佐渡の秋は柿もぎで忙しい
佐渡島の秋の名物といえば、おけさ柿である。貝の牡蠣ではなく、果物の柿。
特に佐渡南部の羽茂(はもち)地区を旅していると、オレンジ色のかわいい実をつけた木をよく目にする。
私もよくわかっていなかったのだが、おけさ柿という品種がある訳ではなく、平核無(ひらたねなし)、刀根早生(とねわせ:平核無の突然変異で早く収穫できる)という品種の種無し渋柿が、おけさ柿というブランドとして新潟の農協から出荷されているそうだ。
佐渡島はおけさ柿の出荷量のうち、六割以上を占めているが、本州の新潟で生産されているおけさ柿もあるらしい。詳しくはこちら。
渋柿の渋抜き用の焼酎がある
秋の佐渡南部は柿の収穫で忙しく、農園でバイトをしている人も多い。佐渡在住の友人の娘もその一人で、バイト先からたくさんのハネものをもらってきた。
どれも味に問題はないそうだが、農協に出荷するためには様々な基準があるので、収穫時にかなりの数がハネられてしまうそうだ。
私が訪れていた十月中旬は、まだ早生(わせ)と呼ばれる柿の時期。これからしばらくは柿のシーズンは続くので、好きなだけあげると言われた。
じゃあ一ついただきますと皮を剥いて食べようとしたら、これは全部渋柿なので、渋を抜かないと食べられないよと笑われた。へー。
そういえば柿の渋ってどうやって抜くのだろうと思っていたら、かっこいい柿専用の段ボールをくれた。
二重にした段ボールの中に、ヘタを焼酎に浸した柿を並べて密封すると、一週間くらいで渋が抜けて甘くなる。
これは昔ながらのやり方で、農協が出荷する場合は、選果場で炭酸ガスを使った渋抜き処理をするそうだ。
使用する焼酎は、アルコール度数47%を誇る『しぶぬき専科』が定番。この時期になると、酒屋やドラッグストアなどで当たり前のように目にする。外国人が柿のリキュールと間違って買わないか心配だ。
ちょっと飲んでみたのだが、特に味や香りはなく、アルコール度数の高いホワイトリカーみたいなものだと思う。酒税法で焼酎は45度までというルールがあるため、スピリッツと表示されているのかな。
HOW TO 渋柿の渋抜き
さっそく柿の渋抜きの方法を教えてもらった。
まず適当な器にしぶぬき専科を1センチくら入れて、柿のヘタ側を浸して、ヘタを下にして段ボールに並べていく。
段ボールの内側にビニール袋を拡げたり、仕上げに霧吹きでかけたり、細かい部分は各家庭で微妙に違うのだとか。
実際にやってみると、柿のサイズは意外とバラバラで、隙間なく埋めていくのが難しい。あまりぎゅうぎゅうに詰めると、それはそれで傷みそうだし。
大きい柿と小さい柿を組み合わせたり、端っこの柿は横向きにしたり、どうにかみっしり詰めていく。
これが結構楽しくて、そんなにたくさんは食べられないけれど、あと5箱くらい詰めたい気分になった。もし佐渡に住んでいたら、選果場で柿詰めのバイトをしていたかもしれない。
三角や五角の柿もある
これは余談になるが、普通の柿は四角なのだが(言われてみて気がついた)、たまに三角や五角の柿もあるそうだ。
そういう柿は出荷前にハネられるため、商品としては並ばない。世の中には、こういった値段のつかないレア商品がたくさんあるのだろう。