特集 2018年6月1日

八ッ場ダム工事の夜景がものすごかった

あと半年くらいで見られなくなる夜景
あと半年くらいで見られなくなる夜景
群馬県の北西部にある長野原町に、八ッ場ダムというダムが建設されている。

当サイトではこれまでに本体工事開始直後、そして工事が本格化し始めた頃の2回記事にしているけれど、24時間休みなく進められた工事の進捗は、いつの間にか70%まで到達しているという。

24時間休みなく...?、ということは、夜も工事が行われている...、工事の夜景を見てみたい...!

というわけで、夜間の現場を見学させてもらった。

これまでの工事の模様は以下の記事をご覧ください
八ッ場ダムはいまどうなっているのか(2015年7月21日)
八ッ場ダム工事、進んでいます(2016年11月11日)
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:「量産型ダム」の見分けかた

> 個人サイト ダムサイト

八ッ場ダムのその後

2016年11月の記事「八ッ場ダム工事、進んでいます」内でコンクリート打設のため岩盤を磨いた半年後、2017年5月にも八ッ場ダムを訪れた。今からちょうど1年前だ。
基礎掘削が終わりコンクリート打ち始めだった八ッ場ダム
基礎掘削が終わりコンクリート打ち始めだった八ッ場ダム
半年後にはおよそ30mほど立ち上がり、すでに河川法上のダム要件(15m以上)をクリア!
半年後にはおよそ30mほど立ち上がり、すでに河川法上のダム要件(15m以上)をクリア!
本体工事現場の上は多くの重機や人が動き回っていた
本体工事現場の上は多くの重機や人が動き回っていた
僕が磨いた岩盤は既にコンクリートで覆われて(八ッ場ダム建設に微かながらも痕跡を残した!)、まだコンクリートを打ち始めたばかりで背丈より低かった幼い八ッ場ダム本体も、既に見上げなければならないほど立ち上がっていた。まるで親戚の子供のように、建設中のダムはあっという間に大きくなっていく。
堤体のコンクリート打ち始めだった頃
堤体のコンクリート打ち始めだった頃
半年でここまで大きくなりました
半年でここまで大きくなりました
たった半年でも景色はガラリと変わってしまう。今回はそこからさらに1年ぶりだ。どれだけ成長したか、楽しみなような怖いようなである。
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工事現場を見られる場所

八ッ場ダムの工事、ふらりと行っても見られるかどうか不安な人もいるかも知れない。そこで、工事現場が見られるポイントをいくつかご紹介したい。

ひとつ目は下流側の正面から見られる場所だ。
吾妻川沿いを走る国道145号はダムの上を通るように付け替えられているのだけど、いまは工事関係者以外通る人も少ない旧道の方を進むと、工事現場の手前で一般車通行止めになる。
吾妻川沿いを走る旧国道145号
吾妻川沿いを走る旧国道145号
車だけ通行止めで徒歩では進める
車だけ通行止めで徒歩では進める
その場所に駐車場があるので車を停めて徒歩で進むと、こちらも付け替えられた旧吾妻線の線路が崖の上に見え、日本一短いトンネルとして有名だった樽沢隧道が現れる。
階段でトンネルまで登れるようにしたら人来ると思うんだけど
階段でトンネルまで登れるようにしたら人来ると思うんだけど
その先に架かる猿橋という真新しい橋を横目にさらに進むと、川の方に降りる階段が現れ、そこを下っていくと鹿飛橋という橋が架かっている。眼下には吾妻渓谷の美しい流れを見ることができる。
ここを降ります
ここを降ります
吾妻渓谷の上に架かる橋
吾妻渓谷の上に架かる橋
最初の段階ではこのあたりにダムが造られる計画だったらしい
最初の段階ではこのあたりにダムが造られる計画だったらしい
橋を渡り終えると、あとは登山道だ。道はしっかりしているので遭難するような場所ではないけれど、細くて柵がない場所や小さな沢を渡るところもあるので油断は禁物だ。
こういう道を進む
こういう道を進む
柵がある場所もある
柵がある場所もある
小さな沢を越える場所も
小さな沢を越える場所も
そうして山道を登ったり降りたりしながらおよそ20分、だいぶ息も切れてきたところで最後にこれが現れる。
まじですか...
まじですか...
トドメの心臓破りの階段を登り切ると、そこは「吾妻峡見晴らし台」。おそらく渓谷を一望できる展望台だったであろうその場所は現在、ちょうど建設中の八ッ場ダム本体を正面から見ることができる場所になった。
ようやく着いたここが見晴らし台
ようやく着いたここが見晴らし台
と言いつつ木であまりよく見えない
と言いつつ木であまりよく見えない
まあこれには賛否両論あるよね、とは思う。せっかくの美しい渓谷にダムを造っちゃって、という感情も分かるし、僕なんかはせっかく来たのに木が邪魔で何も見えないじゃないか、と思ってしまう。でも見事にダムとほぼ同じ高さで正面の位置なので、完成後も末長く楽しめる場所だ。葉っぱが落ちる頃にまた来よう。
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やんば見放台

ふらりとやって来て見学するのにオススメの場所が「やんば見放台」だ。ここはダム工事事務所が作った展望台で、本体工事現場のすぐ近くの、国道から1本入った場所にある。もちろん駐車場も完備、24時間開いているトイレ(ウォシュレット付き!)もあるので、いつでも安心して工事現場を眺めることができるのだ。
非常にホスピタリティの高いダム工事現場
非常にホスピタリティの高いダム工事現場
車を停めて坂道を登ってゆくと、ダム工事の説明看板や双眼鏡(無料!)が設置してある広場がある。
ここまでならほかの工事現場でもありそうだけど
ここまでならほかの工事現場でもありそうだけど
すごいのは広場の一角にあるこのお立ち台
すごいのは広場の一角にあるこのお立ち台
その上に立つと工事現場が一望できる
その上に立つと工事現場が一望できる
モニタでは伝え切れない迫力があるのでぜひ現地で見てほしい
モニタでは伝え切れない迫力があるのでぜひ現地で見てほしい
ちなみに夜景だとこんな感じ
ちなみに夜景だとこんな感じ
この取材日は平日だったけど、僕が写真を撮っている間も何人もの人がやって来て、ぼーっと現場を眺めていた。

不動大橋

もうひとつ、貯水池になる場所に架かる橋の上からもぜひ眺めてもらいたい。「やんば見放台」のすぐ近くに架かる「八ッ場大橋」だ。橋のたもとには駐車場があり、歩道も広いので思う存分眺めることができる。そしてここにも双眼鏡が設置されている。
ちょっと遠いけど全景を眺められる
ちょっと遠いけど全景を眺められる
コンクリートを入れたバケットが行き来するのを見るだけでも飽きない
コンクリートを入れたバケットが行き来するのを見るだけでも飽きない
ここから見える夜景はこんな感じ
ここから見える夜景はこんな感じ
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夜の工事現場見学

さて、早い時間に着いてしまったので工事現場が見られる場所をいろいろめぐってきたけれど、いよいよ夜の工事現場見学の集合時間だ。

今回参加したのは、八ッ場ダム工事事務所が毎月最終金曜日に開催している「プレミアムフライデー限定ヤンバナイトツアー」。10名以上の団体限定だけど、夜間の工事現場を間近で1時間も見学させてくれるという。

集合場所でヘルメットを渡され、簡単な説明を受けたあと、一般立入禁止のゲートを抜けていよいよ夜の現場に突入。工事用道路を少し歩くと、右岸側のダムのすぐ横に出た。
ここまで封印してきた台詞を言おう。「むちゃくちゃかっこいい!!」
ここまで封印してきた台詞を言おう。「むちゃくちゃかっこいい!!」
現場と言っても非常に広く、各所でさまざまな作業が行われている
現場と言っても非常に広く、各所でさまざまな作業が行われている
向こう側の「要塞感」が半端なかった
向こう側の「要塞感」が半端なかった
夜遅い時間だけど多くの重機とたくさんの人が働いている
夜遅い時間だけど多くの重機とたくさんの人が働いている
ダム工事現場の夜景はこれまでも何ヶ所かで見たことがあるけれど、夜に見学会を開催しているのは八ッ場ダムだけじゃないかと思う。間近で見る工事現場は、真っ暗な周囲と対照的にそこだけ煌々と明かりが照らされ、まるで秘密のUFO基地を覗き見しているような心臓の高鳴りを感じた。

そしてもうひとつ改めて思ったのは、これだけ巨大な建造物だけに、工程の大部分が機械化、自動化されているような気が何となくしていたのだけど、夜間でも多くの重機や人が作業しているのを見て、これだけ巨大な建造物でも基本的には多くの人が手を動かしてこつこつと積み上げてきてこの大きさまで来たのだ、ということだ。当たり前といえば当たり前だけど、ダムは人の手で造られているのだ。

本体工事開始から約3年で工程は70%を過ぎ、そう遠くないうちに仕上げの段階に入ってくるという。

八ッ場ダムはあれだけ大きな話題になり、あれだけの逆風を受けながら着工され、逆にあれだけの逆風があったからこそ、これまでのダムにないほど広報や地域振興に力を入れ、工事をオープンにし、いろいろな仕掛けで非常に多くの見学者を集めている。ダム建設に対してはさまざまな意見があるけれど、八ッ場ダムは関東地方を襲う洪水や渇水に対して被害を低減させるための施設であり、日本全体で見てもほとんど最後と言っていい巨大ダム建設だ。周辺には飲食店や温泉宿も多くあるし、ここを拠点にして行ける観光地も多い。もちろんほかのダムもある。

前から何度も書いているけれど、賛成でも反対でも、住んでいる地域に関係があってもなくても、とにかく建設中にいちど見てほしいと思う

大きくなった

やっぱり親戚の子供と同じように、少し見ない間にダムは驚異的な成長を遂げていた。もちろん勝手に伸びたわけではなく、作業員の方々が毎日こつこつとコンクリートを積み上げているからなんだけど、それにしても「こんなに大きくなるのかー」というのが素直な感想だ。

もうすぐ仕上げの段階に入るけれど、このあとも水門を据え付けたり、水を貯めはじめたり、試験的に満水にして安全性や機能の確認のために放流したり、完成までにまだまだイベントがあるので、もうしばらく追いかけ続けたいと思っています。
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