指輪ケースには”背景”がある
誰しもが一度はテレビなどで見たことがあるだろう、四角い箱をパカッと開け、指輪を見せプロポーズをする…というシーン。とてもドラマチックな光景である。あのシーンが映えるのはきっとあの箱がいいものだからだ。
先日シモジマ(包装用品が無限にある店)でその指輪ケースを見つけた。これって単体で売ってるものなんだ、しかも400円程度で…とつい買ってしまった。
これはきっといい箱なので、指輪以外にいろんなものを入れてもいいのではないだろうか。何を入れるのが良いか決めよう、みんなで。
というわけで本日参加してくれたのは編集部の古賀さんとライターの爲房さんという頼もしいメンバーである。
指輪ケースはふたつのサイズを用意した。いわゆる婚約指輪を入れる真四角のサイズと、ペアリング用の横長のものだ。
今回総勢9点ものケースに入れる候補が集まったが、大きく分類すると「ドラマチックな演出をしたいもの」「高級感を持たせたいもの」「取り出したときの意外性を狙ったもの」の3つに分けられた。
ではでは言い出しっぺの筆者からさっそくはじめよう。
ハナウタ:じゃあまずは自分から…初めに指輪ケースという容れものを考えた時に、自分で使うものなのか、それとも相手に対して渡すものなのか、というとこからスタートして
古賀:あーー、容れもの自体の意味を考えるって事か!
さて、はじめにお伝えしておきたいのが我々がすでに”指輪ケースに入れたいもの”を考えすぎた上で臨んでいる、いわば指輪ケースリテラシーが高まった状態であるということ。
この3人だけで共鳴しているシーンが時折あると思うが「なんかわからんが楽しそうにしてんな」とあたたかい目でいただけると幸いである。
ハナウタ:とりあえず”意中の相手から渡された時にもらって嬉しいもの”を詰めました
古賀:へー、ちょっとハナウタさんらしいね。そういうストーリー込みでね
爲房:あー!
古賀:なるほどー!サイズぴったりじゃん!
爲房:こんなぴったりに!?
はまり具合に歓声が上がる。そう、意外とこの箱にしっくりくるサイズのものって難しい。
古賀:マイメロディってことは女の子だよね、まじかー
ハナウタ:ケガした時にこれされたら嬉しい…あっ、結婚しよう、って
古賀:ちょっと小悪魔感あるよね
ハナウタ:ありますね、 常に相手に渡すタイミング狙ってなきゃ出せないですからね…
古賀:私、ストーリーとか、相手に渡すというのは考えてなかったなあ
爲房:これはいいなー
古賀:これはいい、これはいい。異性に、っていうねぇ…
上々の反応にほっと胸をなでおろす。よかった、いかんせん企画者すら探り探りなのだ。
以降、メンバーのテンションは強い勢力を保ったまま日本を北上していくものである。
続けて「取り出したときの意外性」に目をつけたのが古賀さん。
ハナウタ:古賀さんが「100点のやつ持ってきます」って言ってて
古賀:そうー、正解なのよ。正解だからこそかぶりそうだなと思って
古賀:私は今回の大会にあたり編集部でブレストしました。
当日いた私、橋田、石川で話し合った結果、この3人の中ではこれが正解だろうと。このようなフワフワしたものに入って仰々しくっておかしいもの。ストーリーはないんですけど。
古賀:ちょっと待ってこれどんだけ刺さるんだ…できました。
浮かび上がる"なんだこれは"感。クリップのような銀色のパーツ。引っ張ってください、という古賀さんの指示のもと引っ張ると…
ハナウタ・爲房:あーーーーー!
爲房:あー、100点の正解が…!
古賀:橋田さんがこれがいいって
ハナウタ:出した瞬間わかるのがいいですね
古賀:これこそ女の子がSIMを乗り換えてね。アレがないないって言ってた時に、男が「あ、俺あるよ」みたいな
ハナウタ:この銀色の感じが指輪ケースに馴染みますね
古賀:挿すとクリップかなと思っちゃうんです。が、違うんです
出す楽しみ、という視点はなかった。あのSIMのやつ(正式名称不明)、どこにしまえばいいかわからないしなぁ。
次は爲房さんのターン。参加者に「1、2点持ってきてください」とお伝えしたところ爲房さんはなんと4つも用意をしてくれた。ありがたい。
爲房:こんなベタなやつをやっちゃっていいのかなって迷ったんですが…最初のやつはこれです
ハナウタ:あーそうそうそう!!(理解)
古賀:ポテコか!
そう、ポテコはこの戦いにおいて王道なのだ。であるからして実は…
ハナウタ:なげわとかもあるんですよね
爲房:そう、幅が細いんですよ
古賀:すっかりあるあるみたいになってるけど
ハナウタ:こう、デートでスイーツとか食べた後に
古賀:そうね、ちょっと口甘いなってーってときにね
爲房:「あるよ、どうぞ」って
古賀:これもある意味正解ですよね
ハナウタ:これは出なきゃいけないものです
これ出さないと「ポテコがない、やりなおし」って言われるから。
古賀さんが「いいスタートですよ」と満足げにうなずく。いいスタートだ。筆者もそう思う。
ハナウタ:次は、これをプロポーズ用のケースとして使おうと思って
古賀:何を言ってるんだ?
ハナウタ:おれは何を言っているんだ?
爲房:ピック!収まりがいい!
古賀:でも実際にやられたらと思うと…
ハナウタ:多分、バンドマンが曲を作ったんでしょうね
古賀:うわー
ハナウタ:このピックを使って、歌って「結婚しよう」って…
古賀:うわー
爲房:若いか、30過ぎてもプロを目指している感じだ(※個人の感想です)
古賀:そういう人について行ってくれるような女性ですね(※個人の感想です)
古賀:”職業結婚指輪”いける気がしますねー。
歯医者さんだったらあのウィーンってやつとか、レッスンプロだったらティーカップのところとか
ハナウタ:カメラマンだったらカメラのメモリーを入れて「ここに二人の思い出を貯めていこう」っつって
古賀:すぐストーリーつけたがる
古賀:これは泣けるわ、ドラマチック、ロマンチック。
ケースとしての格好よさを存分に発揮したのが爲房さんの一品。
爲房:次はこれです
古賀:電子工作っぽいとこ出してきたなー
※爲房さんは電子工作が得意だ
爲房:押したら何か起きそうなスイッチを…スパイ的なひとが偽装で、押したら終わりのスイッチをこれで持ち運んで
ハナウタ:しゃれてますねー
爲房:007的なやつが
小道具として一直線に格好いい。爲房さんは他にもスパイ的なパーツを用意してくれていた。
爲房:スパイ同士が落ち合った時に
古賀:やー、自分の得意分野を出してきやがって
ハナウタ:これは絶対思いつかなかった
古賀:この箱も普段指輪しか入れないからびっくりしてるでしょうね、何事だって
あのー、そう、爲房さん毎回箱に入りきれていない。いいけれど。
価値観が揺さぶられ続け、爲房さんが幼児に戻ってしまったのが筆者の「箱に高級感を見出した」一品。
ハナウタ:単におしゃれな箱として活用しようと思ったんですが、入るかな…
古賀:自分で箱持ってきて入らないとかある?
自分だけ先に箱に入るかチェックしたらずるいかと思って…ぎゅっと詰めたら中で何かつぶれた音がした。ええいままよ!
開けると同時にくしゃーと申し訳なさげに現れた紅茶のパック。と同時に、爲房さんの高らかな笑い声。
古賀:飛び出す絵本みたいになってたね
爲房:出るとこもう一回見たいなー
ハナウタ:何か海外の良いお茶みたいになりましたね
古賀:脱がした方がしっくり来た
ティーパックって”脱がす”って言うんだ。
高級感の流れでもうひとつ、古賀さんから。
古賀:できました、こちらです!
爲房:綺麗!
ハナウタ:おー、宝石みたい…!
古賀:ブレスケアってケースで500円するんですよ、そもそも結構いいもの
ハナウタ:これ、そっと差し出されたらショックですよね
「口臭ぇぞ、これ使え」ってことだものな。前に「敬老の日のプレゼントに!」というPOPで脱臭まくらが売られていたことを思い出した。
ブレスケアに続くドラッグストアシリーズ。爲房さんの3手目は薬。
機能的な一手だ。古賀さん曰く編集部の石川さんも推していたとのこと。みんな行き着くところは同じなのだ。
ハナウタ:爲房さん結婚したの今年でしたっけ、こうやって渡したんですか
爲房:全然あとから。買いに行くかって
古賀:欧米だとやるんですかね、謎ですね
爲房さんも古賀さんも指輪をバッと渡す"あのイベント"は体験したことがないらしい。確かに周りでも話を聞いたことがない。あのサプライズは我々の抱いた幻想…?
いよいよ最終局面、最後の最後で爲房さんから会心の一手が飛び出す。
爲房「入った…!」
ハナウタ:いま小声で「入った…!」が聞こえた
爲房:徐々に出てきちゃうんですよ
ハナウタ:何ですか、徐々に出てくるものって
爲房:現象として出てきちゃうんですけど
古賀:なに怖い、ペット?
ハナウタ:クワガタとかですか?
爲房:では行きます、徐々に出てくるやつ
ハナウタ:身構えた方がいいですか…?
「ある意味カップル向けかもしれないです」と言いながら姿を現した一品がこちら。
古賀・ハナウタ:わあーー!
古賀:これめっちゃいいじゃないですかー!おしゃれー!
この日一番の歓声が上がった爲房さんのペアセット。すごい、これは長年続いたきのこたけのこ戦争に終止符を打つものである。
爲房さんいわく、たけのこが入りきらずどうしても徐々に出てきてしまうらしい。
古賀:きのことたけのこが並んで…平和が…
ハナウタ:そうか、先に相手にどちらか好きな方を選んでもらうんだ
古賀:やさしさー
ハナウタ:夫婦感ありますね。夫婦雛だ
ペアリングのケースとして存分に活用されている。これは完敗である。
古賀:なるほどなー、これはペアの意味があるなぁ
さぁすべて出揃ったところで一番ケースに入れたいものを選ぼう。
ハナウタ:SIMを出すやつは「なんだこれは」からの展開があったのが良かった
古賀:ピックはねー、ハナウタさんの気持ち悪さが出たねー。そういうとこあるよねって言う、嫌いじゃないですよ
爲房:ピック、(実際に箱に入れたひとが)3人ぐらいはいるんだろうなって
古賀:いやもっといるんじゃないですか
バンドマンのプロポーズの話になると歯止めがきかない。脱線しかけているので主題へ戻そう。
ハナウタ:きのこたけのこはストーリーがあって良かったですね
古賀:あ、私も!
プロポーズ用に選んだモノが多い中で、ペアリングをテーマにこれ以上ない選定をしたことが勝因につながったのだろう。さすが、新婚の爲房さんだからこそのハッピーエンドなチョイスだった。満足。
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