特集 2019年4月16日

昭和の遺産で刷ろう令和を

「プリントゴッコ」を覚えているだろうか。

昭和52年(1977年)発売、年賀状の印刷で一世をふうびした、理想科学工業の家庭用の簡易印刷マシンだ。

では「ピカッシュ」を覚えている方は……どうだろう。

実はあのおもちゃのトミー(現在のタカラトミー)が昭和59年(1984年)ごろにプリントゴッコのような印刷機を出していたのだ。

東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

昭和~平成史に燦然とかがやくプリントゴッコ

今では知らぬ若者も多いことじゃろうて説明すると、「プリントゴッコ」は作った原稿を自宅でランプで簡易的に製版して印刷できるガジェットだ。

主に年賀状を作るために持つ家庭が多かったと思う。

私はプリントゴッコが好きで好きで仕方がない子どもだった。

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プリントゴッコ、これですな。
ちなみにこのPG10は平成3年(1991年)の発売

プリントゴッコは平成20年(2008年)に本体販売が終了。

好きすぎてそのタイミングに合わせ「今こそプリントゴッコでフルカラー印刷を」という記事を書いた。

プリントゴッコには3版を重ね刷りすることでフルカラー印刷ができるという大技があったのだ。

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プリントゴッコでいうところのフルカラー
こちらの記事より)

現役利用当時は、書いたものが増えるというのにものすごく感心を持っていた覚えがある。自分の書いたものが倍々になって伝わるということに興奮していたんだろう。

複製せずともインターネットで発信し放題のいまだが、がんばって言うと小学生が動画をYoutubeにアップしてみたい! と思うような感覚だろうか。

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平成24年(2012年)には消耗品の販売も終了、理想科学工業での事業自体が終わった。
それを偲んだ記事がヨシダプロによる「プリントゴッコで迷惑メール」だ。
デイリーポータルZはプリントゴッコ大好きサイトなのだ。

なにしろ、昭和の終わりから平成のはじめを語るうえでけっして忘れてはいけない暮らしの道具、それがプリントゴッコだ。

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おもちゃ屋さんのデッドストック「ピカッシュ」

しかし今後、たとえばレコードやカセットテープが根強く人気なようにカムバックがあるとはあまり思えないタイプの商品だろう。

そういった意味でプリントゴッコについて我々のサイトに記録が残っているというのは頼もしいことだ。

そうして安心しきって暮らしていた数年前。まちのおもちゃ屋さんで「ピカッシュ」というセットをみつけた。

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ピカッシュ、こちらです

「か・ん・た・ん・プ・リ・ン・ト」とある。

どうやらこれ、プリントゴッコのジェネリック的商品のようなのだ。

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セットはこんなかんじ
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製版のランプだ! 

製版できるサイズははがきに満たないサイズだが、セットはプリントゴッコにかなり近い。

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版になるマスターのフィルムが小さい

プリントゴッコファンとしての使命感にかられ秒で購入した。

「正直使えるかわかんないからまけておきますね」とかなり安く売ってもらった。使えるかわかんないとしても内部をよく観察したいし、ありがたい。

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原稿づくりに使うイラスト集もついていた……。
うおお、平行世界のプリントゴッコだ!

調べてみると、タカラトミーになるまえのトミーが昭和59年(1984年)ごろに発売していたらしいことが分かった。

わたしがちょうどプリントゴッコに夢中になっていたころだ。

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取説のイラストが味わい深い
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保証書の「お買い上げ日」欄が「昭和」前提だ。
少なくともこの個体は平成に入ってからの商品ではないようだ。

プリントゴッコはかなり流通量が多かったとみえていまも簡単に手に入る。しかしこのピカッシュは軽く検索にはひっかかってくるもののメルカリですぐ買える! というレベルではない。

流行品のジェネリック、いちいち記録されずさっぱり忘れ去られるほうの昭和だ。

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使い方もほとんどプリントゴッコでした

で、もったいつけずに使ってみるとこれが思った以上にプリントゴッコだった。

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カーボンを含んだ画材で原稿を作って
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ランプを入れたヘッドを押し込んで光らせて製版
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まさにピカッシュ! というかんじ
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しましまにインクを乗せるのが好きだったおぼえがある
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マスターのフィルムにインクを乗せる
(乗せすぎてあとでもれた、懐かしい失敗)

 

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スタンプ台にマスターを差し込んでスタンプして印刷する

違いといえば、版のサイズのほかは、プリントゴッコは台座にハガキを固定して挟むように刷るのに対して、ピカッシュは版をスタンプにして印刷する、くらいだろうか。

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昭和の遺産で令和を刷っておきました

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そうそう、このじゅわっとした質感!
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まんぞくだ

それにしても30年以上前の商品だ。お店の方も使える保証はないといっていたがぜんぜん使えた(マスターの劣化か若干インクにじみが気になったくらいか)。

昭和の保証書のついた印刷ガジェットで刷る令和。時代を生きてる感がすっかり全身に沁み渡った。

納戸にしまって令和へ行こう。


デッドストックの「またせたな」という感じ

デッドストックに興味があって、売られているとものすごくわくわくした気持ちで眺めるし、今回のようにたまに瞬発力で買うこともある。

昔のものがきちんと箱の劣化や日焼けなどして時を超えたような様子で、しかし新品であるというのにはかなり興奮する。

時をこえて来た! という「またせたな」という感じがいいんだと思う。

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昭和の遺産で作る「平成最後の」
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