予想以上にガッツポーズが下手だ
デイリーポータルZのライターからガッツポーズが苦手な人間に集まってもらった。予想以上にたくさん集まった。ガッツポーズができたらネットでちまちま文章など書いてないだろう(超偏見だけどガッツポーズが得意な人は商社にいる気がする)。
左から、大山、林、キン、べつやく、きだて、藤原
左から三番目の腕を組んでいる男性が今回のガッツポーズワークショップの先生であるキンさんである。鉄人社という出版社で書籍の編集をしている。3月に出た雑誌版デイリーポータルZもキンさんである。大学時代、アメリカンフットボールをしていただけあって、ガッツポーズに近い人生を送ってきたと思われる。
まずはレッスンを受ける前にガッツポーズをとってもらった。こいつらがこれまでの人生で行ってきたガッツポーズである。
連れてこられた宇宙人や猫のようだがこれがガッツポーズだと思っている
自分ではけっこうガッツポーズができていると思っていたが、こうやって改めてみるとひどい。イラッとする。全員に共通するのは「薄ら笑い」「ネコっぽい」の2点である。
そこで先生に模範演技を示してもらった。
グイッ
うすら笑ってもないしネコっぽくもない。神宮球場の内野席の前のほうでブルペンピッチャーの投球練習を見たときのようだ。全然違う。軟投派と言われているサイドスローのピッチャーでもすごく球が速い。
ガッツポーズは立体的に
まず最初のポイント。ガッツポーズは立体的に。
両手を伸ばしたり
手を平面的に広げるのはNGです
手は前に出して奥行きのあるポーズをとるのがポイント
ガッツポーズの手は前にして、奥行きのあるポーズにすること。
「ガッツポーズはメッセージなので目の前の人に伝わるように前に出す」
という考えがあらわれたポーズである。
それから僕らにとっては大事なポイント。握った手の方向である。
手のひらを手前にするとネコっぽくなります
ガッツポーズにネコ要素は必要ない。それから脇を締めすぎないこと、グーで顔を隠さないこと。繰り返すが、ガッツポーズはメッセージだから顔を隠してはいけないのだ。
脇の下にはみかん2個分の余裕を作る
グーで顔を隠さないように
あっというまに見違えた我々
短期間ながら要所を押さえた指導でこのようになった。
無理に笑わず、堂々としたカメラ目線。
最初のガッツポーズとずいぶん違っている。ガッツのメッセージが伝わってくる。
残りのメンバーも特訓中
「もっと気持ちを前に!」
ガッツポーズはマインドだった
実はレッスンの最初に「ガッツポーズはマインドである」と言われたのだった。
そんな精神論言われてもよく分からない。具体的なことから教えてくれとお願いしたのだがここまできて分かった。やっぱりマインドである。ビジネス書風に言うと気づきを得た。
そんな気づきを得た我々のガッツポーズがこれである。
ガッツ
横からもガッツ
ちなみに30分前、指導を受ける前の全員のガッツポーズの写真がこれだ。
ニャーン
見違えるほどの上達ぶりと言えるのではないだろうか。ガッツポーズが決まると皆から褒められる→嬉しくて練習する→また上達するという正のスパイラルが生まれている。このスパイラルを中学生のころに体験してたら違った人生になっただろうとちょっと思った。
「センセイ、こういうのはどうですか」自主的に練習を始める
ここまでのまとめ
・ガッツポーズは奥行きを出す
・目の前にいる人に伝わるように
・グーで顔を隠さない
・脇の下はみかん2個分の余裕
・手のひらを前に向けるとネコっぽくなる
では次はボウリングでどのようなガッツポーズをとるか、シチュエーション別のポーズを練習してゆきたい。
スペアをとったとき
次のレッスンはボウリングでスペアをとったときのガッツポーズである。
カーン(スペアをとった)
ガッツ
注目すべきはガッツポーズの方向。横向きである。先ほどのように前向きにガッツポーズを繰り出すと後ろにいるギャラリーには見えない。そのためにガッツポーズは横向きに繰り出すのだ。
繰り返すが、ガッツポーズはメッセージだ。
AKBのように皆でポーズを確認
もう基本のガッツポーズができているので横向きになっても以前のようにはならない。
ちなみにこれがスペアなのは、ギャラリーのほうを向いてアピールするほどでもないからである。
ひとりで納得する程度、そしてアピールする相手が後ろにいる場合に有効なガッツポーズとして憶えておきたい(しかもかなりかっこいい)。
ストライクの場合
控えめなスペアと違ってストライクの場合は積極的にアピールしてよい、と先生。
カーン!(ストライク!)
ガッツポーズのままギャラリーに駆け寄る
カメラもぶれるスピードで通り過ぎる
ひとりひとりの前をガッツポーズして通り過ぎるのだ。前ページでマスターした奥行きのあるガッツポーズに横移動が加わってかなり3Dなガッツポーズである。
無関心なギャラリーをどうやって振り向かせるか
そこで参加者から質問が出た。
「ギャラリーがこっちを向いてない場合は恥ずかしいんじゃないか」
たしかにその可能性はある。では仮に全員がスマホを見ていたという条件で先生にガッツポーズを考えてもらった。
スマホをいじって人のプレイを見ないギャラリー
やったー!ストライクだー!
低い位置からガッツポーズ
低い位置のままギャラリーの前を通り過ぎる
スマホよりも低い位置をガッツポーズが通り過ぎた。なるほど、これならスマホを見ていても視界に入ってくる。いちど視界に入ってくればガッツポーズの勝ちである。
(上記の写真でもスマホを見ていたはずのギャラリーはキンさんに釘付けである)。
ここで気をつけたいのはガッツポーズの腕を細かく動かしすぎないことである。
手がぶれているのは細かく振っているから
アタックチャンスの児玉清のように手を振ってしまうとガッツポーズの力強さがなくなる。ガッツポーズをしながら移動するときは、足の動きに合わせながらグーを動かすと力強さが出る。憶えておきたい。
派手すぎない戻るパターン3選
先ほどは超派手な戻りかたである。ふだん使いできる戻るパターンもいくつか教えてもらった。まずスタイリッシュなのがこの指さしパターン。
ギャラリーを指さしながらモデルのように戻ってくる
ドヤ顔ならぬドヤポーズである。ガッツポーズワークショップを受けながら思ったのはガッツポーズはどうやってもドヤ顔になるのでその点に関しての羞恥心はさっさとなくした方がいい。
次、比較的やりやすいのはこの2パターン。
下を見ながらかみしめながら戻る
上を向いてかみしめて戻る
これならギャラリーと目をあわせなくて済むし、誰も見てなかったときでも痛手がない。それでいながら格好が付く。二重三重のセーフティネット完備のポージングである。
特に上を向いているのはプロ野球の外国人選手のようでかっこいい。
実査にやってみるとボウリング場の天井しか見えないだろうが、かっこよければいいのだ。
ミスをしたらどうするか
ボウリングはガッツばかりではない。ミスするときもある。そのときでも締まったポーズがとれると安心である。
4つ教えてもらった
1)腕を締めて悩む
2)低い位置で手のひらをかざす
3)そのままのポーズで後ずさる
4)照れ隠しに笑いながら戻る
ぜひこの画像はスマホに保存しておいて、ボウリングでガーターを出すたびに参考にしていただきたい。
このページのまとめ
・ギャラリーに背中でアピールしたいときはガッツポーズを横に
・ガッツポーズで移動するときは腕の動きとステップはあわせる
・ギャラリーの視界に入ることを意識する
・軽くアピールしたいときは上向き・下向き
・ミスしたときの戻り方は四象限から考える
いよいよハイタッチの練習に
ガッツポーズとそれに類するポーズもマスターした。いよいよラスボス、ハイタッチの練習である。まず、編集部古賀のハイタッチを見ていただこう。
古賀が披露したハイタッチ
ひどい。ハイタッチうんぬんではなく、喜怒哀楽のどの感情なのかが分からない。むしろ怒と哀が強めである。古賀いわく「どうしていいか分からずについ手を握ってしまう」とのこと。だからプロレスの力比べのようなポーズになっていたのか。
では先生に模範演技をお願いしよう。
「パーン」
どちらもハイタッチを受けているのが大山さんだが、きちんとしたハイタッチはうけるほうは顔が引き締まっている。ハイタッチを受ける人の表情はあなたの心をうつす鏡である。
ハイタッチは手を上に流す
ではハイタッチの基本動作である。
まず、バレーボールのトスのようなポーズ
ぱーんと手を打った
その手は上へ!
このあいだ、ハイタッチをうける側は手を固定しておく。あくまで動かすのはハイタッチをする側である。
そしてハイタッチした者は、タッチした手を上に流す。この動きは意外だったが腑に落ちた。こうしないとハイタッチをした人を押し倒すことになってしまう。
奥行きがわかる写真でもういち解説しよう。
右からハイタッチが近づいてくる。パーンと打ったら手は上に
ハイタッチする側は止まらないことも大事である。止まると受ける側が躊躇してしまう。あくまでもハイタッチは流れで。
小学校のときに教えて欲しかった。いや、僕が学校を休んだときに習っていたのかもしれない。僕が校庭で遊んでいるあいだにみんな体育館に集まって講習の映画を見ていた可能性もある。
最初はおっかなびっくりだった我々だが
次々とハイタッチを繰り返すようになる
見よ、この開いた顔
藤原も笑顔
ハイタッチをアレンジしはじめる
これまでの40年間のハイタッチ欲が解き放たれたような瞬間である。そうか、僕らはハイタッチがしたかったのだ。イエーとかウイーとかいいながら手をぱしーんとあわせたかったのだ。
通りすがりの女性もハイタッチに参加
テンション上がって適当なことを書いてしまった。通りすがりではなく、デイリーポータルZ編集部が間借りしているコワーキングスペースMOVのお客さんとスタッフである。
ハイタッチの楽しさに惹かれて飛び入り参加したのだ。
キンさんは若い女性に次々とハイタッチされて「すごく……、嬉しかったです…」と言っていた。
このページのまとめ
・ハイタッチはバレーボールのトスの構えで
・ハイタッチしに行く側は叩いた手を上に流す
・ハイタッチは受けるほうは動かない
・流れでハイタッチをする
ここまでガッツポーズとハイタッチを練習した。もうどこに出ても恥ずかしくないガッツポーザーである。いよいよ外に出て実践してみたい。
信号待ちのあいだにもガッツポーズの練習
ハイタッチのフォームも確認
ちょっとした空き時間にも素振りをするサラリーマンの気持ちがよく分かる。身体が覚えた動きを忘れたくないのだ。素ガッツポーズは欠かさない。
実践・ガッツポーズ
ガッツポーズを実践するのはボウリングである。もう気まずさなんて無縁。むしろ練習したガッツポーズを披露したいのでストライクをもりもりとりたい。
正しいモチベーションである。
シューズを揃えただけでまずガッツポーズ。「靴履いた!」
これから先はコカコーラやマクドナルドのCMのようにさわやかな写真が続く予定である。
休日出勤中にFacebookでさわやかな写真をあげている人を次々と非表示にしている僕だが今日ばかりはあっち側だ。
ボウリングが下手だった
ガーター!
ミス!
ガーター!
ミス!
レッスンで会得したミス時のポーズが決まっている。決まっているががっかりトーンばかりだ。ガッツポーズに気をとられていて忘れてたが、僕らはボウリングが下手だったのだ。
そこでルールを変更した。
「投げたらどんな結果でもガッツポーズをする。」
パラダイムシフトである。これでガッツポーズを繰り出せる。
背中でアピールする美しいガッツポーズ(スペアのつもり)
ギャラリーとハイタッチ!(ストライクのつもり)
ボール投げては振り向いてポーズをとる。もう別のスポーツと言っていいだろう。「ガッツボール」というスポーツの誕生である。技術と体力が要らないので生涯スポーツに向いていると思う。
実際にストライクとると表情が違う
ガッツボールは発明だった、ただ、実際にストライクとると表情が違う。
おれ、こんな表情できるんだ…と思った
大山さんもチャクラ開いてる
たぶんこの10年でいちばんの笑顔
ストライク時のアピールパターンB
あまり見たことがないような顔をしている。パラレルワールドの明るい我々はこんな顔をしているのだろう。
明るくポージングしながらも頭のなかでは「こういうときは、えーとどんなポーズだっけ……?」とフル回転である。
ガッツポール三塁コーチャー制度
そこで新たな試みである。キンさんに三塁コーチのように立ってもらい指示してもらうのだ。
ここで指示を出す
そのとおりにポーズする
これならポーズに迷うこともないし、いろんなバリエーションのガッツポーズを繰り出せる。ガッツポーズ初心者の方法にはおすすめしたい方法である。
ガッツボールはどこまでもやさしい。
いいなりになる林
創作ポーズも生まれる
コーチの動きに刺激されてか、参加メンバーから徐々に新しいポーズが登場してきた。
アメリカンプロレス的なポーズ
天を仰ぐ(正確には蛍光灯を仰ぐ)
「私の年収低すぎ」ポーズ
わけありポーズ
上段はストライク・スペアをとったときのアピールに、下段はミスしたときの照れ隠しにご活用いただければ幸いである。
心・技・体のバランスが取れたきだてさんのガッツポーズ
ハイタッチの勢いがよくて飲みかけのコーラを凹ましていた
生まれ変わりました
ガッツポーズワークショップと実践ボウリング大会は終了した。ひとりでいるとき、あのガッツポーズがきちんと再現できるかこっそりと練習したりしている。
ガッツポーズができる人生が始まったのだ。履歴書に書きたい。
2013年 ガッツポーズ習得。
この翌日、妙な疲れと筋肉痛になったのはまだ身体がガッツポーズになれていないからだろうか。参加した人全員が妙に疲れたと言っていた(1ゲームしかしてないのに)。