撮影を終え、原稿をちょっと書いては寝転んで天井を眺める、というのを繰り返してあとがきまできた。天井ばかり見ている。

よく途方に暮れ、寝転がって天井を見ている。
自宅の天井を見慣れているので、人の家やホテルの天井を見上げると「知らない場所にいるな」と深く実感できる。
天井を入れ替えるだけでも、この非日常感は再現できるのだろうか。
実際に天井を変えるにはリフォームをしなければいけないが、寝転がって見上げた時の景色を変えるだけならきっと手軽にできる。
テーブルの裏に知らない天井の画像を貼っておく。これでどうだろう。
無力感に四方を囲まれ、重力に任せて横たわった時とは違う気分になれるかもしれない。
知らない天井の画像はChatGPTに頼んで作ってもらった。5種類ある。それぞれどんな気分になるか、見上げ比べてみよう。
まずは知らない病院の天井。
床に置いた時点でギョッとするものがある。大きな鏡に天井が映っているみたい。
最初に「近いな」と思った。そんなわけがない距離に天井がある。しかし視界全部がその天井で、思っていたより没入感がある。だんだん「そんなもんかもな」という気がしてきた。
特殊な診察台がかなり上までせり上がったのかもしれないし、こういうカプセルの中に閉じ込められているのかもしれない。圧迫感があるが説得力もあった。
知らない場所だな。AIが作ったよく見るとおかしい器具も、遠くの地域の文化だと思うと不気味なリアリティがある。体の色んな場所がむずむずした。
怖かった。ある物1つ1つが絶妙に分からなくて、すごく遠いところに来てしまったのが分かる。
狙い通り非日常感はあったが、嫌な方にハンドルを切りすぎている。何回か遊びに来たことのある友達の家の天井、ぐらいがちょうど良いんだろうな。
相変わらず天井が近くて違和感があるが、それさえ慣れてくればすごく落ち着く空間だった。
夜、お刺身や固形燃料の鍋を楽しんで、温泉に入って、さあ寝ようか、という時の景色である。
1つだけ、右にある丸い照明が「知らない人の家」にあった物と同じなのが気になる
寝っ転がらない場所の天井もやってみよう
今まで気になっていた、天井との近さが気にならない。普段寝っ転がることのない場所だから、距離感の基準がないのだ。
辺りがシーンとして、遠くから水の音が聞こえてくるみたいだった。床が濡れているような気さえしてきた。
この方法で知らない天井を見上げる時は、自分が寝っ転がったことのない場所を選ぶといい。
最後なので、もう空を見上げちゃおう。
やったことはないのに、本当に中で寝転んでいる気分になった。ジャングルジムの柱が集中線のようになっているからか、視線を逃さず没入させてくれる。
「こんな場所で寝転がって誰かに見られたらどうしよう」という心配と「いつもの場所で知らない景色を見ている」という高揚感が混ざった甘酸っぱい気持ちになった。
誰かと一緒に寝転んでいたら、好きな子は誰とか将来何になりたいとか、そういう話をしただろう。
ずっと机の下にいたが、病院、人の家、旅館、水族館、ジャングルジムと、大変な移動をこなした気分になれた。
最後がジャングルジムだったので、ハッピーエンドっぽい雰囲気があってそれも良かった。病院や人の家で終わっていたら夢に出てきたと思う。
撮影を終え、原稿をちょっと書いては寝転んで天井を眺める、というのを繰り返してあとがきまできた。天井ばかり見ている。
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