ギミック満載の児童書ワールドよ!
想像以上に色々な種類があって大興奮であった。
演奏するタイプの絵本を買い漁って練習したら、1人でも曲を演奏出来るレベルまでいけるんじゃないか。
児童書なのを忘れて自分がどハマリしてしまいそうである。
本屋の絵本コーナーに行くと、新作や名作の絵本と一緒に「音の出る絵本」というものが並んでいる。
ボタンを押すと絵柄の名前をしゃべったり、童謡が流れたりするやつだ。
なんとなくそういうのがあるなー、くらいの認識だったのだが、よくよく売り場を見ると、なんだなんだこれは。進化がすごいのだ。
色んなものの仕組みが気になる者としては、とても興味深い。出版社に話を聞いてみた。
去年姪が爆誕したので、絵本コーナーは俄然気になるスポットに早変わりした。
そんな中でも、これは!と思ったのが音の出る絵本である。
僕が子どものときはなかった気がする。
いつの間にか存在していて、いちジャンルとして確立された感がある。本屋でもたくさんの種類が並んでいた。
そんな中でもベーシックなのはこういったものだろう。
ボタンを押すと童謡が流れる絵本だ。
これならまだ字が読めない小さい子どもでもノリノリになること請け合いである。
種類もたくさんあるので色んな好みに対応出来そうだ。
さらにこんな絵本もよく見る。
絵に数字が書いてあるので、対応するボタンを押す。
すると、その単語をしゃべってくれるのだ。
ボタンの数が30個もある。中の基板とかどうなっちゃってるんだろう、これ。
しかも日本語と英語の両方を切り替えられるのだ。そんなにしゃべれるのか。
しかし、もっと驚愕したのがこれだ。
アクセルのボタンを押すと「ブォォォー」、ブレーキを押すと「キキーッ!」と鳴るし、ウィンカーは光るしパトカーのサイレンもバスの車内アナウンスも入っている。
乗り物好きな子どもがいたら依存症になるレベルで夢中になる気がする。
ここまで来ると、もうこれは絵本なのかという気分になってくる。
音の出る絵本、カンブリア期に突入していないか。そのくらいの多様性である。
すっかり魅了されてしまったので、これはぜひ話を聞いてみたい。
実は数年前まで江古田に住んでいたこともあり、このビルの前はもう何百回も通っていた。
壁がかっこいい建物だな…と思っていたが、まさか音の出る絵本を扱う出版社のものだったとは。
ちなみに先ほど出てきた絵本はすべて永岡書店の絵本である。
この先もたくさん登場するので見てほしい。
インタビューに応じてくださったのは永岡書店編集部より編集長の吉田幸彦さんと、副編集長の島田みさきさん、それから同じく編集部より大宮今日子さんだ。
なんと編集長の吉田さんはハンドルのついた「うんてんえほん」を担当されていたという。
吉田さん(以下、敬称略):これ、二代目ですね。以前の良くなかった部分を直して。
…カーナビのところは結構こだわったんですよ。どこかにアナログ的なものを盛り込みたくて。
ー えー!ここは「あえて」だったんですね。
大宮:カーナビのところは私の子どもにも結構ヒットして、自分で絵を描いて差し替えて遊んでいるんですよ。
吉田:でしょう?子どもはそういうの好きなんだよね。
確かに自分で作って遊ぶ要素があると、より自分の絵本だ!という感じになりそうだ。
家の車のカーナビを見て真似をして描いて…というのもカーナビがほとんどの車に付いている今ならではかもしれない。
大宮さん、島田さんがここ数年で担当されたものも紹介していただいた。
めっちゃかわいい…。持ち手が付いていて、握ると音楽が鳴るようになっている。
大宮:お母さん30人くらいにヒアリングをして、赤ちゃんが好きな要素をリサーチした上で機能を考えていました。
モジュールの都合で形は変わってしまいましたが、当初はこのような企画案でしたね。
花の形からクマに変わってはいるが、つかむ部分や噛んでもいい部分といった要素はそのままだ。
大宮:赤ちゃんが使うものなので、安全性の認証試験をしたり入れ物も危なくない形にしたりというところは気をつけています。
安全面には当然ながら気をつけないといけないので大変だ。
僕の記事で良く出る適当な工作では何か失敗しても僕だけがダメージを受けるが、こういう商品ではそうはいかない。
一方、島田さんが担当されたのは「おしゃべりカスタネット メロディーえほん」。
すごい、サンプラーじゃないか。BGMも一緒に鳴らせるので、リズムに合わせて押せば1人で演奏が出来るのである。
手のひらサイズの小ささなのに、多機能すぎる…。
やってみた。お母さんの声でなく32歳の男の声が鳴り恐縮である。
ー 技術の進化でここが良くなった、というのはあるんでしょうか?たくさんの英単語の音声が流れる絵本は個人的にすごいなと思ったのですが…。
大宮:うーん、機能的にはあんまり変わっていないかもしれない…。ただ細かいところでいうと、出せる音域が広くなったところでしょうか。やわらかい音が出せるようになりましたね。
ー 電子音っぽくない音、というか。
大宮:そうですね。オルゴールの感じが赤ちゃんにはいいかなということで、この本は結構いい音が出ます。
やさしいオルゴールが流れる。電子音ではなくやさしさそのものが流れてくる感じだ。
最近の音の出る絵本の進化がよくわかった。ただ、本がメインのはずの出版社がここまでたどり着くのにどういった変遷をたどったのかが気になる。
歴史について話を聞いてみようと思う。
ー 最初のころに出た音の出る絵本ってなんだったんでしょう。スタンダードな童謡が流れる絵本でしょうか…?
吉田:いや、最初はピアノの絵本で、そのあと童謡の絵本です。書庫から持ってきましょうか。
ー ピアノが最初だったんですね…!
吉田:30年近く前に始めたんですけど、その頃はうちともう1社くらいしかなかったんですよ。
ー ええっ!そうしたら草分けだったんですか。
吉田:で、それから童謡とか英語とかにいくんですね。
あとからAmazonを調べると、「よいこのICピアノメロディーえほん」という本が最も古く、1990年前後に発売されていたようだ。
吉田:昔の方が音の出る絵本を出していたんですが、今はちょっと落ち着きました。
島田:10年くらい前にブームが来て、その頃はたくさんの種類の絵本を出していました。太鼓の本とか。
吉田:「太鼓時代」あったね。
平成時代の中にも我々が知らない時代があった。
BGMに合わせて太鼓のおもちゃをバチで叩く、という本だ。
オーケストラをバックにシンバルやティンパニを叩ける絵本もあった。楽しみすぎている。
夢中になってしまった。僕が子どもの頃にこれらの絵本があったらハマりすぎてしまう自信がある。
ー それにしても、カスタネットのような絵本の範囲から外れるような商品もたくさんありますね。
吉田:うちは児童書にしても何にしても、変化球的な商品が多いんです。たまたまそういったお付き合いをしてくれる書店さんが多くて。
編集部橋田さん:メロンパンのスクイーズを出していますよね…!?「あれ、本屋なのに!?」ってすごい気になっていました。
島田:スクイーズ以外だとルービックキューブも昔から販売をしているんです。
吉田:うちは取次を通さずに書店に直接販売する、直販のルートを持っているんです。なので、おもちゃも並べてもらうということが出来るんですね。
ー あぁー、直販だからというのがあるんですか。強みだ…!だから音の出る絵本も初期の頃から出しやすかったと。
吉田:一番最初の頃は大変だったでしょうけどね。独自の流通だから出来たというのはあると思います。
…何回か怒られましたけどね。「これ本じゃないじゃないか!」って。
ー えー!
吉田:冊子も何も付いてない商品を出したことがあって。取次を通していたらその時点で言われるんでしょうけど、うちは分からないんで勝手に出しちゃって。
ー ディアゴスティーニで本が付いてない、みたいな!
吉田:逆らったわけじゃなくて本当に知らなくて。今はそんなことはないですけど。
大宮:そういうのがあったから今こんなにバリエーションがあるんでしょうね。
すごい。この出版社だから出来た、というような理由があったのだ。
音の出る絵本についてざっくり話が聞けるといいな…という気持ちでインタビューをお願いしたら、思いもよらぬ歴史やいいエピソードも聞くことが出来た。
1冊あたり2000円弱なので、姪のプレゼントに音の出る絵本を買いまくる意欲がドカドカ湧く取材となった。
想像以上に色々な種類があって大興奮であった。
演奏するタイプの絵本を買い漁って練習したら、1人でも曲を演奏出来るレベルまでいけるんじゃないか。
児童書なのを忘れて自分がどハマリしてしまいそうである。
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