二宮金次郎像が存在しない!?
幼少の頃の名前を金治郎(金次郎)といい、後に名字帯刀が許されたときに二宮姓を名乗る。従って、二宮尊徳、もしくは単に金治郎という表記が正しいのだろう。
しかし、ここでは一般的な「二宮金次郎」で統一させていただく。



まずは、取材に先立って、この渡辺ビルの管理会社に確認の電話をしてみた。
すると、「うちにはそんな像はないよ、別の場所じゃないの」と言われてしまった。
しかし、現地へ行ってみると、自動販売機に行く手を阻まれ、行き場を失ってしまったかのような像があった。設置してある場所は、「渡邊直治商店」という瀬戸物店の一角。



なぜこんなところにあるのだろう。町の人は、この像のことを知っているのだろうか。

知っていたのは、3件隣の中華屋さんのみ
しかし、全くと言っていいほど、その存在を知らないようだ。
最寄りの京浜急行戸部駅側(店舗向かって右側)から来ると、全く視界には入らないこの像。
同ビルに勤める人でさえ、その存在に気づかないのも、無理はない話なのかもしれない。





そんな状況が分かったところで、いよいよ「渡邊直治商店」のご主人に、事情を伺ってみることにした。

実は、かつては売り物だった二宮金次郎像
店は、主に陶器やガラス製品の卸(おろし)を行っており、一般客への小売りは扱っていないそうだ。



当時はバブルで景気が良かったので、もしかしたら売れるかも知れないと、考えたそうだ。





実は、かつては売り物だった二宮金次郎像
そこで倉庫にしまっていたのだが、1989(平成元)年、現在のビルに建て替えたのを記念して、今の位置へ設置したとのこと。店舗に対して像を横向きにした理由は、特にないそうだ。
だが皮肉にも同年、店舗の前を通る国道一号線の拡張計画が、横浜市より広光さんの元に知らされた。それまでは、問題の自動販売機は国道寄りに設置していたのだが、他に移せる場所もなく、やむなく同年に今の位置へ移動。こうして、金次郎は、行く手を阻まれてしまったのである。






像の向きを変えることはできないのか
広光さんに聞いてみると、「土台にしっかり固定してしまったんですよね」とのお答え。
これを崩すには、基礎の土台ごと壊さないといけないそうだ。
そのとき、瀬戸物で中が空洞の金次郎像は、破損してしまう可能性があるらしい。





壊れやすい陶器製であるにも関わらず、約23年間無事な姿を残しているのも、このことが原因なのかもしれない。
従って、自動販売機を撤去する予定も、今のところないそうだ。

この像の希少性について
一部の例外はあるものの、よく見かける金次郎像は、「着物を着て裾を出しているものは右足前、はかまの一種をはいて裾を入れているものは左足前」の意匠が多い。





どうかイタズラなどをすることのないよう、日本で無二と思われる同像を、末永く見守ってほしいと願う。
