特集 2018年8月29日

最恐ハブ!? 徳之島のハブ探し

褐色のクールな暗殺マシーン登場!
褐色のクールな暗殺マシーン登場!
徳之島に住むハブは気性が荒く、日本のハブの中では最恐説もまことしやかにささやかれている。そんなおそろしくもかっこいいハブを見に徳之島へ飛んだ。そこに存在したのは最恐説にふさわしい威厳をまとったハブと、それをシンプルに収納した館だった。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

風と共に上陸

台風がかすめるのとほぼ同時に徳之島に上陸した。
ひょっとしたら鹿児島に引き返すかもと警告されたが約2時間遅れで到着。
ひょっとしたら鹿児島に引き返すかもと警告されたが約2時間遅れで到着。
ちょっと開けただけで車のドアがもぎ取れてパチンコ屋やコンビニにぶっ刺さるんじゃないかと心配になるほどの強風だが割と皆淡々と生活している。
海は海神が現れそうなくらい大荒れ。
海は海神が現れそうなくらい大荒れ。
徳之島は鹿児島の南南西492キロ、奄美大島から沖縄まで飛び石のように連なっている奄美群島の中心に位置する。
かって男性長寿世界一だった泉重千代さんが生まれ育ち、現在も出生率は全国No.1。
「子宝空港」はだてじゃない。
「子宝空港」はだてじゃない。
そのエネルギッシュさを象徴するように、観光開発のされていない素朴で水源豊かな環境で草木はがんがん茂りぬいている。
道が森に還りそうな勢い。
道が森に還りそうな勢い。
私は夏に食欲が落ちる傾向があるのだが、以前母方の実家の近くの坊さんに「お前そのへんの草木を見てみろ、夏にこそぐんぐん育つだぞ」と説教されてから、夏の草木に劣等感を抱いてきた。そもそもなんで坊さんにそんな事言われなきゃならなかったのかはよく覚えていない。
でかいアマミアオヘビ(毒無し)がしゅらしゅら道を渡っていた。
でかいアマミアオヘビ(毒無し)がしゅらしゅら道を渡っていた。

闘牛と無人販売

徳之島の有名なコンテンツといえば闘牛である。江戸時代から島民の娯楽として定着しており、島の各所に闘牛場が作られている。夕方には道路で筋骨隆々の牛を散歩させているのを見かけた。
でかい!やばい!
でかい!やばい!
防犯カメラのシンボルも牛。
防犯カメラのシンボルも牛。
「戦闘ひさし」「皇心チワワ」扇情的かつ攻撃的なしこ名?が並ぶ。会場は激混みで鑑賞はあきらめた。
「戦闘ひさし」「皇心チワワ」扇情的かつ攻撃的なしこ名?が並ぶ。会場は激混みで鑑賞はあきらめた。
島の子供達に話しかけられた時も闘牛鑑賞をおすすめされたが、闘牛以上に私のマインドのやわらかいところを刺激したのは「無人販売所」だった。
瓜やパイン、アダンの実販売所なんていうのもあった。
瓜やパイン、アダンの実販売所なんていうのもあった。
奄美大島でもちらほら見かけたが、徳之島の方が密度感がある。畑の脇だけでなく、街中の路地にも進出しており、オフィスグリコの始祖のような味わい深い販売所を随所で見る事ができる。
島の中心街、亀津の路地にて。お盆の時期だからか無物販売になっていたところも多かった。
島の中心街、亀津の路地にて。お盆の時期だからか無物販売になっていたところも多かった。
アンプに片足を乗せてオーディエンスをあおるロックスターの様にドラゴンフルーツを売る。
アンプに片足を乗せてオーディエンスをあおるロックスターの様にドラゴンフルーツを売る。
そんな中、T字路の先の草原で大規模に展開している販売所を見かけた。
「よも山コーナー」、ジャンル不明のコーナーと目が合った。
「よも山コーナー」、ジャンル不明のコーナーと目が合った。
いったい何を販売しているのかと近寄ってみると売場というより、誰かの内面世界を表現した棚だった。
そして「みのるひろば」。何かが解放されている場所だということはわかる。
そして「みのるひろば」。何かが解放されている場所だということはわかる。
「ぷち百姓」を名乗るサンタ。ブルーのくまどりがこわい。
「ぷち百姓」を名乗るサンタ。ブルーのくまどりがこわい。

さあ、ハブの話です

何の記事だかよくわからなくなる前に本筋に戻そう。
徳之島に住むハブは他の地域のものより気性が荒いといわれ、咬傷被害では例年人口の多い奄美大島を上回る件数が報告されている。(もちろん、生息密度が高いとか農地での遭遇が多いとか理由はいろいろ考えられる)

沖縄本島や奄美大島のハブと比べて模様はシンプルで体色は褐色に近い個体が多く、より赤味の強いものは「赤ハブ」と呼ばれる。
こちらがいわゆる沖縄本島型のハブ(渡名喜島)
こちらがいわゆる沖縄本島型のハブ(渡名喜島)
徳之島産ハブ、渋みがあふれる。悪く言えば地味。
徳之島産ハブ、渋みがあふれる。悪く言えば地味。
林道、農道での遭遇報告が多く、島をぐるぐる回っているとなるほど出そうだなという場所がいくつもあり、探すポイントをしぼるのが大変だ。
広大な森と畑。
広大な森と畑。
洞窟も回る。
洞窟も回る。
森の中で出会うとびっくりする看板。
森の中で出会うとびっくりする看板。
町では生涯で3軒目のビトンを見つけた。
町では生涯で3軒目のビトンを見つけた。
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風にもめげずハブ探し

夜になると台風の影響で時おり激しい雨に見舞われながらも散策する。
湿度的にはかなりいい感じなのだがやたら風が強い。
湿度的にはかなりいい感じなのだがやたら風が強い。
私がハブだったらまずこんな日に外出はしない。風が強い日に家の中で風が雨が建物にブチ当たる音を聞いているとなんか強固なバリアーで防御している感があって気持ちいいじゃないですか。
サカモトサワガニ(たぶん)と睨み合い。
サカモトサワガニ(たぶん)と睨み合い。
しかしこちらは滞在中にどうあってもハブを見たい。どんな富や名声よりもハブを求めているので彼らの身になっている場合ではない。ハブは小鳥を狙って木によく登るがこの風ではムリだろうと路上を探してさまよう。
キノボリトカゲはこの強風の中、細い枝の上で余裕の休息。さすが木登りをアイデンティティとしているだけある。
キノボリトカゲはこの強風の中、細い枝の上で余裕の休息。さすが木登りをアイデンティティとしているだけある。
カエル達はテンションが高い。
何か考えてるようで何も考えてなさそうな(職場のおれだ)アマミアオガエル。
何か考えてるようで何も考えてなさそうな(職場のおれだ)アマミアオガエル。
でかいアマミハナサキガエル。ジャンプがものすごく、気付かれると一瞬で姿を消す。
でかいアマミハナサキガエル。ジャンプがものすごく、気付かれると一瞬で姿を消す。
これだけカエルが出てきてるんだからヘビの1匹や2匹いてもいいだろうと思っていたらいつものあいつが出た。
ちっさいアカマタ。ハブと違って今まで巡って来た島で見られなかったためしがない
ちっさいアカマタ。ハブと違って今まで巡って来た島で見られなかったためしがない
アカマタを逃がした我々を遠くからリュウキュウイノシシの親子が見ていた。食うつもりだったのか。
アカマタを逃がした我々を遠くからリュウキュウイノシシの親子が見ていた。食うつもりだったのか。
固有種や稀少生物もちらほら顔を覗かせる。
跳ねながらウロウロしていた日本最大のネズミ、ケナガネズミ。尻尾をのぞいて30cmにもなる。
跳ねながらウロウロしていた日本最大のネズミ、ケナガネズミ。尻尾をのぞいて30cmにもなる。
歩き方がかわいいオビトカゲモドキ。2003年に鹿児島県指定天然記念物となった。
歩き方がかわいいオビトカゲモドキ。2003年に鹿児島県指定天然記念物となった。
特別天然記念物のアマミノクロウサギもがんがん見かけたが全然止まってくれなくてこの写真がせいいいっぱい。
特別天然記念物のアマミノクロウサギもがんがん見かけたが全然止まってくれなくてこの写真がせいいいっぱい。
アマミノクロウサギ、ケナガネズミやオビトカゲモドキ、アマミハナサキガエルをはじめ数多くの固有種が条例で捕獲・採集を禁止されている。見つけても観察するだけにしよう。
アマミノクロウサギ、ケナガネズミやオビトカゲモドキ、アマミハナサキガエルをはじめ数多くの固有種が条例で捕獲・採集を禁止されている。見つけても観察するだけにしよう。

最恐ハブとの遭遇

これまでのカエル、ネズミ、ウサギなど、残業中のシルバニアファミリーのようなまったりしたかわいい感じとは異なるシャープな雰囲気をまとった生物が出現したのはダムの近くだった。
130cmほどの力強いヘビ。
130cmほどの力強いヘビ。
待望の徳之島ハブである。
かっこいい!水もしたたる美ハブだ。
かっこいい!水もしたたる美ハブだ。
上品なカフェオレ色の体が夜の雨にしっとり濡れてなんともいえぬ色香を漂わせている。
潤んだ瞳がセクシー(ピントがあまいだけ)
潤んだ瞳がセクシー(ピントがあまいだけ)
聞きしに勝る最恐オーラをまとっていたが闘牛のように鼻息荒く飛びかかって来るでもなく、写真を撮る私をうざそうに一瞥して逃げて行った。

さらに近くの畑で若ハブを発見。
こいつには一目散に逃げられた。
こいつには一目散に逃げられた。
幼蛇はわりと黄色味が強いビビットな体色で、色に関しては沖縄本島ハブと成蛇ほどの違いは感じられない。
沖縄本島の幼蛇、やや緑がかっている。模様は全然違う。
沖縄本島の幼蛇、やや緑がかっている。模様は全然違う。
翌日の夜、林道の端でまた幼蛇を見つけた。こちらはさらに黄色味が強い。
翌日の夜、林道の端でまた幼蛇を見つけた。こちらはさらに黄色味が強い。
側溝の隅に身を隠した。ほんとうに嫌がられている、すまん。
側溝の隅に身を隠した。ほんとうに嫌がられている、すまん。
知人友人から生息密度が高いと聞いてはいたが4日間回って見つかったのはこの3匹だけだった。さすがのセンスの無さだ。
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ハブの館がある

沖縄に「ハブ博物公園」が、奄美大島には「奄美観光ハブセンター」があるように、夜な夜な山野をかけずり回らなくてもハブ見られるんじゃないの?
結論から言えば、見られる。ただ、これらのようにきっちり観光施設として整備されているわけではない。
島の北部、天城町の町役場の正面入口向かって右手にこじんまりとした小屋が鎮座している。
天城町役場、モスクのようなドーム屋根が印象的。
天城町役場、モスクのようなドーム屋根が印象的。
その名も「ハブの館」
見世物小屋的インパクトすごい。
見世物小屋的インパクトすごい。
館の側面にはハブの解説パネルが。
館の側面にはハブの解説パネルが。
小さくて素朴な館だが臨場感は他の施設とは桁違い。その秘密はこれだ。
なんとセルフオープン方式。
なんとセルフオープン方式。
ハブ達と外界を隔てるシャッターを自ら開けて様子をのぞくことができる。すごい、館のオーナー気分が味わえるのだ。マイ館だ。この仕組み、すごく興奮しないですか。
元気にしてるかな~、オープン。
元気にしてるかな~、オープン。
写り込みで全然わからんがコンクリートのケージに組み木と水場が用意されており、5匹のハブがまどろんでいた。
写り込みで全然わからんがコンクリートのケージに組み木と水場が用意されており、5匹のハブがまどろんでいた。
木の上でドヤ顔。
木の上でドヤ顔。
赤味の強い通称「赤ハブ」もいた。(乗っかられてる方)
赤味の強い通称「赤ハブ」もいた。(乗っかられてる方)
ハブは夜に活動するのでこんな真っ昼間にシャッター開けられても「いま何時だと思っとるんじゃ事務所通せコラ」くらいの感じではた迷惑そうにじっとしているのだが、手前にいる1匹は凶悪にアクティブでこちらの動きにやたら反応してはガラス越しにがんがん攻撃してきた。
この人です。
この人です。
素早く、正確に仕留めにくる。
素早く、正確に仕留めにくる。
ハブは視力は悪いが鼻と目の間にあるピット器官という赤外線センサーで相手の体温を探知し、攻撃をしかける。
しかし今回は明確に視覚でこちらの動きに反応していたように見えた。厚手のガラスを挟んでいるとはいえハブの温度センサーも0.003℃以下の温度差を感じ取る驚愕の精度なので視覚と両方使っているのかもしれない。

周囲に誰もいない中、私は休憩を挟んではたびたびシャッターを開け閉めしていた。ハブには迷惑この上なかったかもしれない。背後の空には虹が出ていた。
ハブのセンサーと虹、なんと風流な事だろう。
ハブのセンサーと虹、なんと風流な事だろう。

帰りの飛行機の保安検査場でスネークフック(蛇捕獲用のフック)が引っかかったが担当の人がハブにくわしくて、危険物ではない事を理解してくれた上にハブに遭遇しやすいポイントや時間帯をそっと教えてくれた。願わくば帰りではなく行きで会いたかった。到着時の荷物検査導入を切に願う(うそ)
また行きなさいよってことですね。
また行きなさいよってことですね。
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