年末年始とくべつ企画 2020年1月4日

イオンと道の駅の往復する旅~新幹線の駅にひとり置き去り~

いろんな人を置き去りにしてきたこの旅。いよいよ自分にもお鉢が回って来た。降りるは青森県の七戸十和田駅。

これは旅行が下手な人間が、周りにあまりなにもなさそうな駅に降ろされたらどうなるか、という手記である。

※この記事は年末年始とくべつ企画「新幹線の駅でひとりだけ置き去りにされたい」の記事です。

1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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旅行がへた

旅行がへただ。

というか、まずあるだろう、旅のうまい・へたが。うまい人は適切な場所へ適切なルートで適切な時間に理想的な行動することができるとしたら、へたな人はその逆だ。適切で理想的な選択がなんなのかわからないのだ。

ぼくは台湾に行ってお昼を何にしようかという段になって、どうしていいかわからなくてサイゼリヤに行ってしまうほどだ。ぼくの旅力は知力に例えたらおさるさんレベルだと思ってほしい。

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台湾でわざわざ行くか? というお話です

失敗も含めて旅なんだからなんでもいいじゃないか、という人もいるかもしれない。そう思う人はこの記事を最後までしっかり読んでほしい。

計画が立てられない

さて今回の目的地は「七戸十和田駅」。聞いたことのない駅だがルール上、電車内で検索は禁止だ。つまり計画が立てられない。

しかし座席後部の網に挟まれた冊子を読む。これは検索ではないからOKだろう。冊子には東北の路線図が載っていることに気がついた。これはなにかヒントになりそうだ。

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うん、駅の周りになにもない。

マイナスのヒントだった。地図を見ると七戸十和田駅のまわりに在来線が通ってない。どこにもいけない気がしてきた。駅前でポツーンと立っている自分を想像した。恐ろしすぎる。

だが、その次のページをめくると氷瀑が見どころだと書いてある。シャトルバスがあるそうだ。

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凍った滝、氷瀑。これが見られるらしい。

こういう自然があるなら満足できそうだ。たとえ周りに何もなかったとしても、自然を楽しむ方面で旅程を立てるのもいいかもしれない。すこし安心した。

見どころを細かく拾っていく

まずこちらをご覧ください。

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七戸十和田駅直前の車窓のようす

新幹線の車内から見た七戸十和田駅周辺には民家もなにもなかった。さっきの安心、やっぱりなし!

ここに12時過ぎから6時間である。細かいところを拾っていかないと記事も書けないかもしれないと思い、駅のホームに着いてから焦って妙な写真を撮っていた。

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駅のホームのイスに座布団が敷かれているのを写真に撮った。
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顔ハメ看板での記念写真も抜かりなく撮った。
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青森をモチーフにしたガチャガチャもあったので…
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回した。三内丸山遺跡。あたりだ。
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駅に自由に弾いていいピアノがあったので弾くふりをした写真も撮った。
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あとから来た子どもが、僕が離れたあとピアノを弾いたのだが、めちゃくちゃ上手だった

道の駅とイオンだけがある

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観光案内所に来た

さて、これからどうするか。駅の観光案内所で、このあたりになにか見るものはないかと聞いてみると、町の美術館と道の駅以外には「特にない」とのことだった。グーグルホームでいうところの「すみません、お役に立てません」のようだった。

「どれくらい時間ありますか?」と聞かれたので4,5時間ですねと答えると「……けっこう…ありますね」と言われてしまった。七戸十和田駅周辺で4,5時間はけっこうあるようだ。本当は6時間あるというのに。

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「ようこそ七戸十和田へ」ではなく「ようこそ青森へ」だった。要するに、そういうことか。

加えて、十和田(歩いては行けない)まで行けば美術館などがあるらしいことと、歩いて30分くらいのところに手作りジェラートが食べられる店があることも教えてもらった。

十和田は問題外としてジェラートか。季節の問題があるな。うーん決めた、行かない! 行かないことにした。

読者の中にはこう思う人もいるだろう、他に行く場所もなさそうなんだから行きなさいよ、と。それに対して僕はこう答えるしかない。「そりゃ、そうなんだけど……」

ともかく十和田やジェラートには行かないと決めたのだから、あとは道の駅と駅からすぐ見えるイオンでどのくらいがんばれるかの勝負になってくる。

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氷瀑? 1月かららしいですよ。
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七戸十和田駅到着記念写真

記念写真を撮ったあと、ため息を付いて歩き出した。ため息のために吸う空気が美味しいのが腹が立つ。しかし何が起こるかわからない。まずは道の駅に向かってみよう。

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道の駅に行く途中で見つけた看板。地元の人ならどういう歌なのかわかるのだろうか
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道の駅へ

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道の駅七彩館

道の駅は新幹線の駅から歩いて5分くらいのところにあった。近くて便利だと思う反面、もうすこし遠ければなにかいいスポットが見つかったのではという思いもあった。難しいところである。

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道の駅ではさまざまな野菜や漬物が売られていた

道の駅は平日昼間にも関わらずお客さんで賑わっていた。地元の人がふつうに買いに来ている様子だった。

個人的に気になるのが、道の駅で売られている野菜などの生産者の名前。珍しい名前の方がいるので観察する。

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意外な名前に遭遇することがある(個人情報なのでぼかしますが)

珍しい名前「熊内トツゑ(仮名)」とか「大日向ハサ(仮名)」とか書かれているのを見ると、かなりご年配の方が元気に農産物や漬物を作っているのだなあと推察される。だってネーミングセンスがどう考えても現代ではない。道の駅の一つの見所だ。

…などと楽しんでもまだ5時間ある。

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すごくやってそうでやってない道の駅内の唐揚げ屋。定休日だった。

お昼も過ぎてお腹も空いてきたので道の駅の食堂で一息つくことにしよう。 

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手打ちのそば、おいしかった

頼んだのはこの山菜そば。麺の細さがバラバラだな…手打ちそばか、と思いながら一口食べてみる。すると期待する以上に蕎麦の香りが高い。おいしい田舎そばだ。

温かいそばにしたが冷たいほうで食べても良かったかもしれない。

もっとそばを食べたいと思ったものの、もう一杯頼むにはお腹が膨れていたので、サイドメニューの欄にあった「そば串もち」を頼んだ。

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そば串もち。

表面には「じゅねタレ」という、えごまと味噌を混ぜたものが塗られていた。

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こちらは麺にしたそば以上にそばの荒々しい面(えぐみ)を詰め込んだような味がするのだが、それがなぜだか美味しかった。
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「昔なつかしい」というフレーズにはときおり疑問符がつくことがある。しかし、こんなにはっきりと昔なつかしくないものにであうとは。はじめて食べたよ。

お腹も膨れたのでイオンに向かおう。

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イオンへ

まだ時間はたっぷりある。ポジティブに捉えてみよう。イオンに行く時間がたっぷりあると。身支度をしてイオンへ向かう。

途中、こんなのがあった。

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山車の展示館

道の駅とイオンの間に倉庫のような建物があった。しちのへ秋まつり山車展示館と書かれている。アクリルの扉から中を覗くと山車が置かれていた。

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が、ドアは開かなかった

入り口は→と書かれていて、いかにも入れそうな展示館だったが、ドアには鍵がかかっていて入れなかった。この新幹線置き去りの旅、どこかしら入れない率が高い気がしている。

そういえば平日の昼間である。開いてないこともあるだろうと思い、外からくもりがかったアクリル板ごしに写真を撮ってみた。かっこいい山車が3台くらい設置してあった。

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外からアクリル板ごしに撮った写真。我々が知っている本能寺の変とだいぶ違うが、かっこいい山車だ。

そして再びイオンへ向かう。

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でかい。

駅前にあるけど郊外のイオンらしく、1階しかなくものすごく広かった。

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入っていきなりかばん売り場だった。アバンギャルドなイオンだなと思ったが、もうひとつの奥の出入り口はふつうに食品コーナーがお目見えするようだった。
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消失点があるイオン

広い。腸を広げるとテニスコート何面分という話があるが、4階建てのイオンも広げるとこうなるのだ。どちらも同じなのに、こっちのほうが「なんでも売ってる!」と感覚が強い。

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こたつも売られてるし
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ゲームも当然売られている

冷静になるとふつうな気もする。「イオンが広い」で感激できるのはちょっと旅行ハイになっていたからかもしれない。

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美術館そして温泉

一通り見たイオンを出て、観光案内所で教えてもらった町の美術館へ向かうことにした。

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鷹山宇一記念美術館

小中学生が書いた絵の展覧会が開かれていた。中は撮影禁止だったが、近頃の小中学生の絵のレベルがかなり高かった。さすが展示されるだけはあった。もしかしたら七戸のレベルが高いのかもしれない。

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あと美術館の横に七戸だからか7の字のオブジェがあった

さらに道の駅に戻り、もう一度イオンに行く(ここ、特段発見がなかったので文字だけで済ませます)

道の駅とイオンを往復してようやく3時。あと3時間ある。イオンを出てフラフラ歩いていると東八甲田温泉という看板が遠くに見えた。温泉だ!

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それにしてもここは七戸なのか十和田なのか東八甲田なのかわからなくなる。
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「ゆ」がいい

調べてみると日帰り入浴もできるようだ。行ってみることにした。

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と、その前にもう一度イオンに行ってタオルとボディソープを買ってきた。イオンを使いこなしてきている。

中に入ってみると、ふつうの風呂の他に檜風呂とたぶん50度くらいの熱(あつ)湯、水風呂があった。

体を洗ったあと熱湯と水風呂を3往復して出た。交互浴の意味が未だわからないぼくだが、なんとなくだるくなった体がしゃきっとしたような気がする。

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お風呂から出て、アイスモナカを食べながらテレビで通販番組を見る。これが七戸十和田だ。
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テレビでは北海道の松前漬けを売っていた。青森の人も北海道の松前漬けに憧れるのだろうか。そして1.2kgも食べられるのか。

温泉を出て残り2時間。何をしていたかと言うと…

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最後に道の駅に行ってお土産を買いました

残りの1.5時間ずっと道の駅をぐるぐる回ってたらお土産買いすぎました。


下手だけど、それで平気

およそ6時間道の駅とイオンを往復する旅だった。絶対に過ごせないと思っていたがちゃんと時間は過ぎていった。誰かと一緒に行動していたら、その誰かは途中で期限を悪くしたかもしれないが、僕はまったくふつうに過ごせた(疲れたけど)。

イオンと道の駅を往復する旅行。それでも平気なぼくはいつまで経っても旅行が上手にならなそうだ。

その他の感想としてはこうである。

・今になってジェラートが気になっている
・もう一回そば食べれた
・あとで調べたら十和田に行くバスがあった

以上である。

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帰りは青森の売店で売られていた新聞を買って読んだ。社説で「最近は本を読む人が減っている」から「青森出身の指揮者〇〇さんは『本は世界を広げてくれる』と言っている」へと見事につないでいた。社説を毎日青森関連の話題につなげているとしたらすごい。
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