海外旅行の食事っぽさ満点だ
カレー以外のメニューは、当たり外れは大きいように思う。飲食物を前にするとつい、期待をしてしまいがちだが、全く期待通りにはいかない。期待値をぐぐっと超えてくることもあれば、その逆もある。だが、予想できなさも含めて、海外旅行っぽいなぁと思った。
もういっそ、予想とか全くつけずに、ありのままを楽しんで、口に合わなかったら合わなかったで、笑えばいいんじゃないだろうか。
カレーが好きだ。カレー屋に行ったらカレーを食べるのはもちろん、松屋に行っても、蕎麦屋に行ってもカレーを注文するのが己の流儀である。
だがたまには、カレー屋でカレーを頼まず、サイドメニューだけを楽しんでみるのはどうだろう。試してみたところ、楽しくなりました。
カレー屋は、人類が生み出したもののなかで最も尊いもののうちのひとつだ。特にインドカレーを置いてる店はおもしろい。
インドカレーを置いてる店。本当はひとくくりに出来ないほど多岐に渡るものだが、ここでは、インドカレーとナン(※食べ放題の場合もあり)が置いてあって、たまーに店員さんがラッシーをサービスしてくれるようなお店について話をすすめたい。
イメージ、わきますでしょうか。
インドカレーを置いてる店に行くと、ついどのカレーを選ぶかで頭がいっぱいになりがちだ。でも、実は他にも色々な食べ物を置いていることが多い。誰がいつ食べるんだろうというくらいに充実している。
気になっていたが、食べきれないので頼めてなかった。
だから、あえてカレーを頼むのをやめてみる。カレー以外のメニューで、お腹を満たしてみたらどうなるのか、心ゆくままに試してみよう。
まず向かったのは、落合の「ヒマラヤ」というお店だ。メニューを開いた時の第一印象は「めちゃくちゃ多い!」だった。
コンプリートにどんだけ時間がかかるのだろう。
次に感じたのは「なぜここに」っていうメニューがちらほらあること。
日本酒をちゃんと置いているのもいじらしい。ローマ字で書かれた「sake」の文字もぐっとくる。
せんべろを意識したかのような、900円の「ちょい飲みおつまみメニュー」もあった。 至れりつくせり。
この「ちょい飲みおつまみメニュー」を頼み、おつまみに「枝豆」「インドの漬物」を頼んだ。
さらに別途「冷奴」と「ライタ」という野菜のヨーグルト和えを頼んでみることに。
で、まず枝豆が到着した。
一見ごく普通の枝豆なのだが、今まで食べたどの枝豆よりもホカホカだった。
どうやら、茹でた後に水で冷やしていない模様だ。こういう細かい違いが出てくるの、わくわくする。
次に出て来たインドの漬物は、「野菜スティックが、スパイスにまみれました!」みたいなやつだった。
第一印象は「滅茶苦茶スパイシーそう」だったのだが、口に入れてみたところ咳き込んだ。ぎゃー。
しょっぱいのか。辛いのか。どっちかわからなくなるくらいにスパイスの自己主張が強い。口の中だけが国境を超えた。酒が進む……というより飲み物がないと食べ物が進まない。なんともパワフルな食べ物だ。
その次に来た「ライタ」は、ヨーグルトのなかにみじん切りの野菜が入っていて、スパイスが散らされていた。
「この中には、玉ねぎとにんじんが入っています」と店員さんは言う。
口にしたところ、一瞬漠然とした不安が押し寄せた。感じたことのない味なのだ。いや、味というか、食べてる時に感じる匂い。ターバンつけた人たちに囲まれると、こんな匂いが香ってくるんじゃないだろうか……という匂いがする。
だが、次第に悪くないなと思い始め、飲み込む直前には「ちょっと好きかも」と感じていた。
なのに、もうひとくち口にすると、最初に感じた、布っぽい味わいに戻る。何度もふりだしに戻る。 3歩進んで3歩下がっている。
これ、食べ物に対する感想なんだろうか。
冷奴はいちばん最後に来た。店は空いていたが、注文してから15〜20分くらいが経過していた。まさか、店内には豆腐の常備がなく、近所のスーパーに買いに走っていたのでは。だとしたら、何かごめんなさい。
ぱっと見、「タレ的なものは何もかかっていないのかな?」というビジュアル。醤油をもらおうとしたが、よく見たら冷奴のいちばん上の部分に何か盛られている。
「これはなんぞ?」と聞いたところ、ニンニクとしょうがだと言う。なのでそのまま何もかけずに食べてみた。
お、うまい! この組み合わせ、特異じゃないのに、日本風じゃない。新鮮な気持ちだ。
続いていこう。高田馬場の「友人(ユウジン)」というお店だ。 友人……
こちらもメニューが多い。カレーは30種類近くあり、サイドメニューも30種類近い。すべて制覇するのは夢の夢すぎる。胃袋があと100個あっても難しい。
とはいえども、たとえ1つでも多く、気になる食べ物を口にできれば本望だ。
まずインド風の天ぷら「パコダ」を頼んだ。いろんな野菜の盛り合わせだ。
日本の天ぷらとはだいぶ味が異なる。
やっぱりというか、なんというかスパイシー。ピーマンや人参も揚がっている。しかもやたらにうまい。
余談だが、わたしがもりもり食っている横で、2人組の男性が「ぼくと契約しようよ」と言ったり言われたりしていた。詳細はよくわからないけど、「めっちゃお金の話をしているな」と感じた。
ともあれ、ネパールの炒め物も頼んでみた。
スパイスの味……というところまではわかったのだが、何のスパイスだかわからない。
ゆえに漠然と「未知」の味がする。
しいていうと塩とレモンとハーブか。だけど、瀬戸内レモンでも、シチリアレモンでもない。これがきっとユーラシア大陸の味なんだと思う(適当)。
店員さんに尋ねたところ、使っているスパイスは「フニギリシード」だと言う。
わたしがノートにメモした文字を見て「そうそう。そうだよ」と頷いてくれた。が、のちほどグーグル検索をしたところ「フニギリシード」の該当はゼロだった。
正解が知りたい。
アスパラの炒め物は、インド風と書いてあるのだが、すごく慣れ親しんだ味がした。
わたしたち、幼なじみなんじゃ……ってくらい馴染みがある。こちらも店員さんに聞いてみたところ「味付けはにんにく、オイスターソース、ソイソース」とのこと。
……そのソース知ってる。
なお、隣の2人組は「ご縁」について話し始めていた。断片だけ聞いていると不安が増すので、全容を知りたいと願ったのだが、話しかける勇気がありませんでした。
まだまだ行こう。中野サンロードの「アジアンスター」
こちらはインドに加えて、タイをコンセプトに置いてるようだ。
メニューを開くと、生春巻きをはじめ、タイのメニューが大量にあった。このタイプ(インド+タイ)、けっこう見かけがちな気がする。
カレーと生春巻きが共存する世界、意外とあるのだ。同時に食べる人がどのくらいいるかはわからないけど。
タイっぽいメニューを頼んでみたくなり「パクチーナン」を頼んだ。すると、表面にパクチーが乗った、チーズナンがやってきた。
「もはやピザなんじゃこれ」という思いがこみ上げる。うまいんだけども。
かつて一度だけ、カレーとチーズナンのセットを頼んだ記憶が蘇ってきた。その時わたしは、ずーんとお腹が重くなり、胃袋の限界を感じて悲しみにくれた。
でも、カレーとピザを同時に食べていたと思えば納得しかない。今後、チーズナンはピザだと思って食べるようにしよう。心に誓った。
チベット料理を置いてあるお店も見つけたので、最後に行ってみたい。早稲田の「KHANA」だ。
チベット……って、どんな料理があるんだっけ。パッと思いつかない。
「ミックスチョウミン」という焼きそばみたいなやつと、「チベタンティー」を頼んでみた。
塩焼きそばっぽいな……と思いきや、塩焼きそば以上にしょっぱい。体内の水分が奪われやしないか心配になる強い味わいだ。
「チベタンティー」もかすかにしょっぱい。塩とバターとお茶の味が絶妙に混ざり合っている。
美味い不味い以前に「新世界!」という思いが募る。
しばらく飲んでいると、馴染んできて「おいしいかも」という気持ちも湧いてきた。ネットを見たら「味噌汁とか、海藻を彷彿とさせるような味」と書いてあって妙に納得した。
が、しばらく置いてから飲もうとすると、急に不安が募ってきた。どうやら、新しいものを楽しみたい心はあるにはあれども、心が追いつききれず、時間を置くと、ふりだしに戻ってしまうらしい。
まさか、こんな異国情緒を、家からそうそう離れていない距離で体験できるなんて。
カレーは美味しい。けど、カレー以外のものを食べると、一気に海外旅行感が高まるように思う。なかなかまとまった休みがとれないときには、こうやって飛べばいいんじゃないか。希望が湧いてきたぞ。
カレー以外のメニューは、当たり外れは大きいように思う。飲食物を前にするとつい、期待をしてしまいがちだが、全く期待通りにはいかない。期待値をぐぐっと超えてくることもあれば、その逆もある。だが、予想できなさも含めて、海外旅行っぽいなぁと思った。
もういっそ、予想とか全くつけずに、ありのままを楽しんで、口に合わなかったら合わなかったで、笑えばいいんじゃないだろうか。
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