そういえば自然とバケツリレーをやっていた
翻って思い出すと飲み会の席で頼んだビールを横に回すとき、バケツリレーみたいなことを自然にやっている。効率よりも移動しないで済む、というところにメリットがあるのかもしれない。
メリットうんぬんじゃなくて楽しかったというのが一番の感想ですが!
ということで手軽にチームプレーが味わえる夏の爽やかなスポーツとしてバケツリレーはいかがだろうか。
ある日不意に頭をもたげた「バケツリレー」という存在。聞いたことはあるけどやったことはない行為である。
そしてまた同時に思う、バケツがあるならみんな自由に走ったほうが水を運ぶ効率がいいんじゃないか。
バケツリレー。例えるならそれはかつての「うさぎ跳び」や「布団叩き」のように、現代ではやらないほうがいい方法なのかもしれない……いや、そう決めつけるのも早急だ。
実際にやってみることにした。
梅雨の曇り空という屋根がやぶれて、それまで空に溜まっていた日光が一気に降り注いだように暑い日だった。人生で初めてバケツリレーをやる日として悪くない、やってやろうじゃないか。
一人ではバケツリレーはできないので、DPZをはげます会の会員(はげまシスト)から10人のメンバーを募った。プラス編集部から二人、安藤と藤原(筆者)の12人体制で行う。
みんなそれぞれの個性を持つが、我々の共通点は一つだ。
「バケツリレー、やってみたい」
この暑さの中集まってくれただけあってやる気は十分の頼れるクロスファンクショナルチームである。ありがたい。
さて、今日やりたいのはバケツリレーとバラバラに運ぶ方法どちらが速いのか、タイムを競うことだ。バケツを持って水を運ぶということ自体非日常なので、実験というより競技だと思ってほしい。
川から汲んだ水を、およそ100Lの容積があるビニールプールに入れる。満杯にするまでのタイムを調べるという方式だ。
ただ単に水を運ぶだけだと無意味な労働だ。そこ、どうしても早くビニールプールに入って遊びたいと泣くこどもの願いを1秒でも早く叶える、という場面を想像してほしい。世界は意思によって現れてくるものだ。
読者の方においては、一旦ここで止まって考えてみてほしい。バケツリレーとバラバラ二個別で運ぶ、どちらが速いかを。
では早速バケツリレーをはじめる。
と、その前にチーム感を出すためハチマキをすることにした。白ハチマキがバケツリレーチームで、赤ハチマキがバラバラに運ぶチームだ。無論、メンバーは同一人物。やるごとにハチマキの色を変える、自分VS自分の解離性バトルである。
赤チームも白チームも負けないようがんばってもらいたい。
まずはじめに基準となるバケツリレー(白チーム)のタイムを出そう。
渡す相手が斜め前に立つようにジグザグに整列する。バケツは10個あるし万全の状態だ。
もちろん参加者はみんなこんなお膳立てしたバケツリレーなんてやったことがない。
僕が川岸に経ってバケツで水をすくい、次の人に渡す。川の流れは速いように見えるが、岸には草が生えていてほとんど流れは見えない。水を汲むのには最適な場所だ。「最適な場所」というのはたとえ川でも状況によってはあるんだな、と思った。
全員が配置について準備万端になると、僕の「いきま~す」とほんとに行けるのか不安な掛け声をスタートに、つぎつぎとバケツを送り込んでいく。
僕の視点からだと、一度バケツを渡して、水を汲んで、また渡すとはじめのバケツがけっこう先の方まで運ばれていた。
記録、1分37秒。
川から水をおよそ100L運ぶのにこの時間がかかった。
まだ比較対象がないので意味を持たない数字だ。だが、やりとげた感はある。小さな運動会のようだった。
しかしぼくは水を汲むのに普段とはちがう筋肉を使ったので(特に腰)、青い空の下で死にかけていた。何杯で終わるかわからないバケツに水を入れる作業に「助けて」としか思わなくなっていた。
次にバラバラに個別でバケツを運ぶのをやる(赤チーム)。
ぼくの腰は天に召されたのでバケツに水を汲むのは編集部安藤にバトンタッチした。
運ぶのは個別だが水を汲むところも個別にするとぶつかったり転んだり危険そうなので、安藤が順番に水を汲んだバケツを渡す方式になる。つまり水源は一つになる。
そしてスタート。
まずどうなったかというと長い行列ができた。その横をバケツを持った人が競歩くらいのスピードで通り過ぎていく。
水源はバケツリレーと同じなのでこの長い行列は不利か。
しかも、自分はただ並んでいるだけ、横には頑張って運んでいるという精神的負荷がすごい。力になれてない感がすごいのだ。
バケツリレーならバケツを持ってない間でも「参加してる感」はあったはずなのに。
その記録、1分36秒。先ほどの1分37秒とほぼ同タイムである。
同タイムならバケツリレーはそんなに効率がいいとはいえなさそうだ。
そう結論づけていいのだろうか。もう一度だけそれぞれ試して結論を出したい(せっかく集まったのだからもう一回やりたかったのもある)。
ここで一度水分補給のため休憩を挟む。暑さに慣れてない体では、立っているだけもくらくらするくらいの気候だ。
休みながら自己紹介でもしていこう。
このタイミングで自己紹介をしたのは、これによって連帯感が強まって息があうようになるのではないか、という見込みがあった。これがタイムにどう関わってくるか。
休憩もを終え、その後再びバケツリレーの配置につこうとすると
「〇〇さん、ハチマキの色変わってないですよ」
「××さん、もう一歩奥に行くといい感じですね」
などと呼びかけるシーンも見かけた。さっそくの絆である。
バケツリレーをしたい人はいい人たちなのかもしれない。
バケツリレーが生み出した絆。感動的な協力プレーである。これは期待できる!と思った。たった2回のバケツ運びで「作業」だったのが、チームとしての「仕事」になったのを目の当たりにした。
その結果はどうだったか。
白チーム バケツリレー 1分55秒
赤チーム 個別に運ぶ 1分26秒
のべ4回目のバケツ運び、結果はチーム感のない「個別に運ぶ」が圧倒的にはやかった。これをどう受け止めたらいいだろうか。
ここに2つの推察がある。
ひとつ、2回めのバケツリレーの遅さは疲れによるもの。
ふたつ、最後の個別での速さは「早く終わらせたい!」という思いがみんなの意志が一つになったことによるもの。
とにかく熱中しすぎて、みんな終わったあとヘトヘトになっていた。
ただバケツリレーをやりたかっただけなので(言ってしまった)、この結果で結論めいたことは言えないのだが、あえていうとバケツリレーと個別バラバラはタイム的にも体力的にも大差はないように思えた。
今回は10人で10mくらいのコースを用意したが、もっと距離が伸びたりバケツの数が少なかったりした場合、バケツリレーの方が速くなることもあるかもしれない。その分水嶺がどこにあるのかは、今後の課題としよう。バケツリレーの道は長く遠い。
翻って思い出すと飲み会の席で頼んだビールを横に回すとき、バケツリレーみたいなことを自然にやっている。効率よりも移動しないで済む、というところにメリットがあるのかもしれない。
メリットうんぬんじゃなくて楽しかったというのが一番の感想ですが!
ということで手軽にチームプレーが味わえる夏の爽やかなスポーツとしてバケツリレーはいかがだろうか。
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