特集 2019年10月3日

プリントゴッコに似てるというシルクスクリーン印刷を初体験してみた

初めての「シルクスクリーン印刷」体験記です

「シルクスクリーン印刷」はインクが通過する細かい穴が空いたスクリーンにインクを透過させる技法で、個人的にはまったく知らない領域だ。未知の領域のものってなかなか手が出ず始めるきっかけもない。

けどどうやら昔年賀状を作るときによくやってた作業に似てるらしく、まったくの未知体験ではなさそうだ。

今回、製版機の新製品を試用させてもらえることになったので、その体験を記すことにしよう。

島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。(動画インタビュー

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デジタルの製版機ってなんだ

シルクスクリーン印刷の新しい製版機を試用させてもらえることになった。

そもそも「シルクスクリーン印刷」を使うとどんなものができるのかというと、こんな感じ。布や紙だけじゃなく、金属やガラス、それ以外の素材にもプリント可能だ。

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メッシュのシートの裏側にインクを乗せてプリントする
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靴下もいいなぁ

今回使わせてもらうのは、自分で作ったデータを送るとスクリーン印刷用のマスターが製版できる機械だ。

こんなプリンターみたいな製版機は、これまで業務用としては存在していたが、プロ・アマ問わず使える小型版は初めて登場したらしい。

手軽に使える小型版とはいえ、数十万円と個人がささっと買えるお手ごろ価格ではないので、今回はモノづくり体験ができる店・HappyPrintersさんにお邪魔して、使わせてもらう。

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こちらがHappyPrintersさんで新規導入した製版機

ところでこれは、あの「プリントゴッコ」を出してたRISOの機械だと事前に聞いていた。ということは、昔の「プリントゴッコ」の要素がデジタル化して今ここに舞い降りた、みたいなことか……!?

と解釈し、ちょっと興奮していた。

(「プリントゴッコ」がよく使われてたのは90年代以前。なんと知らない世代も増えてるらしいので説明すると、原稿を簡単に製版できる家庭用機械で、年賀状を量産するときによく使われていた。)

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これがプリントゴッコ(古賀さんの過去記事から写真拝借。私が持ってたのもこの型だった)

「あの年賀状量産の作業と似てるのなら、当時のノウハウを生かしたプリントも出来たりするのでは!?」と思い、張り切ってTwitterで質問を投げてみた。

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さすが「プリントゴッコ」ネタ、みんな反応がいい

やっぱり80~90年代にこだわりを持って使ってた人が多いからか、アレンジのテクやきれいにプリントするためのコツ、ほかには当時の思い出までも、いろんな声が届いた。

よし、集まったノウハウを使っていざ体験だ……!

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いざ!! 体験!!
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下準備に苦戦

まずは下準備から。フレーム枠にメッシュのシートを貼る。「プリントゴッコ」に付属されてた薄い緑のシートをイチからつくるようなイメージか。

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薄い緑のあれ(ヨシダプロの過去記事から写真拝借。「プリントゴッコ」のときは専用のが売られてたから作る必要がなかった)
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枠に両面テープを貼って
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恐る恐る……
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あ……下手すぎる……

ピンと張らなければならないのに、上手くいかない。初心者には難しい(にしても上の写真の仕上がりはひどい……)。「今後プリントゴッコのときみたいなシートを販売してくれないかな……」とたびたび思う。

どうにかメッシュのシートを貼ったら次はプリント。自分で描いた、グッズ化したいデータを持ってきた。

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こちらがプリントするデータのひとつ

機械にセットし、上からギュッと押さえつけるだけで、じわりと進みだした。

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右手でハンドルをグイッと下へ押すとゆっくり進んでいく
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出たー!! 送ったPDFデータがうっすら出てきたのが嬉しい

ここからはマーブルや、色ごとに何刷も重ねるような、デジタル印刷だとなかなか味わえない手法を試してみたい。

インクを乗せ、手前の方向へ引く。それを繰り返す。

 

顔の輪郭がズレると失敗した福笑いのように顔そのものが崩れるので、そこだけは気を付けたがやっぱりちょっとはズレる。まあ、それも味なのか。

複数のメッシュシートの張り具合が均一でないのが、ズレの原因だったりもするらしい。

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民芸品っぽさあると言われた

フルカラーに挑戦

つぎはもうひとつ別の手法を。画像データをCMYKに分けて、各色を乗せてフルカラーっぽくできるか試してみたい。

プリントするのは、自分が編んだ編み物を撮影した写真。

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これをフルカラーでプリントしよう

細かい説明になるが、インクの性質上、1ミリ以下の大きさのメッシュには通りづらい。そんな特性に合わせて画像のほうを調整する。

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画像データをつぶつぶにする(分かりづらいが、これは顔の部分)

更にこれをCMYKの4色に色分割して、版を作る。

ファラオが3刷、この画像が4刷、計7刷させてもらうことにしたが、一回でこんなに刷りたがる人はいないらしく、お店の方を戸惑わせてしまった。

こちらとしては「ピカッと光るだけで製版できる、プリントゴッコぐらいの感覚」でデータを用意してしまってたのだった……(勝手な思い込みですみません……!)。

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4色に分割
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その度に生じるこの貼る作業
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思ってたより作業量多くて疲れてきた(自業自得)

製版できたら、今度はトートバックにプリントしよう。ところで持ってきたトートバックがヨレヨレなのだが……

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ついうっかりヨレヨレなのを持ってきてしまったが、まあいいか

布のしわはそんなに気にせず、インクを乗せて、布に塗るようにヘラを手前に……!

プリンターで使われるCMYKカラーそのものズバリ同色のインクがその場になかったので、ここは類似色で代用する。

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まずは「C(シアン)」の類似色から(といってもシアンよりもかなり濃いが……)。この工程はだいぶ慣れてきた
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あ!!!!!

「どうにかなるだろう」と思ってたが、なんと布がシワシワだとダメだったのだ。

改めて、別のシワがない布をもらってやり直してみると……布を整えるだけで全然違う! 布をきちんとするだけで、こんなに違うなんて。自分の適当さを反省せざるを得ない。

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なにがプリントされたか分かるレベルになった

次々と「M(マゼンダ)」、「Y(イエロー)」「K(黒)」を順番に重ねてみよう。

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「M(マゼンダ)」も一番似た色である赤を使う
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「Y(イエロー)」はそのままの色

最後、仕上げに「K(黒)」を入れると……あら? これはあってもなくてもいいような。

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「K(黒)」が入ってもそんなに変わらなかった……

カニだけはなんとなく立体的に見える!! いいじゃないか、カニ!

3Dメガネでもかければ飛び出しそうな雰囲気もある。

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編みぐるみの顔はつぶれてるけど、カニは……! ほら!!
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人から教わると話が早くて最高

作ってるうちに「もっとほかにも作りたい」欲が出てきて、「製版から家で気軽にできるようになれば……」と思えたが、モノづくり用スペースじゃないとなかなか厳しい。準備するものも多く、ノウハウを学習する必要もあるからだ。

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ワークショップを開催してやってもらうのが一番現実的らしい

しっかり綺麗にプリントされる快感がある一方で、「サイズが大きいとやっぱり使うインクの量も多いんだな」とか「メッシュシートを貼るのが手間がかかる」という、多分シルクスクリーンを使い慣れてる人からしたら当たり前であろうことに驚いたりした。 

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表と裏を間違えたり、随分モタモタしてしまったが、そういうのは慣れれば平気らしい

「シルクスクリーン印刷」自体は世の中にキットもあるし、手を出そうと思えば出せたジャンルのものだが、きっかけがないとなかなか分からず手が出ない。

一度知ってしまえば敷居も低くなるし、こういう場だとすぐに習得できるし、教わるって最高だな! というところに着地した。


ところで、Twitterで募集して集まったノウハウはまるで生かすことができなかった。「シルクスクリーン印刷」は「プリントゴッコ」との共通点もあってとっつきやすさも感じたが、やっぱり別物だったのだ。

ただ、「プリントゴッコ」に対するみなさんの情熱を目の当たりにし、もっとちゃんとこの届いた声も生かしたい……。

なので、次の記事はそっちの方向でいくことにします。リアルタイム世代のみなさんもそうでもないみなさんも、お楽しみに!

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関係ないが、塗った後のファラオのマスターが呪術の小道具のようだった
【撮影協力】

HappyPrinters

〒107-0062 東京都港区南青山7-1-12 高樹町ハイツ1F

11:00 am - 7:00 pm
日曜定休

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