年末年始とくべつ企画 2019年12月28日

鉄道の街大宮でハイエナ見てナポリタンを食う~新幹線の駅にひとり置き去り~

東京から新幹線に乗って、大宮に置き去りにされました。乗車時間25分

2019年の「住みたい街ランキング」で、横浜・恵比寿・吉祥寺と来ての第4位が、大宮。駅には12路線が乗り入れ、都心へのアクセスも抜群。程よく賑わっていて、かつ、家賃もそこそこ安い大宮。

なるほど、確かに住みたい街かもしれない。でも、個人的に言わせてもらえば「新幹線で降りたい街」じゃなかった気もするのだ。

いま、僕は大宮で途方に暮れています。

 

※この記事は年末年始とくべつ企画「新幹線の駅でひとりだけ置き去りにされたい」の記事です。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

07時15分 東京駅丸の内口

デイリーポータルZ 年末年始企画「新幹線で置き去り」の旅は、東京駅でのくじ引きからスタートした。

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この中には、大宮〜新函館北斗までのチケットが。どうせ行くなら遠いところに行きたい。
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ハイ引いた−。最短距離引いたー。

企画担当の編集安藤さんが並べた中から、僕が取ったのが「東京→大宮」と印刷された新幹線チケット。今回の企画で最も東京から近い置き去りスポットである。

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「わざわざ東北・北海道新幹線に乗って、埼玉て」というあからさまな表情。

東京駅朝7時56分の東北新幹線はやぶさに乗って、大宮着が8時21分。僕以外の宮城や青森、北海道まで行くライター陣(大宮の次はもう仙台だ)が車内で浮かれた駅弁だのお菓子だの広げ出すのを横目に、ひとりペットボトルのお茶をすする。どうせすぐ着くし。
たぶん他のみんなの記事は、楽しそうに新幹線車内でワイワイしてるところも書かれているんだろうな。

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「浮かれたのを買っちゃいましたよー」と駅弁を手に楽しそうな編集長林さん。

大宮着の車内アナウンスが流れる中、北海道の気温にも耐えられるようにと準備した分厚いコートを抱えて、ホームに降り立つ。
窓からみんなが手を振ってくれているので、とりあえず笑顔で振り返してみる。あとからもらった写真を見たら、ここ数年でいちばん心のない笑顔だった。

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東北とか北海道行きたかったんだよ。大宮で降りる予定は無かったんだよ。

…という流れで、関東平野すら出ることなく、朝の通勤客で賑わう大宮で早々に置き去りにされた次第だ。
ちなみに帰りはまた全員同じ新幹線に乗り合わせて帰る約束なので、一番東京に近い僕は、今から12時間以上、大宮にいることに。

08時40分 大宮駅前

今回は、「新幹線車内では取材地の情報収集禁止、ネタ探しは現地に着いてから」というルールにより、完全にノーガードで現地に立つことになる。
そこでひとまず駅前のファストフード店で朝食を摂りつつ、腰を落ち着けて検索を開始することにした。どうせ時間はたっぷりあるんだしー。

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取材先でまず頼りにするのが観光案内所なんだけど、まだ開いてないし。

とはいえネタを探すにしても、大宮である。

いや、ディスるつもりはさらさらなくて、逆にあまりにも都会すぎ。旅取材っぽく行ける珍しいスポットとか、無いじゃないか。

とりあえず、大宮と言えばまずあそこ的な場所が開くまで、もうちょいのんびりしようと思う。

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10時05分 鉄道博物館

そういやまだ来たこと無かったし、一度は見とくか的な感じで鉄道博物館である。

平日午前中だというのに、鉄博に向かうニューシャトル(ゆりかもめみたいな新交通システム)の車内は、鉄道好きと思しき人たちでけっこういっぱい。

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自分に鉄成分は無いけど、90近くグイッと曲がってホームに入ってくるニューシャトルはかっこいいと思う。

僕の隣に乗り込んできた4~5歳ぐらいの男の子など、この時点からテンション上がりきってるらしく、ニッコニコ顔で「ニューシャトルはかっこいいね!」「音が静か!さすがニューシャトル!」と、同行の母親に向けてニューシャトルをずっと絶賛し続けている。

そんな状態で鉄博に着いたら、彼はどうなっちゃうんだろうか。

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広い空間に実車両がダーッと並ぶ鉄道博物館。鉄道知らなくても自動的に気分が盛り上がる。

ということで鉄博に着いたんだけど、おおー、広くてきれいだ。

遙か昔に須田町時代の交通博物館には行ったことあったんだけど、さすがにあれとは全く違うな。

僕は鉄道好きの素養を全く持ち合わせていないので、展示物がどれぐらいすごいかとか、その辺は分からない。でも、なんとなくボーッと見ているだけでも充分に面白い気がする。

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なぜかうんこ座りで写真を撮る親子。
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本館と北館の間(約200m)をつなぐミニ新幹線。

つい2時間前に降りたばかりの東北新幹線「はやぶさE5系の運転シミュレータ」というのもあったので、よしじゃあそれやるか、と思ったら、すでに予約一杯で今日の受け付けは終了の文字が。えーマジかー。

これをやりたいなら、鉄博オープンと同時に飛び込んで予約しないと、間に合わないとのこと。今日はとことん新幹線に縁のない日っぽい。

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早々に予約終了のE5系シミュレータ。楽しそうだなー。

仕方ないので、再び実物車両の展示を見たり、、鉄道ジオラマを見たり、鉄道の原理・しくみの展示を見たり、と館内をブラブラ。

めちゃくちゃボリュームあるので、これ、鉄道に詳しかったら、余裕でまる1日ぎっちり遊べるんだろうなー。知識が無いせいで、ひとつひとつを「へー」と流し見しするぐらいしかできないのが、ちょっと悔しいぐらいだ。

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電車が走る巨大ジオラマ。お姉さんが操作するパネルがやたらかっこいい。
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鉄道科学展示の一例。ゴムタイヤより鉄道車輪の方が摩擦効率いいんだからな!と身をもって体験させるハードなやつ。

ぼんやり見てるうちにお昼になったので、館内で昼食を摂ることに。

レストランっぽいのもあったけど、なんと売店で駅弁が買えて、しかも電車を改造した食事スペース「ランチトレイン」なるものを発見。あ、じゃあ、ここで朝食べられなかった駅弁を食えばいいんだな。

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お弁当を食べる専用車両。これ楽しいな。
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これで駅弁食べたい欲は満たされた。満足。

満足してまた館内ブラつき始めたら、行きのニューシャトルを絶賛していた彼(と母親)と、たまたますれ違った。

なんかさっきまでと一転してぼんやり歩いてたんだけど、なにがあったんだろう。初手から大放電しすぎて早くも電池切れしたのか。

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14時20分 大宮公園小動物園

次の大宮スポットは、朝のうちに「なんか面白そうなとこあるかなー」と検索して見つけた、動物園である。ちょっと距離あるけど、鉄道博物館から歩けそうだ。

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これ、本当に普段は稼働してるのか?…という古び具合のミニ遊園地。シャッターの閉まってる部分はメリーゴーランドになってるらしい。
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小動物園のゲート。「大宮公園小動物園なう!」の看板がコク深い。

大宮公園という大きめの県営公園の中で、やや不穏な気配のする古いミニ遊園地(今日は定休日だった)の隣にちまっと「動物園」の看板があった。入園無料らしいので、気軽に入れるな。

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寒くても意外と活動的で見応えのあるヤギ。

中はかなりコンパクトで、小走りなら2分ぐらいで一周できるサイズ。飼育されている動物も、いきなり入り口正面が「ヤギ」と「オウム」というぐらいのお手軽さである。

ただ、そのお手軽感ゆえか、見る側の人間と動物の距離感がやたらめったら近い。もちろんケージはちゃんとあるんだけど、そのすぐ手前まで人間が立ち入れる感じ。あまり他の動物園では感じたことのない距離感なのだ。

動物のストレスとか大丈夫かと心配にもなるが、もしかしてストレスになるほどお客が来ないのか。

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客のすぐ目の前まで来てくれるリスザル。
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今年の8月に子どもが生まれたクビワペッカリーの一家(イノシシの仲間)。
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あくびをするアムールヤマネコ。普段はあのリンゴ箱の中で寝てるのかと思うと、自宅っぽさがある。

ちょっと面白かったのが、ツキノワグマとブチハイエナの「よくばりコーナー」という場所。

要するに、隣り合うツキノワグマとハイエナのケージの中央にくぼみのような小さいスペースがあって、ここからどっちも見えるよ、というだけの話らしい。

たかだかそれぐらいのことで「よくばり」呼ばわりされるのも、わりと心外だぞ。

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「うどんとそばが両方食べられるよくばりセット」的な意味合いなのか、ハイエナとクマのよくばりコーナー。
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ハイエナ、近い。
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クマも近い。

ここのクマとハイエナも、アクリル板を挟んでほぼゼロ距離まで近づけるのはすごい。ハイエナをこんな至近距離で見たのは初めてだ。

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眼の虚ろさにゾクゾクする「ドングリポスト」
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これまでハイエナとクマの口の中に興味を持ったことなかったが、見てみようと言われると気になるな。
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牛、丸呑みされてないか。

あと、拾ったドングリを入れておくとクマのエサとして活用してくれる「ドングリポスト」や、ハイエナとクマの口の中を見てみよう、という可動式パネルなどもすぐ側にあり、「この小動物園のメイン展示はここですよ!」的な園側からの強いアピールを感じた。

15時50分 大宮駅前

小動物園、舐めてたけどわりと面白くて、3周ぐらいしてしまった。それでも滞在1時間ちょっとだけど。

しかし、次に行く予定にしていた「大宮盆栽美術館」が、念のためにスマホで確認したら定休日だった、という事態に。盆栽、見たかったのに。

仕方なく、いちど大宮駅まで戻ってきて、ぼんやりと休憩することにした。

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大宮駅近くの名物ロケットビル。中は賃貸オフィスもあるので、一度は借りてみたい。

駅近くのドトールで一息つきながらこの原稿を書いてると、今回の企画最果ての新函館北斗で降りた組から「もう函館を出ました。滞在50分ぐらい」というメッセージが入った。

こっちは大宮滞在7時間で、けっこう持て余してるんだけど。あっちはあっちで大変っぽい。

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17時45分 喫茶 伯爵邸

実は鉄道博物館のミュージアムショップで、大宮みやげとしてこんなものを売っていたのだけど…これ、ご存知だっただろうか。

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鉄博ショップで見つけた「大宮ナポリタン」のスナック菓子。そんなご当地メシがあったのか。

いや、みやげもの自体ではなくて、「大宮ナポリタン」という概念の話である。

寡聞ながら、大宮がナポリタンを名物にしているのを知らなかったのだ。調べてみると、鉄道の街 大宮で、国鉄時代の鉄道員が好んで食べていたナポリタンを、ご当地グルメとして復活させた…というストーリーらしい。へー。

ということで、駅近くにある大宮ナポリタン発祥の喫茶店「伯爵邸」に来てみた。

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路地にあるのに、大通り側からでも一発で「あれだな」と見つけられた喫茶店「伯爵邸」

検索した時点では「なんか押し出しの強い店名だな」と思っていたけど、来てみたら、外観の圧もなかなかのものだ。

今や割と珍しい24時間営業の喫茶店とのことで、たぶん深夜とか、このイルミネーションを目印に来店する人も多いのかもしれない。

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外観の雰囲気から想像したのと1㎜のズレもない、パーフェクトな内装。

店の前でクリスマスツリーの撤去作業をしていたおばちゃんに「ここ、大宮ナポリタン発祥のお店なんすか?」と聞いたら、酒焼けしたダミ越えで「それがウリよー」とニヤッと笑われた。なんかこのニヤッていうリアクションする人、久しぶりに見たな。

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ボリュームの怪物、大宮ナポリタン全部盛り。こっそりメジャーで測ったらお皿の直径が28㎝あった。

注文したのは「大宮ナポリタン トッピング全部盛り」。

メニューのナポリタンのところにトッピングリストがズラッと並んでいて、最後に「全部盛り」というのがあったので、もしやこれが大宮ナポリタンの神髄なのか?と思って注文してみたんだけど。

目玉焼き・イカ唐揚げ・チーズ・スクランブルエッグ・ロースカツ・ソーセージ・若鶏唐揚げ・ベーコンが大盛りナポリタンの上にさらに積み上げられて、ビジュアルがエグい。

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山のようなトッピングを掘り起こしてナポリタンにたどり着くまでが一苦労。

味はというと、うん、普通にうまいナポリタンに、目玉焼きとイカからあげとチーズとスクランブルエッグとロースカツとソーセージと若鶏からあげとベーコンを乗せた味、としか表現できない。

大宮ナポリタン自体には特になにか味付けで特徴があるわけじゃなくて、なにかひとつ埼玉県産の野菜を使っていたら「大宮ナポリタン」なんだそうだ。なんだ、トッピングは関係ないのか。

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フレンチトースト以外にお嬢様感はないし、全体的には山賊の食い物に近いと思う。

メニューには他に、大宮ナポリタンと唐揚げとフレンチトースト、という不可解な組み合わせの「お嬢様セット」というのもあった。もし次に食べる機会があったら、これも頼んでみよう。

20時39分 大宮駅 新幹線ホーム

朝に置き去りにされたときには「12時間、なにして過ごせばいいのか」と途方に暮れていたんだけど、終わってみれば、さんざん遊んで十分すぎる取れ高という結果に。なんだよ大宮、新幹線で降りても楽しい街じゃないか。

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ホームに入ってきた東北新幹線はやぶさ。あれにもうみんなが乗ってるはずなので、合流して帰ります。

参加ライター陣のグループメッセで「駅が真っ暗」「時間になっても電車が来ない」「ガチ雪」などの辛そうな声が聞こえてくる中、有り余る時間を活用して喫茶店でのんびり原稿書いたりしていたので、むしろ申し訳ないぐらいの気持ちだ。

ということで、当初の想定よりかなり楽しかった大宮滞在を終えて、帰ります。


参加ライターのグループメッセといえば、途中からなぜか「道の駅で売ってる銀杏の値段を比べ合う」というバトルが発生していた。

もちろん道の駅なんて近場に見つからないし、一袋200円!などの爆安な画像が送られてくる流れに乗れなくて悔しかったので、「大宮駅前のそごうでは394円でしたよ」という報告をもってこの記事のシメとしたい。

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さすが都会の銀杏は高い、という当然の結論。
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