もっとTシャツ作りたくなった
これならペタンペタンと簡単にプリントできるから、同じ絵柄のTシャツをどんどん量産できる! と思いついたが、そもそも「プリントゴッコ」でやる必要あるのだろうか? という疑問が生じてきた。そう、世の中にはそれ用のキットもあるのだ。
知ってる人なら当然知ってるようなものに、遠回りして辿り着いたような気がしている。
「プリントゴッコに似てるというシルクスクリーン印刷を初体験する」という記事をちょっと前に書いた。
「シルクスクリーン印刷」がテーマの記事だったが、昔みんなが年賀状印刷に使ってた家庭用印刷機「プリントゴッコ」に思いを馳せすぎ、持て余してしまった。
なので今回はその思いを消化すべく、色んな人から集めた思い出エピソードをどさっと紹介しよう。そしてものすごく久々に「プリントゴッコ」本体にも触れてみた。
「シルクスクリーン印刷」と「プリントゴッコ」はどちらも細かい穴が空いたスクリーンの上にインクを乗せて印刷する仕組みだ。
まず「シルクスクリーン印刷」というのはこういうもの。
そして「プリントゴッコ」というのは家庭用印刷機だ。みんなに当たり前に通じる気でいたが、広く使われてたのって今から20年は前で、どうも知らないヤング世代が増えてきてるので説明が必要らしい。(ガーン!)
年末が近づくとテレビでは「プリントゴッコ」のCMがバンバン流れ、機械自体は家電量販店だけじゃなくその辺の文具屋にも売られていたし、備品なんかはスーパーマーケットにも売られていたし、年が明けると「プリントゴッコ」で刷られた年賀状がたくさん届いたものだ。
前回「プリントゴッコに似てるというシルクスクリーン印刷を初体験する」記事を書いた。私は「シルクスクリーン印刷」は初めてだったが、「プリントゴッコ」には馴染みがある。
なので、「プリントゴッコ」のノウハウを「シルクスクリーン印刷」に使えないか!? と、事前にTwitter(個人アカウント@skrimk0218)でこんな募集をしていた。
そしたら、当時使いこなしてた人たちから続々と使いこなし方に関する思い出話が届いた。
前回の記事内では紹介できなかったが、せっかくなので「プリントゴッコ」にポイントを当てることにしたのが今回の記事だ。
「プリントゴッコ」は、インクの乗せ方によって印刷の出方もかなり違う。
インクの量や置き方によって色の出方も変わるので、自分が気に入ったやり方を習得して極めていくような感覚がある。
Twitterでもらったコメントの中に、そんなテクに関するものが多くあったので、ここでいくつか紹介しよう。
「マーブル」は定番テクで、届いた年賀状がマーブルだらけだったという人もいた。確かによく見た記憶はある。
混ぜなければ「ドット」柄。配置やバランスを考慮しながら色を乗せるのは、結構緊張する。
この方法はやったことがないのだが、違う色のインクを混ぜ合わせて少しずつ違う色を作って、濃淡を表現する感じなんだろう。細かい作業だな……と感心してしまう。
全然やったことがなかったエンボス加工というのは、こういう立体的に膨らんだようなやつ。インクとパウダーが反応してこんなプクプクになるのか……不思議。
薄めに背景をプリントして、その上からメインをプリントする手法だ。それはそうと、背景に英字新聞ってあの時代っぽさあるなぁ。
次は背景の柄をはじめに刷るのではなく、ちょっと違うやり方。
「ベタ刷りの上に」ってことは、メインをまず印刷して、上からうっすらと影を付ける手法。難しそうというか、もう芸術の域では。
そ、そんな用途が! しかもズボンって! かなりの根気だ。すごい。ハガキに刷るときと同じインクだったらしいが、たくさん汗をかいたらどうなるんだろう……。
テクニックのみならず、アート作品まで送られてきた。「プリントゴッコ」ってこんな世界もあったのか……!
つぎはプリントゴッコで版画制作をしてた方。どんな活動なのか詳しく聞いてみると、こんな返事が返ってきた。
「プリントゴッコ」が販売終了になってしまった今、こんな手法の作品づくりを始める敷居はぐっと上がってしまったのでは。そう思うと残念だ。
次はテクニックや作品そのものではなく、エピソードを紹介。
こういうのは自分にも身に覚えがある。「プリントゴッコ」は1回版を作るごとに消耗品の豆電球2つを消費するので、ケチって1刷で済まそうとする。けど色は多く使いたいし……と思って、無理矢理一度に色を詰め込むのだ。「なんとか上手くいくんじゃないか!?」と試しては失敗してた覚えがある。
あとはこんなエピソード。
そうだったのか。版がダメになるレベルの枚数も刷ったことなかったから、何枚ぐらいが限度なのか考えたこともなかったな……。
そしてこんなのも。
あの焦げ臭さが残る電球で遊んだことはなかった……! ある一定の年齢以上になると、思いつかない使い方だなぁ。
「プリントゴッコ」の実演販売の経験がある知人に話を聞けた。
そもそもプリントゴッコって、年末以外にも買う人いたのか聞いてみたところ、
やっぱりほとんどの人にとって「年賀状を作るためのマシーン」だったことが分かる。
年賀状という年にたった一度のために機械がものすごく売れてたなんて、近年では考えられないことじゃないか……!?
ついでに、
とも言っていた。
誰に見せる訳じゃなくても、そうなるものなのか。慣れってすごい。
色んな人から届いたコメントを読んでるうちに、「プリントゴッコ」で遊んでみたくなった。
私は98年頃まではこれで年賀状を作ってたんだっけ……。ということは、生まれた子が成人してるレベルで久々じゃないか! ヒー、時の流れ!
久しぶりすぎて使い方も忘れており、作業の進み方も結果もグダグダだ。敢えて最初に言っておこう……。この先の展開、グダグダですよ、グダグダ。
まず本体をどうやって入手手段したかというと、持ってる人が身近にいたので譲ってもらえることになった。
そしてもうひとり、友人のタナゴさん。タナゴさんは、以前パチスロのパネルデザインを「シルクスクリーン印刷」でやっていた。
「シルクスクリーン印刷」でこんなのを作ってた人に「プリントゴッコ」で遊んでもらったらどんなものができるんだろう!? という見てみたさから、誘ってみた。
今回プリントゴッコで印刷する用の版も、夜なべしてたくさん作ってきてくれた。
まずは原稿づくり。やり方は2通りある。
カラーコピーはダメと書いてあったので、あくまで白黒コピーだ。
私のほうはというと、今回もTシャツに絵柄をプリントしまくろうともくろんでいる。
プリントゴッコに原稿をセットして、電球をセットして……
「ピカッッッ」と光った!! 21年ぶりの「ピカッッッ」!!!
さて、どうなったかというと……、あら???
え、なんで?? もしかして、コピーが濃かった……? セットの仕方が悪かった?
原稿の黒色部分の濃度を変えたり、セットの仕方を見直してもう一度……
更に原稿の濃度を薄くしよう……。やばい。どんどん電球が消費される……。
もっと上手くいく方法もあるのかもしれないが、一度試すたびに電球2つが消費される。失敗の回数がこんなに限られてるので、色んな方法で試してみることができない……!
元の原稿をすごく薄めにコピーしたら、ちょっとはマシになったが、まだフィルターには引っ付く。
フィルタにちょっと残っていた紙は濡らして剥がした。このぐらいなら、もしかして製版したマスターとして使えるかもしれない。
インクを乗せて……
印刷してみると、出てはくれた。実際にはちょっと出は悪いけど、これはこれでアリじゃないか。
本来こんなに失敗するものじゃないはずなのだが、どうすれば上手くいくか……と試行錯誤してるうちに、すっかり電球の残りがなくなってきた。
一度も想定したように進んでいないということは、機械側の問題なのかどうかを念のため確認しておきたい。
データをコピーするのではなく、昔やったことがある方法で一度試してみよう。手描きで原稿を作ってみる。
この原稿を使って製版したら、すんなり上手くいった。やっぱ機械に問題があるんじゃなく、原稿の問題だったか……。
ここからはサクサク進む。そうそう、このぐらいのスムーズさを想定してたのだ。
えっ、いいじゃないか。ペタンペタンと押すごとにこんな風にプリントした袋が増えていくなんて楽しい!
思い通りにいかず、原稿を用意してきてもらったタナゴさんには申し訳ないし、どんなものができるのか楽しみだったのにすごく残念だ。
しかしこんなに失敗したということは、もしかしたら最近のコピー機は、プリントゴッコ用の原稿づくりには向いてないのかもしれない。あくまで憶測だが。
思うようにいかなかったのは残念だが、「このやり方だとうまくいきづらい」と分かっただけでも意義のある新発見だ……!! と思うことにしよう。
これならペタンペタンと簡単にプリントできるから、同じ絵柄のTシャツをどんどん量産できる! と思いついたが、そもそも「プリントゴッコ」でやる必要あるのだろうか? という疑問が生じてきた。そう、世の中にはそれ用のキットもあるのだ。
知ってる人なら当然知ってるようなものに、遠回りして辿り着いたような気がしている。
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