特集 2019年2月18日

しみったれた先輩におごられるツアー:東急沿線特集

伝説となったしみったれツアー、メンバーを大きく変えて再挑戦してみました。

人生を振り返ってみると、基本的にはケチで金勘定に厳しいけれど、気が向くと張り切っておごりたがる先輩(ただし安い店限定で)がいなかっただろうか。

ケチだけどおごりたがり。そんな相反する要素を持ち合わせた、愛すべきしみったれの先輩になっておごったり、万年金欠の後輩としておごられたりするツアーというのを以前やってみた(こちら)。

あれから丸4年以上が立った今、景気もサッパリよくならないので、そろそろ第2回しみったれツアーを開催しようじゃないか。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。

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東急沿線、しみったれツアー

前回のしみったれツアーは最高に面白かったのだが、私がエリアの指定をしなかったため、巡った場所がバラバラとなり、移動時間と交通費が結構かかってしまったという反省がある。

だからといって、狭い場所で無理にしみったれられる店を探すというのも厳しい話。ならばと東急電鉄が一日乗り放題となる「東急ワンデーオープンチケット」を各自が購入し、その範囲内の店で先輩面するルールとした。

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660円で東急全線が一日乗り放題となる、この企画のためにあるようなチケット。詳しくはこちら

東急電鉄の範囲で遊ぶとなれば、その沿線に住んでいる人が詳しいはずだろうということで、今回のメンバーはハンダづけに詳しいよしだともふみ(こちら)、ガッツポーズが得意なキンマサタカ(こちら)、リアクションが大きい古賀及子(こちら)、そして一人だけ東武沿線の私である。

メンバー紹介が呼び捨てで始まったのは、最初の先輩役が私だからだ。このしみったれツアーでは、先輩は絶対的にえらいのである。

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左からよしだ、キン、古賀。集合して早々、後輩オーラ全開で頼もしい。

まずは各自が買っておいたワンデーチケットを、一番しっかりしていそうな古賀に全員分あずからせた。各自で持っていると、ついついICカードでピッっとやってしまいそうになるからだ。

この企画に置いて、そんな無駄遣いは絶対に許されない。

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切符の管理を古賀に押し付ける。切符というアイテムにより、なんだか急に遠足感が出てきた。

鵜の木にある製麺所直営の立ち食い蕎麦屋

平日の午後1時という、多くの社会人が真面目に働いている時間にのほほんと集まったのは、東急多摩川線の鵜の木駅だ。

玉置先輩:「どうせ腹を空かせているんだろう? 鵜の木で一番、いや東急沿線で一番といってもいい麺料理の名店に連れて行ってやるよ!」

そう後輩たちに次げると、私は普段よりつま先の角度を広げきみにして先頭を歩きだした。なぜなら先輩だからだ。

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「今日はなんでも頼んでいいからな」

この店を知っているのと知らないのとでは、鵜の木の印象が丸っきり変わってくるぞとやってきたのは、駅の近くにある「めん類専門店」とひさしに書かれた早川製麺所だ。

古賀:「あれ、ここは麺の持ち帰りの店ですよね」

よしだ:「ここで買って先輩のボロ…いや高級アパートで食べるんですか?」

キン:「えー、もう今すぐ食べたいんですけど」

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鵜の木駅からすぐの場所にある早川製麺所。玉置先輩はこの近くに住んでいる設定だ。

玉置先輩:「そう思うだろう? ところがどっこいというやつだ。その路地を入ると、店の裏にここで製麺した麺を出す立ち食い蕎麦屋があるんだよ(ニヤリ)」

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自慢げな先輩と感心する後輩。これぞ正しい先輩と後輩だ。

玉置先輩:「おっと、勘違いはするな。別に金が惜しくて立ち食い蕎麦屋に連れて来たんじゃない。ここの麺がうまいから、そして立ち食いそば文化を愛しているからこの店にしたんだぞ。そこんところを間違えてくれるなよ」

なるべくお金を使わない理由を正当化して熱く語る玉置先輩。こういうプレイこそがこのツアーの醍醐味である。

本当のところは前から気になっていたけれど一度も来たことのない店であり、鵜の木という駅を降りたことすら初めてだったりする。

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製麺技能士工場のプレートがかっこいい。

これが「立喰はや川」のクオリティだ!

店内は壁を向いた左右のカウンター席と中央のテーブル席のみ。もちろんイスなど一脚もない。休むための店ではない、ただ食べるための店なのだ。

玉置先輩:「ほら、なんでも好きなものを注文していいから。オススメはもちろん麺の味が一番わかる『かけ』だけどな」

後輩:「うぃーす(こいつ安いのを勧めているぞ)」

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製麺所直営だが、丼物からカレーまでメニューの幅は広い。
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ラーメンの種類なんて専門店以上に豊富だ。

古賀:「わたし、コロッケそば!」

玉置先輩:「260円か。なんだ、そんなんでいいのか?」

よしだ:「ぼく、味が想像つかない牛肉ラーメンをいってみます」

玉置先輩:「お、420円ね。きっと文明開化の味がするぞ」

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食券とかないので、金を払う先輩が全員分の注文をまとめてする。

キン:「先輩、俺こういう店のカレーが大好きで。カツカレーいいっすか」

玉置先輩:「570円のか! お、おう、好きなものを食えばいいんだよ」

キン:「それに生卵をお願いします!」

玉置先輩:「おまえ、遠慮ってもんは……しなくていいんだよ」

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「先輩、ごちそうになります!」
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「弾力のある麺がうっめー!それになんだか量が多くないですか。この店が近くにあったら年に100回通います!」と古賀。
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「うわー、ラーメンに牛丼の具が乗っているのか。初体験の味になんだか興奮します!」と高いカメラで撮影するよしだ。
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「こういうズケズケした後輩の方が可愛がられません?」と一番の高額メニューを頼んだキン。それはどうかな。カレーはワカメスープ付きだ。

そしてこの店の常連(という設定)である私が頼んだのは、あえてのあんかけ焼きそばだ。

うっかり写真を撮り忘れるほどお品書きが壁の端っこに貼られている、知る人ぞ知る的なメニューである(たぶん)。

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立ち食い蕎麦屋であんかけ焼きそばって珍しいですね。

玉置先輩:「おまえら、東急沿線に住んでいるならこれを知っておいて損はないぞ。わかるか、この深い色合いをした麺。食べればカリカリでゴワゴワの特製蒸し麺だ。ある情報筋によると、自家製麺を二回深蒸しして、たっぷりの油で焼きつけて作るからこそ生まれる食感なんだよ。こんなの本格中華料理店にいってもなかなか食べられないぞ」

キン:「……え?すみません、聞いてませんでした」

玉置先輩:「いいからとにかく一口食べてみろ!」

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「なにこれ、めっちゃうまい!」「カリカリのゴワゴワってこういうことなんですね!」「この店で焼きそばを頼むなんてさすが先輩だなー!」

数あるメニューの中で、自分が選んだものをチヤホヤしてもらえる快感たるや。これぞ先輩の特権だ。

お会計は全部合わせて1680円だった。この金額でビュウビュウと先輩風を吹かせられるなら安いものである。

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「このコロッケ、いくら汁を吸っても崩れないんですよ!」と興奮する古賀。

やさしい先輩なので持ち帰り分も買ってやるぜ

もうすっかりお腹はいっぱいである。このまま帰ってよかったのだが、せっかくこの店に来たのだから、お土産を買ってやることも先輩としてはやぶさかではない。

なぜなら立ち食い以上に安いからだ。

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「ヘイ、メン。どうせ家に帰っても食べるものはないんだろう? いいよ、夕飯も買ってやるよ。それが消化されるまでは俺を敬えよ」

玉置先輩:「ほら、麺はもちろん、濃縮スープも駄菓子みたいな値段でいろいろ売っているだろ。好みの麺とスープを組み合せれば、自分だけのオリジナルヌードルが作れるぞ!」

後輩一同:「ありがとうございます!」

こういった買い物は空腹だとたくさん買ってしまうので、満腹にさせてから選ばせるのがしみったれのコツである。

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自分だけの最強の組み合せを見つけよう。
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あんかけ焼きそば用の麺も売っている。2度蒸しの話はこの時に聞きました。
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「ここの麺は保存料を使っていないから、今日食べる分だけにしておけよ!」と先輩。
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まったく遠慮をしなかった後輩たち。お、おう。

これにて私の先輩ターンは終了。一気に肩の荷が下りた感じだ。先輩役はなかなか難しいのである。

次の目的地へと向かう際、うっかりICカードで改札を通過しそうになったが、古賀さんに止められてムダ金を使わずにすんだのだった。

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しっかりと切符を管理するマネージャー気質の古賀さん。
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