意外性のある中身はまだまだあるぞ
パカッと開いて枯山水が出てくる意外さはその他の2つを上回っていると思う。指輪ケース箱庭の面白さは「指輪ケース自体が持つワクワク感」×「普通じゃない中身」の相乗効果で生まれるため、中身の意外性はかなり大切である。
今回は3種類作ってみたが他にもまだまだ面白いものを作る余地がある。自分の中の「匠」がそう叫んでいる。

ジオラマ製作をしてみたいとずっと思っているのだが、なかなかハードルが高そうだし、一度はじめたらどこまでもクオリティを求めてしまい終わりが見えなそうなので手が付けられないでいる。
どうにかして初心者でも手軽にジオラマっぽいことができないだろうか。
あ、指輪ケースならサイズ的にも作りやすそうだし、あの箱をパカッと開けてミニチュアの世界が出てきたら面白そうだ。作ってみよう。
早速つくった指輪ケースを見てほしい。
日常的に指輪ケースを手にすることがないのでそもそも持っただけでちょっとソワソワしてしまうのだが、外見は何の変哲もない指輪ケースだ。
しかしこれをパカッと開くと…
中から出てきたのは指輪ではなくサバンナの動物たちである。水を求めて集まってきている。
指輪ケースを開いて指輪ではないものが出てくると、自分で作ったにも関わらずどうしても「!?」という気持ちが沸き上がる。
以前、当サイトで北向さんが指輪ケースに何を入れるべきかという記事を書いていたが、ただ違うものを入れるだけ新鮮さがあったわけで、ちょっとした工作をしたとなればなおのことだ。
この驚きは、指輪ケースへ対峙した時に「何がもらえるのだろう」と勝手にワクワクを感じてしまう私たちの感じ方による部分も大きいのかもしれない。「モノ自体が持つワクワク感」×「普通じゃない中身」の相乗効果によって二重の驚きが生まれる。
また片手で持てるサイズ感もちょうどよい。明確に範囲が区切られていて、この中だけで世界を作り上げればいい点は初心者にとって嬉しいポイントだ。そしてこのくらいのスペースであれば高い技術力を持ち合わせていなくとも、どうにかそれっぽくできてしまう。
色々な方向から写真を撮っていると本当に指輪ケースの中に作られた小さな世界をのぞき込んでいるような気分になる。「周りの世界から箱の中を区切って特別に見せる」という指輪ケースの機能が十分に生かされている。
逆説的に指輪はこのケースによってモノ本来の価値以上の魅力が引き出されていることが実感できた。指輪はもっと指輪ケースに感謝すべきだ。指輪本体の方を「ケース指輪」と呼ぶべきなのかもしれない。
うっかり予想よりも良いものができてしまったが、作り方も一般的なジオラマやミニチュアの製作に比べるととても簡単だ。
一言でいうと「着色して、ミニチュアフィギュアを配置するだけ」
色を付けたくない部分にメンディングテープを貼っていくのだが、フタを閉めた状態では普通の指輪ケースに見えた方が開けた時の驚きが大きくなるので、色を付けたくない部分にはしっかりテープを貼ることが大切だ。
メンディングテープが貼れたらスプレーで着色する。
今回は茶色、青、緑の3色のスプレーで着色した。フタ側が青いのは青空を表現している。雲などを描いてもよいかもしれない。
これだけだとサバンナには見えないと思うが、動物のミニチュアフィギュアを乗せると不思議とサバンナ化するので安心してほしい。
東急ハンズにはこの大きなサイズのスプレーのりしか売っていなかったのだが、スプレーのりって大きいものなのだろうか。食べるほうのノリと見紛うサイズの缶である。
これを吹き付けて好きなようにフィギュアを乗せればもう完成だ。
サバンナは指輪ケース内側の本来指輪を乗せる部分を大地と見立てたわけだが、もう少し別な空間の使い方もできそうだ。
ストローのような細い棒を使うことでフィギュアを宙に浮かせるような見せ方もできる。さらに今回はフタ側にもフィギュアを貼り付けることで指輪ケース内部の空間を余すことなく使用した。
このように宙に浮かせる表現をすることで、地表面/空中/さらにその上(フタ面)という3つのレイヤーを表現できる。
指輪ケースという限られたスペースをどう使うかを考えるのはさながら狭小住宅のリフォームのようだ。気分は完全に「匠」である。
いっそ指輪ケース内側のクッション部分を全部取り払ってしまい使える空間を広げてしまうというやり方もある。「今回はダイニングテーブルがベッドも兼ねる仕掛けを作りました」みたいなことを言う大胆なタイプの匠だ。
クッション部分を取り除くことでケースの下側の部分も活用することができる。こうなってくるといよいよ「小さな世界を際立たせるための装置」以外の何物でもない。
この空間を活かして出来上がったのは…
これまでの2つとは経路が違うがこれはこれで風情があってよい。本当は枯山水らしく砂に波紋を付けたかったのだがさすがに空間が小さすぎて波紋は表現できなかった。
しかしこれこそ極めればもっとちゃんとした枯山水庭園をつくることができそうだ。普段はフタを閉めて机の上に置いておき、心を鎮めたいときにそっとフタを開けて自分だけの枯山水に癒される、パーソナル枯山水として流行らないだろうか。
既に枯山水のミニチュアが作れるキットは販売されているが、指輪ケースの中に作ることでよりパーソナル感が高まり「自分だけの癒し空間」になり得えそうだ。
有りもののクオリティを存分に利用させてもらった。この灯篭を手作りしようと思ったら大変だ。ポテトサラダと灯篭は買うに限る。
ただこのキットに付属していた黒い石は指輪ケースのスケールには合わず使えなかった。どうしようか…と周りを見渡すとその黒い石を包んでいた発砲素材の梱包材がちょうどテカテカして庭の石になりそうだ。これを丸めて黒く塗ろう。
パカッと開いて枯山水が出てくる意外さはその他の2つを上回っていると思う。指輪ケース箱庭の面白さは「指輪ケース自体が持つワクワク感」×「普通じゃない中身」の相乗効果で生まれるため、中身の意外性はかなり大切である。
今回は3種類作ってみたが他にもまだまだ面白いものを作る余地がある。自分の中の「匠」がそう叫んでいる。
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