みんな違ってみんないい
人に言われて、アブラナ科って偉大なだと気がついた。確かに、アブラナ科を食べない日はないかもしれない。特に私は毎日ブロッコリーを食べているし。その力をもっと知りたくて作った料理だった。やはり偉大ではあったし、カレーの素晴らしさにも気がつけた。ありがとう、カレー。

アブラナ科というものがある。キャベツ、白菜、カブなどがそれに当たる。たとえば、スーパーの野菜コーナーをちょっと広い絵で見てもらいたい。すると、ほぼ100%の確率でアブラナ科の野菜が目に入るはずだ。
我々はアブラナ科によって美味しい食卓を作り出しているのだ。あの子もアブラナ科、この子のアブラナ科。ということで、アブラナ科オンリーの丼を作ろうと思う。ステーキ丼ではない、海鮮丼ではない、アブラナ科丼なのだ。
分類というものがある。人間は「ヒト科」ということになる。その上にも「門」とか「綱」とかあるし、下には「属」とか「種」とかあるのだけれど、「ヒト科」なのである。同じように野菜にも科が存在する。
上記の3つの野菜に1つだけ仲間はずれがある。いろいろな考え方があると思う。大根だけ白いみたいな仲間はずれの探し方もあるし、個人的にキャベツが嫌いというのもあるだろう。ただ今回は「科」で考えて欲しい。すると仲間はずれがわかる。
キャベツと大根は「アブラナ科」。しかし、レタスは「キク科」になる。キャベツとレタスは似ている気もするけれど違うわけだ。キャベツと大根は似ていない気がするけど同じ。そして、個人的にアブラナ科はよく食べる野菜が多い気がする。
上記は向かって左がレッドキャベツ。右がトレビスである。とても似ている。トレビスを見せられ「レッドキャベツ」と言われても納得するかもしれない。しかし、レッドキャベツはアブラナ科で、トレビスはキク科。別のものなのだ。
今回はアブラナ科だけで料理をしたいと思う。上記の写真を見るとわかるように、我々がよく食べる野菜はアブラナ科が多いのだ。アブラナ科により我々は生かされているのだ。アブラナ科だらけの丼でも作ろうではないか。
世の中にはいろいろな「丼」がある。牛丼。でも、牛丼には玉ねぎも入っているし、米も使っている。海鮮丼。ワサビが乗っているし、米も使っている。ちなみにワサビは我がアブラナ科軍の一員だ。海鮮丼が美味しいのはアブラナ科軍のワサビのおかげだ。
私は純粋なるアブラナ科丼を作りたい。そこで米の代わりに「アブラナ科(カリフラワー)」を使う。白いから米っぽく見えるのではないかと思うのだ。ちなみに米はイネ科だ。
これで米部分は完成した。次は上の乗せるものだ。ここももちろんアブラナ科たちの、アブラナ科だけの共演となる。アブラナ科で八宝菜を作り、カリフラワーというアブラナ科の上に乗せようと思う。
アブラナ科だらけでクラクラする。同窓会みたいなことではないだろうか。同じ学校出身の人で集まる。思い出話にも花が咲く。ここに一つでも違う出身校の人がいれば空気が悪くなるかもしれない。いや、アブラナ科は優しいから受け入れてくれる気もするけど。
調味料とかにはこだわりがない。調味料は調味料だから。アブラナ科とかではないから。そういんじゃないから。そうなると味付けには興味ないので水に溶いて使うタイプの八宝菜の素を使った。アブラナ科ではないものに興味などないのだ。
私が作るのは八宝菜。8つの野菜をいれなければならない。先の切った野菜では、油をいれても七宝菜。油は入れないと六宝菜。二宝菜たりないのだ。そこにアブラナ科とアブラナ科を入れて八宝菜にする。アブラナ科(ワサビ)とアブラナ科(かしら)だ。
いい匂いがする。ここに肉をいれたら美味しいだろうな、とは思う。しかし、今日は違うのだ。アブラナ科だけの集いなのだ。八宝菜の素は使ったけど、会場スタッフということにしたい。
八宝菜、最終的にもろもろ入れると九宝菜が完成した。もちろんこれだけでも十分だけど、デザート的なものも欲しかったので作った。もちろんアブラナ科でだ。今の私にはアブラナ科しか見えない。アブラナ科以外はないものとする。
作るのはコンポート。本来は桃などで作るものだとは思うけれど、アブラナ科(カブ)とアブラナ科(大根)でだって作れるのだ。それぞれを一口サイズに切って、水を火にかけ、砂糖を入れる。そう「てんさい糖」をね。
てんさい糖は、てん菜から作られる。砂糖大根と言われるやつだ。さて、先にも登場した大根を思い出して欲しい。彼は、あるいは彼女は何科だっただろうか。そう、アブラナ科だ。では、「てんさい糖」の原料のてん菜(砂糖大根)は何科だろうか。もうお分かりいただけますね。そう、ヒユ科だ。
砂糖大根という名前に騙されそうだけど、砂糖大根はヒユ科であり、アブラナ科ではない。ほうれん草と同じヒユ科になる。ちなみに小松菜はアブラナ科。なんとなくほうれん草と小松菜は似ている気がするけれど、科で考えると別物なのだ。
味付けについては、アブラナ科だけと限定していない。大切なことは美味しいか否かということ。だから、味付けについては別にアブラナ科でなくていいのだ。異論はあると思うけど、無視します。
これでアブラナ科九宝菜とアブラナ科のコンポートが完成した。アブラナ科ではない部分を除けば全てアブラナ科だ。アブラナ科でない部分だって味付けに使っただけなので、もはや100%アブラナ科。そう言って問題ないのだ。
アブラナ科丼には最後にアブラナ科(マスタード)も乗せてみた。結果、十宝菜となった。キリがいいではないか。問題は味だ。今まで私も食べたことがないのだ。アブラナ科丼なんて。肉が欲しいよね、あるいは魚。米もいい。でも、今回はアブラナ科だけ。
しっかり八宝菜だ。いや、十宝菜だ。いつもはメインになることが少ないと思われるアブラナ科たちが十分にパフォーマンスを発揮して、主役としての活躍をしている。味付けは八宝菜の素だからまずいはずがない。
コンポートも美味しい。アブラナ科(カブ)にしろ、アブラナ科(大根)にしろ、主張が激しくないから、しっかり赤玉スイートワインとてんさい糖の味に染まってくれている。甘くて美味しい。アブラナ科は十分に主役になれる野菜なのだ。
全体的に美味しかった。それに嘘はない。ただなんというか、パンチがないというか、ずっと興味のない話を聞かされているような、そんな感じはあった。その話も面白いんだけど、興味がないみたいな。だから、カレーにした。カレーにすれば全部美味しくなるから。
アブラナ科が悪いわけでもないし、八宝菜の素が悪いわけではない。私が悪いのだ。その、パンチというか、パンチだね、パンチを求めるから。その結果のカレー。カレーは魔法で、カレーにすると全部カレー味になって美味しい。素材を活かすとかないの。全部カレー味になるから。
カレールーにアブラナ科要素があるかと言われれば、謎だけど、アブラナ科って何だろうって考えると、みんなの心の中にあると思う。みんなの心の中にアブラナ科があればそれでいいと思うのだ。カレーは美味しかった。とても美味しかった。カレー最高!
人に言われて、アブラナ科って偉大なだと気がついた。確かに、アブラナ科を食べない日はないかもしれない。特に私は毎日ブロッコリーを食べているし。その力をもっと知りたくて作った料理だった。やはり偉大ではあったし、カレーの素晴らしさにも気がつけた。ありがとう、カレー。
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