特集 2021年8月12日

日本のお盆は超面白い みんなの家の「お盆」を見る

夏休みは帰省シーズン! ……ですが、今年はまだなかなかそうもいかない人も多いはず。 全国で行われているお盆を見て、田舎に帰省した気分を味わいたい。日本全国のいろんなお盆が知りたい……!

そんなわけで当サイトにて、読者の皆様から「お盆」行事の投稿を募集させていただきました。お盆に帰省しない(できない)方も、これ見て帰省気分を味わおう!

生まれも育ちも横浜。大人げない大人を目指し、日夜くだらないことを考えています。ちぷたそ名義でも活動しています。(動画インタビュー

前の記事:森にかっこいい枝を探しに行く


親族や友人など、例年人が集まる季節である夏は、祖霊を祀るお盆行事の季節でもあります。お盆とは仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と日本の祖霊信仰が融合した行事で、この時期に家に帰ってくるご先祖様を迎えてもてなし、送り出します。

横浜出身の私は、この時期お墓参りなどは行いましたが、家ではほとんどお盆らしいことをせず、親戚の家ではじめて見たお盆提灯に衝撃を受けた記憶があります。考えてみるとその頃からぼんやりと「お盆」への憧れがあったのかも。

そんなわけでまずは私から。同じ神奈川でもこんなお盆をやっていることを知らなかった、神奈川県藤沢地区の「砂盛り」です。

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砂盛り(写真:知人提供)

箱に砂(川砂)を敷き詰め、御線香や盆花、麻幹(麻がら)などを刺して先祖を迎えるのだそうです。添えられている野菜の角切りは精霊馬の食事らしい。

こちらを知って、さらにいろいろなお盆を知りたい! と思ったきっかけのお盆行事でもあります。これ以降、確かに意識すると神奈川県でも、スーパーのお盆特設コーナーで砂盛用の麻幹を売っていたりするんですよね……。

そしてここからは読者の皆さまの投稿を見ていきます! まずは「砂盛り」、うちもやるよ!という反応から。

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◆砂盛り

ユーイングさん
神奈川県厚木市

今日7/13が迎え火でした。厚木市でも砂盛りやります。
私の小さい頃は鳩サブレの缶だったのですが、父が老いてからはホームセンターで買ってきた箱になりました。
飾り物としては、蓮の葉の上に茄子を1センチ角程度に切ったものを用意し、ミソハギという植物を数本束ねて刷毛状にした物で、角切り茄子にぴしゃぴしゃ水をかける謎のセットがあります。胡瓜の馬に茄子の牛は、以前は巨大なのをわざとお盆用に育てていたのですが、畑をやめてからは「市販の野菜では勿体無くて出来ない」と、藁で出来た既製品を使っています。
当日の18時前になると玄関前でおがらで藁に火をつけて「この火でお戻りください」と言いながら掲げ、その後その火で線香を点けて、ご近所の砂盛りを回って線香を供えます。

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迎え火(写真提供:ユーイングさん)

2日後の送り火は夜21時過ぎに同様の手順で行います(「この火でお帰りなさい」と言った気がします)。

実際に砂盛りをやっているというユーイングさんから詳細な紹介が到着しました。ありがとうございます!
鳩サブレの缶でやっていたというのが神奈川らしさですね……! だいたいありますからね、鳩サブレの箱。
また、厚木市からは他の方からも「うちもやる!」と投稿を頂きました。        
  

みつるさん
神奈川県厚木市

藤沢とは少し違いますが砂盛りを玄関の前に作ります。今はやってないのでうろ覚えですが、砂で山を作り、そこに仏花(作り物のやつだったり生花だったり…)を二つ刺して祭壇のようにして、おがらを折ってまた砂山にぶっ刺してた気がします。
夕方その砂盛りの前で刺した余りのおがらを燃やしてました。

みつるさんからは「最近やっているお家見ないですね…」というコメントも。人が集まりにくくなったこのご時世で、お盆行事もすたれていってしまうのでは……という危機感も投稿を募ろうと思ったきっかけのひとつであります。お盆を情報でも後世に残していきたい……!

p2kickさん
神奈川県伊勢原市

迎え火の前に、家の前の道路に「富士山」を作って、砂盛りと同様の飾りをしていました。昔は畑の土で富士山の形を作っていましたが、
最近では箱に砂を入れるタイプが主流です。我が家は父親が張り切って大きい富士山を作っていました。大きい方が、先祖が見つけやすいと言われていて、少し誇らしかったです。
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砂盛りではなく富士山(写真提供:p2kickさん)

また盆の3日間、夕方には、組(5人組の名残)の家の富士山にお線香をあげに行ってました。

かっこいい~! 神奈川県伊勢原市、箱とか盆花の感じが砂盛り的だけどこちらは砂盛りではなく、富士山……!
先祖が見つけやすいように大きな富士山を作るんですね! 本当にいろいろで面白いな、お盆……。


 

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◆野菜の角切り

monikaさん
千葉県印西市

8/13の夕方に、お墓に行って、提灯に火を灯して家に迎えます。迎え盆です。
8/14の朝、お墓参りに行きます。前日、家に連れて帰っているのに?と子どもの頃から謎です。
このとき、茄子ときゅうりを角切りにして、お米を和えたものをお供えのご飯として持っていきます。
よく見る、茄子に割り箸刺すやつとかはありません。
8/15の夕方、家から提灯に火を灯して、お墓まで行きます。送り盆です。

野菜の角切り出たわね……! 藤沢地区では角切り野菜は「精霊馬の食事」でしたがこちらではお米を和えてお供えに。
monikaさんからは「この風習がどの辺りの地域まで一緒なのか、気になります」とのこと。千葉県北部と茨城県南部の皆さん、いかがですか?

あだち花子さん
東京都足立区

定番の回り灯籠、精霊馬のほかに仏壇の上にほおずきを飾ります。仏様と同じ数だけのごはんを出します。
ここまでは定番だと思うのですがそれにプラスして足立区のうちの祖母は以下のルーティンをしていました。
深皿に里芋の葉を敷いて、その上にナスの角切りをのせたお供えものを作ります。その横に水を入れた深皿を置いておきます。
ミソハギの花でつくった簡易的なハケで深皿の水を絡め、ナスの角切りにチョンチョンと水分を与える儀式をします(うちではお盆期間中、毎日お線香を上げるタイミングでこの儀式をしていました。)
祖母が亡くなってしばらく経ち、どういう意味でこの儀式をしていたのかわからないまま私はアラフォーを迎えました。
(子供の頃ナスをビショビショにして生前の祖母に怒られたのも今ではいい思い出です)。

こちらは先ほどの厚木市のユーイングさん同様、ナスの角切りに水を与えてたけど、意味が分からなかったという足立区のあだち花子さん。
精霊馬の食事だったりご先祖様の食事だったりする角切りナスの鮮度を保つため……? とかいろいろ考えちゃいますけど真相は謎です……! 

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◆お盆に作る臨時の祭壇「盆棚」

ゆさん
東京都下

盆棚(精霊棚)をかざり、縄を結ってまきつけ、笹を二本棚の両脇にかざります。盆棚の中には仏壇から位牌を持ってきて、配置します。写真は、盆棚の位牌配置前です。

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盆棚(写真提供:ゆさん)


また、盆登楼(電気でぐるぐるまわるやつ)をかざります。お盆はお迎えのため、8月13日の夜に線香を持って、道に置いておきます。
15日のよるは送りのために同じく線香を道においておきます。
食べるのは
朝は、おまんじゅうをふかしてつくります。
地粉の手打ちうどんをお昼に作ります。
夜はナスと乾燥昆布を醤油で煮たものをつくり、盆棚に上げます。
盆棚の上と、盆棚の下(写真でゴザが垂れている部分をめくりあげたところ)には、朝、夕とご飯とお水を上げます。
仏様が食べられるような配置で、毎回作り替える木?(植物の茎が乾燥したもの?)の箸をおいておきます。

盆棚というのは、お盆のために家ごとに設けられるお盆のための臨時の祭壇のことです(これの存在自体、大人になってから知りました)。この期間に食べる食事もしっかり決まっているんですね! おまんじゅうをふかして作ったり手打ちのうどんの用意など、準備も大変そうです……!

パネさん
長野県安曇野市

盆棚:山から切ってきたコナラの枝を棚の両側に1本ずつ立て、その間にクズのつるを張る。このとき、しめ縄につける紙垂のように、短いクズのつるを何本か取り付けて垂らす。
お供え物は野菜、果物、盆菓子(お米や塩、酒はお供えしません)。
迎え火&送り火:「カンバ」(白樺の樹皮を剥いて乾燥させたもの)を細かく裂いて使う。玄関、家の敷地の出口、墓の入り口、墓の前に少しずつ置き、燃やす。
精霊馬:我が家ではやりません(作るご家庭もあるそうです)
食べ物:「いご」(海藻を煮溶かして寒天のように固めたもの。「えご」とも言うそうです)を作る。野菜の天ぷらは必ず揚げる。

お盆の食事、地域によってバラバラだな~と思うのですが、長野からの投稿で、お盆の食べ物について触れている方はもれなく「天ぷら」を挙げてくださいました。長野のお盆は「天ぷら」……!
ハッサクさん(長野県駒ヶ根市)からは「薄皮まんじゅうを天ぷらの衣で揚げた天ぷらまんじゅうを食べます。」という情報を頂きました。絶対うまいやつ。

かにおさん
兵庫県美方郡香美町香住区

お盆前になると玄関に『オシャライさん』というのを飾ります。
はしごのような高い台の上にお供えをして、お寺からもらう御札をはります。
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オシャライさん(写真提供:かにおさん)

同じ町内でもオシャライさんをするのはうちの地区だけみたいです。

オシャライさんというのは「お精霊さん」が変化したものっぽいですね……。
こちらも盆棚の一種だと思うのですが、西日本では屋外に新精霊用(新仏)・外精霊(無縁仏)用の棚を屋外に別に設けることが多いらしいです。このオシャライさんもそのパターンかもしれません。
 

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◆なんかすっごい派手

コメダ米子さん
富山県富山市

13日の夜に『おしょうらい』をします。
8月に入るとスーパーやホームセンター(昔は八百屋さんや金物屋さんだったと思う)に「おしょうらい棒」なる、細い棒5本くらいをビニール紐でまとめて
その間におがくずをつめてバットのような形にした棒が売られ始めます。
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おしょうらい棒(写真提供:コメダ米子さん)
13日の夜、近くを流れる用水の橋の上で、おしょうらい棒に火をつけてグルグル回します。(我が家は農村部にあります)
実家(市街地)では、お墓参りに行った際にお墓の周りをおしょうらい棒を持ってグルグルまわってました。海辺の地域では海岸で地域の人が集まってやったりするところもあるそう。
ご先祖さまがおしょうらいの火を目印にして一年に一度お家に帰ってくるらしいです。

おしょうらい棒に火をつけて回す……? なんか夏フェスみたいですね。(そんな夏フェスがあってたまるかとも思いつつ)。

迎え火は盆の13日頃に焚く家が多いのですが、期間中は毎日焚く場所もあるそうです。迎え火は、かつては先祖の霊に伴ってくる悪霊除けの意味もあったそうですよ(※諸説あり)。大勢の人が火がついた棒振り回している姿は迫力がありそうですし、そりゃ悪霊も滅しますわとも思います。

米は力ださん
岩手県盛岡市太田地区

迎え火を焚く風習がなく、代わりにビアガーデンのような電飾を吊るします(新盆から3年、など期間限定で)。
改めて調べて初めて知ったのですが「高灯籠」と呼ぶそうです。
お盆近くになると地味な田園風景がエレクトリカルになります。

「高灯篭」、調べてみたらエレクトリカルでした。面白い!     
あれだ、盆踊りのやぐらにかかる提灯みたいな雰囲気です。盆踊りもお盆行事ですもんね。

あるこ。さん
長崎県長崎市

お盆は初盆なら家紋入りの白い提灯を飾って、お墓で花火したり酒盛りしたりします。
そうでないお盆は小さな藁でできた精霊船を川などに流してました。初盆は大きな舟を作り、親族などで担いで集積するところに集めて燃やしてました(今は集めて別の場所で処分してるようです)
後、舟を送り出す道々爆竹を鳴らしながら歩いて行きます。その時の掛け声が「ドーイ、ドーイ」と言います。

長崎ってお墓自体も彫られた文字が金色だったり形も凝っていたりして派手なんですよね。(参考記事:長崎の墓地がすごい)

花火したり酒盛りしたり……派手派手でご先祖様も楽しいと思います!

ももりんかさん
山梨県
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精霊馬(写真提供:ももりんかさん)

隣村の風習のようです。うちの地域では牛に荷物を括りつけたりはしません。

山梨県のももりんかさんからは知り合いの家の「いつ見てもかわいくて感動する」という精霊馬。荷物背負ってる! かわいい~!
これも村ごとの風習なんですね。はー不思議。     

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◆精霊馬はやらない

北国の夏さん
北海道岩見沢市

8月の盆の入りにくるくる回るタイプの盆提灯を一つかざり、お盆が終わったらそれを片付ける以外は普段と全く変わりません。
浄土真宗なのでお盆に特別なことをあまりやらないのと、北海道特有の「面倒なことはやらない」が徹底されたのと、
うちが代々ズボラだからかと思います。盆提灯も祖母が亡くなって仏壇を引き継いだときに間違って捨ててしまったので慌てて購入したものですし、
お盆飾りの電源を入れないことすらあります。

北国の夏さんからは「ナスときゅうりの精霊馬作る宗派の方が羨ましいです」というコメントも頂きました。精霊馬を作るかは宗派にもよるんですね……?

スライムのぬけがらさん
滋賀県(親は大阪府北部と新潟県の出身です)

①お盆のうちは肉を使わない料理を毎晩3品くらい作り、少しずつお供えします。ご先祖様が好きだったため鰹だしは使っても良いとし、殺生に当たらないとして無精卵を使った料理も供えています。
②迎え火と送り火の際、ドアに傘などをかまして隙間を開け、家の中に煙が入るようにします。煙を上げることはご先祖さまに家を知らせる役目があり、家の中までしっかり道案内できるよう家に煙を入れるのだそうです。
よく見る精霊馬は全くやりません。食材を食べずに捨てる罪悪感があるからかと思われます。

スライムのぬけがらさんの家ではお盆の間殺生をしない料理を用意し、「鰹だし」や無精卵はOKなんだとか。お盆は一般に仏事とみなされてるため、殺生に当たらない料理を用意するところが多いみたいです。(とはいえ、親の健在な者だけ魚食するようなところもあるらしい)。

最後は盆と直接は関係ないけど……。というこんな投稿。

卯月さん
秋田県横手市

直接お盆の行事という訳ではありませんが、成人式と厄払い&同窓会がお盆の時期に開催されます。
成人式の際は女子は晴れ着ではなく結婚式の二次会的な服装が多数、男子はスーツで参加でした。
厄払いでは合同でお祓いをしてそのまま地元のホテルなんかで同窓会という流れだそうです。(厄払い不参加だったので伝え聞いた感じです)
皆が帰省しやすい時期なのでとにかく飲み会をしていたような気がします。家でもひたすら飲むので実家に帰省すると大体具合が悪くなります。
今年も帰省を諦めたので、早く気軽に帰れる世の中になって欲しいものです…

卯月さんの地区では真夏に成人式をやるそうですが、調べてみたところ都会に出る人が多い地方では、帰省しやすいよう正月や盆に成人式を行う例があるんだそうです(へ~!)。
成人式で厄払いを行うというのも私は初めて聞きましたが、二十歳という節目に成人式で厄払いをするってのはなんか理にかなっている気もしますね~。

※2021年10月15日追記:こちらの投稿に関して卯月さんから訂正をいただきました。開催時期が大体被っているので『&』にしたものの、成人式と厄払い自体は別々なものだそうです。

いやー、なにげない年中行事も興味持ってみるとめちゃくちゃ面白いな~~。


お盆、地域ごとにやることも食べるものもいろいろで面白い

皆さんが毎年やっているそのお盆、実は全国的には珍しいのかもしれません。
フォームはお盆が旧暦に合わせて7月頃からはじまる地域もあるため、7月から開けていました。こちらは現在も開けており9月中旬くらいまでは募集を行う予定です。
「うちもやるよ!」「これってもしかして珍しい?」など、まだまだお待ちしております。

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