趣旨説明
あらためまして趣旨説明を。これは、僕がさまざまな食材をお米と一緒に炊き込み、どんな炊き込みご飯ができるかを調査する企画です。
今回のテーマは「駄菓子」。
基本的な作りかたとしては、白米0.5合を普段と同様に水加減し、その上に好きな駄菓子を乗せて炊飯器で炊くだけ。
それでは、レッツ炊き込みニュケーション!(意味不明)
「蒲焼さん太郎」炊き込みご飯
今回の企画を担当編集の古賀さんにご提案したところ、「いいですね! 『蒲焼さん太郎』なんかうな丼になっちゃうんじゃないですか!?」「ですよね? 実は僕もそう思ってたんすよ!」なんて真っ先に意気投合した一品。
先に結論から言いますと、そんなことがあろうはずもありませんでした。人間、熱に浮かされると簡単な判断すらできなくなってしまうという好例。
ともあれ、炊き込んでいってみましょう。
見たことはあるけど食べたことがないって方。あるけど昔すぎてよく覚えてないって方。意外と多いんじゃないでしょうか? 実はかばやきさん太郎、あらためて食べてみると、パリッパリなんですよ。硬いの。
なので炊飯器に放り込むと、
なんだか妙に哀愁漂う絵になります。
本当にこれがうな丼になるんだろうか……? といきなり不安になりつつ、炊飯スイッチオン。すると、すぐにものすごく力強く芳しい魚介系のダシの香りがキッチンを包みはじめました。うわ~、まるで漁師町の食堂にいるみたいだ。
魚肉にイカに醤油みりん砂糖などなど。確かにそういう香りが漂ってきてもおかしくない構成になってますね。
関係ないけど、その上の「私、蒲焼さん太郎はおさかなのすり身にイカ味を混ぜ合わせて、板状にのばしたものを食べやすいようにカットしてオーブンで焼き上げました」という説明文。主語が途中で入れ替わって自分で自分を焼きあげてしまった形になっているところが、僕はすごく好きです。
さて、やがて炊飯が完了したことを知らせる電子音が流れ、期待と不安と緊張が入り混じるなか、パカっと蓋を開けてみる。
ええとなんだ、とりあえず、今目の当たりにしているものがうな丼でないことだけは確か。そして、かつて見たことのないものであることも確か。
あんなに香ばしそうだった身からだいぶ色素が抜け、お米のほうに移ってしまったようですね。
そんな「元蒲焼さん太郎」がどんな食感に炊き上がったのか、おそるおそるしゃもじで突っついてみると、
強いて言えば何に近いだろう。油揚げを開いたものと生八ツ橋を足して2で割った感じ? ポロポロに崩れるみたいなことはなく、意外としっかりしています。
一応うな丼風に盛りつけてみました。
あ、お茶碗のフチが欠けているのは気にしないでください。使い勝手が気に入っててなかなか替えられないんです。
するとふわりと、炊飯中に感じたあの香りが漂います。
まずはご飯をひと口。あ、美味しい美味しい。上~品な魚介系の炊き込みご飯ですよ普通に。
続いて、“元”太郎を1枚食べてみる。あ、これはあれだ、ねりものだ! 薄~く切った、ソフトなねりもの。ただ、炊き込んだことにより、もともと染み込ませてあったあれこれがかなり抜けてしまっており、単体だと若干ぼやけた味ですね。
うん、なんか、フフフ……と笑ってしまって、それ以上感想の出てこない味です。
いやでも、決してまずくはないぞ。
「カットよっちゃん」炊き込みご飯
「よっちゃんイカ」ってやつですね。酸味の効いた味わいなので、炊き込んだらイカのお寿司みたいな風味にならないかしら?
まず見た目が美しいですよね。それだけで炊き込んだ意義があるといえる。
炊飯中はキッチンに少々刺激的な酸い~香りが充満していましたが、実際に食べてみるとぜんぜん気にならない。ほどよい酸味と優しいイカの旨味。なかなか美味しい炊き込みご飯になりました。
ただ、予想に反して本体の食感はイカじゃないんだよな。蒲焼さん太郎に続き、やっぱりねりもの。駄菓子を炊き込むと、製造の途中工程であるねりものに戻りがちということがわかってきました。
「あたりめ」炊き込みご飯
あれ? ちょっと待てよ。ということはですよ。ほらよく駄菓子屋で、イカそのもののゲソや胴体を竹串に刺したものが、でっかい透明プラスチックケースに入って売られているじゃないですか。もしかしてあれを炊き込めば、手っ取り早く美味しいイカの炊き込みご飯ができるんじゃないかな?
そう思い立ったのですが、今回駄菓子を探した近所のスーパーやコンビニではそういった商品が発見できず、やむなく「あんまり変わらないだろう」という理由で、こういうものを買ってきてみました。
カッチカチブラザーズ。
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なんと、ご飯を炊くときにあたりめをポイッと放り込んでおくだけで、
炊飯器の蓋を開けた瞬間からたまらなすぎるイカの香りが顔を包み、一刻も早く食べてみたくてうずうず。
はふっとひと口ほおばると、口いっぱいにイカの旨味。もちもちとしたご飯の食感もちょうどよく、何よりいちばん危惧していた「イカがカチカチのままだったらどうしよう?」問題も、なんの心配もいりませんでした。決して炊飯器に具材をセットしたあと数時間浸水させる、みたいなことはしておらず、具材を入れて急速モードで炊いただけ。それなのにあんなに固かったイカが、絶妙な一夜干しくらいのプリプリ食感に戻っている。これには感激しましたね。
いや~これは我ながら、ちょっとした発見なんじゃないでしょうか。おつまみに買ったはいいけどけっきょく食べず、なまじ日持ちがするから放置してしまっているあたりめが家に眠っている方、ぜひご飯と一緒に炊いちゃいましょう! 炊くときにお酒をちょっと足してもいいかもしれないね。
「ベビースターラーメン 柿の種×ピーナッツ」炊き込みご飯
もう何年も前なんですが、「チキンラーメン」で炊き込みご飯を作ると美味しいっていう情報をTVかなんかで見て、やってみたら確かに美味しく、ハマっていた時期があります。となると、「ベビースターラーメン」でも美味しくなることは間違いないんじゃないでしょうか?
あんまり間違いなさすぎてもおもしろくないので、柿の種とピーナッツもミックスされた、酒のおつまみに最高なこいつを炊き込んでみることにします。
素直にシンプルチキンラーメンにしなかった冒険心が裏目に出たか、柿の種が完全に溶けちゃってますね……。ただ、香りはぜんぜん美味しそう。
全体をよ~く混ぜてお茶碗によそってみると、
柿の種は、消えました。が、そのおかげで食べていて違和感がなく、しかも溶けて混ざった柿の種の置き土産か、ご飯が大変もちもちしている。
そしてやはり、こういう味付きインスタント麺をご飯に炊き込むの、クセになる美味しさがあります。
チキンラーメンっていろんな味が出てるから、あれこれ試したり、好みで調合してみたりすると、まだまだ楽しみがいがありそう。
「ビッグカツ」炊き込みご飯
僕のなかで、おつまみにしたい駄菓子の最高峰というとこれになるんですよね。
適度に手ごわい歯ごたえと、乾き物でありながらみごとなまでにフェイク揚げ物として成り立ってしまっている衣のサクサク感。分厚いハムカツの良さもあれば、薄いハムカツの良さというのもありますが、厚みがほぼゼロに等しいビッグカツの良さという概念も、僕のなかには確かに存在しています。
え~とですね……これはおすすめしません。周囲の衣のせいでしょうか、べちゃべちゃ感がすごい。そして良さが失われてしまった衣の中心には、味が抜けて寝ぼけたねりもの。お米に芯が残ってしまってるとかそういうことはないですが、わざわざ作って食べるものではない。
ここまでいくと、レシピで楽しく試行錯誤している状態から、「食べ物で遊んでいる」状態に突入してしまっている気がする。
このあと、本当は「うまい棒」の明太味で明太ご飯ができないかも検証してみるつもりだったんですが、この結果から想像するにそちらもべちゃべちゃになるでしょう。ということで、今回の実験はここで終了とします。
炊き込むパリッコ駄菓子編、いかがだったでしょうか?
個人的には、あたりめの炊き込みご飯が大ヒットでしたね。ただ、記事を書き終え、ふと「同じことやってる人いたりしないかな?」と検索してみると、案の定、普通に同じレシピを紹介している方々がたくさんいました……。
まぁ、自分で試行錯誤して自分が楽しめればそれでじゅうぶん。だし、そんなに検索でヒットするということは、美味しさも実証済みということ。もし未体験の方はぜひ、試してみてください。
炊き込むパリッコ、次回は何を炊き込み、何に炊き込まれようかな~!?