ごろ、このアンゲルン半島から、グレートブリテン島に侵入してきたのが、アングル人、ジュート人、サクソン人で、いわゆるアングロ・サクソン人と呼ばれる部族です。

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アングロ・サクソン人の侵入(my work, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, ウィキメディア・コモンズ経由で)

そのうち、ブリテン島のアングル人の住んでいるあたりが、アングル人(Angles)の土地(land)という意味で、the LAND of the Anglesと呼ばれ、Anglesが、イングランド(England)と呼ばれるようになります。

なぜ、Aと書いていたのが、Eになったのか……諸説あるのですが、アングル、イングランド……発音が似てるのはなんとなくわかります。
なお、「en」と綴る文字で、ín、íŋ(インのような発音)と読む単語は、イングランド(England)やイングリッシュ(English)以外には見られないそうです。

というわけで、イングランド(England)の語源をたどると、釣り針(Angle)とつながります。

そして、このイングランドを、ポルトガル語読みすると、イングレス(Inglez)、オランダ語ではエンゲルス(Engels)となりますが、このイングレス、エンゲルスを江戸時代の日本人が訛って「エゲレス」と呼び、明治時代に「イギリス」となりました。

つまり、語源が「釣り針」とつながる国名をもつ国は、イギリスというわけです。

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せっかくロンドンまで行ったのに、運悪く工事中だったビッグベン

……と、ここまで書いておきながら、Angleの語源は、原始ゲルマン語で狭いを意味するAnguzという説もあり、その場合は浅い沿岸といった感じの意味になるようです。

まあ、そのへんは諸説ありってことで、ひとつ、よろしくお願いします。

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アングルがイギリスになるまでの大まかな流れ

以上、イギリスの語源は釣り針につながる件でした。

参考文献
寺澤芳雄『英語語源辞典』1997研究社
牧英夫『世界地名ルーツ辞典』1989創拓社
蟻川明男『世界地名語源辞典』1990古今書院

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