こうなったらコアラと蛇のままいこう
なにしろ、味が本当においしいグミだ。メールでは、新しいフレーバーにも取り組んでいると教えてくれた。
さらに、アジア輸出向けにコアラに続くオーストラリアらしい形の商品も開発中だという。
いやいや、蛇のままいきましょうよ! いこう! と、カンガルーだウォンバットだと言っていたのをすっかり忘れ、無責任ながら今やそういう気持ちでいる。
先日、輸入菓子を扱う店でばーんと明るいグミを見た。金色の「FAMOUS CANDY CO」がまぶしい。
デザインが派手ないっぽう、パッケージの文言では健康的な食べ物であることを訴えているのも興味深い。
しかしそれよりなにより気になったのが、グミの形、そしてその種類だ。
このグミ、どうもコアラと蛇の2種展開なのだ。
どういう組み合わせ……??? メーカーに聞いてみた。
動物の形のグミを2種類作ろう! と、決めてあなたはどの動物を選ぶだろうか。
一般論として、こういうときに選ばれやすいのは圧倒的にクマじゃないか。
十数年前に乳幼児を育てていたころがある。あのころ、赤ん坊のお世話にあたって何か買おうとすると、どうしてもクマのイラストから逃れられないことに気づいた。
お皿も、コップも、前掛けも、靴も、服も、レインコートもぼんやりしていると全部クマのイラストが入ってくる。
デフォルトがクマ、あらがって別の動物、という状況だった(今はまた様相も変わっているだろうとは思う)。
グミ界においても、重鎮であるハリボーの主力商品はご存じゴールデンベア、クマだ。
さらに、ハリボーといえば青リンゴ味のカエルの形のグミがある。
グミという食材に透明度があることから、陸上のどうぶつよりも水に関係するどうぶつが向いているのではという考えもきっとあろう。カエルはしっくり来る。
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そもそもハリボーにはさまざまな種類のグミがあるそうだが(アナコンダのグミもあると聞く)、それはたくさん種類があってそうなってるんだろう。
そんな中、FAMOUS CANDY COが選んだのはコアラと蛇だというのだから「すわ!」と思わざるを得ない。
2つの席しかないところに座らせる動物として、コアラと蛇はさすがにチョイスがトリッキーすぎる。
調べてみて、なぜコアラなのかはすぐにわかった。
FAMOUS CANDY COは、FAMOUS SODA COという炭酸飲料のメーカーが作っているグミであり、このFAMOUS SODA COはオーストラリアの会社なのだ。
ここで一気に、なんでコアラなのかの謎は解けた。
となると、やはり蛇が気になる。
コアラとセットなら普通に考えるとカンガルーやウォンバットになりそうだ、と思ってしまうのは私が異国民だからか。
アボリジニの使うモチーフとして蛇をよく見ると編集部の石川は言うが、コアラとの組み合わせにはギャップが大きすぎるように感じる。
FAMOUS SODA COはグミ同様、健康志向の商品がラインナップされ、日本はコストコ等で買えるようだ。
各種SNSにアカウントがあり、見ればかなりアッパーにビジネスをしているのが伝わる。
もしかすると、コアラに蛇をぶつける理由にも、このようなウェイ的な思想が由来するんだろうか。
私の世代のスーパースターでありウェイアイコンといえば浜崎あゆみだ。あゆは腰からふわふわした動物のしっぽみたいなやつをぶら下げ、我々を魅了した。
いい意味で虎の威を借るみたいな動物信仰的な発想がウェイ文化にはあると思われ、そこへきて、蛇、というのはかなりしっくりくる。
要するに、グミにするならどのどうぶつ? ではなく、タトゥーを入れるとしたら? という思考回路で蛇が選ばれたのでは……とずいぶん邪推が深まってしまった。
考えるより、ちゃんと聞こう。
問い合わせをするならば、礼儀の上でもきちんとグミ自体を味わっておきたい。
グミの袋はコンビニで売られているようなのと同様のサイズ。どちらも70g入り。
コアラと蛇、どちらも味はブラッドオレンジ、ピンクレモネード、パッションフルーツの3つの味が入っている。
おしゃれなフレーバーはひとつひとつかなり丁寧に味が調整されているのがわかる。果汁の酸っぱさをちゃんと感じてとてもジューシーだ。
ケミカルとは真逆の作り方をしていると言うだけある素材の味がする、ごく真面目なグミだった。
ところで、私は中学2年生のころ、100点満点の英語の試験で5点の結果をたたき出し、クラスでたったひとりだけ英検4級に落第した実力者である。
オーストラリアの会社に向けて、「なんでグミが蛇なんっすか?」程度の質問メールもそらでは作れない。
おぼつかない手つきで翻訳サービスを使ってよぼよぼと英作文をし、おそらくつたなさから失礼な書き方になってしまっているだろうその代わりにせめて、「すてきなグミが食べられてうれしいです」「どうしても気になっています」と、心から真摯に知りたい気持ちを込めたメールをFAMOUS SODA COのカスタマーサポートに送った。
すると、数時間後にもう返事が届いたのだ。 ありがとうございます!
興味を持ってくれてとてもうれしいというお礼からはじまった質問への答えはこうだ(もちろん翻訳サービスを使って読んだ)。
・蛇の形なら、子どもが口で噛んで引っ張ってのばせる
・誰が一番長くのばせるかを競うのに蛇がぴったり
・蛇以外の形ではこれはできない
読んで声が出た。
それだ! としか言えない。私はなんてあさはかだったんだ。
メールを読み終えて瞬間に私は「どうぶつの形のグミを作るなら絶対に蛇だ!」という気持ちになっていた。
本記事の前半の意味がまったく失われた瞬間である。
メールは「あなたがアンバサダーになれば、日本でも蛇のばしブームを巻き起こせます!」とのはげましでしめくくられていた。
アンバサダーといえばネスカフェアンバサダーにばかり気を取られていたが、まさか蛇のばしアンバサダーに任命されてしまった。
これからがんばっていくしかない。
なにしろ、味が本当においしいグミだ。メールでは、新しいフレーバーにも取り組んでいると教えてくれた。
さらに、アジア輸出向けにコアラに続くオーストラリアらしい形の商品も開発中だという。
いやいや、蛇のままいきましょうよ! いこう! と、カンガルーだウォンバットだと言っていたのをすっかり忘れ、無責任ながら今やそういう気持ちでいる。
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