琵琶湖疏水インクラインのねじりまんぽ
すべては、以前私が書かせていただいた琵琶湖疏水(びわこそすい)の記事(→参考)から始まった。
この記事で、私は琵琶湖から鴨川に至る琵琶湖疏水をたどったのだが、その終盤、京都の南禅寺付近にて、インクライン(物資運搬用ケーブルカー)の跡を通り抜けた。
そこで、私は一つの煉瓦トンネルを見つけた。
それはインクラインの下を抜ける為のもので、なかなか立派なポータル(トンネルの入口のこと)を持つトンネルであった。
インクラインと同時期に作られたのであろう。そのトンネルのポータル上部には、味のある書体で「雄観奇想(ゆうかんきそう)」と書かれた扁額が掲げられている。
これは琵琶湖疏水の建設に尽力した当時の京都府知事、北垣国道(きたがきくにみち)の筆によるもので、「凄い眺め、良い考え」という意味だそうだ。
扁額の上下に並ぶデンティル(ギザギザに並べられたレンガ装飾)もカッコ良いし、これはなかなかに、素晴らしいトンネルではないか。そう思った。
ところがだ、いざ坑内に入ろうとしたその時、このトンネルが何か妙な雰囲気を発していることに気が付いた。普通の煉瓦トンネルとはちょっと違う、異質な感じが漂っていたのである。
その違和感の原因は、内部に入った瞬間に理解できた。
トンネル内部の煉瓦が、螺旋状にねじれていたのである。それはまるで、渦を巻いて奥へと吸い込まれて行くかのよう。何だこれは、魔封波か。電子ジャーはどこだ。
普通、煉瓦は地面に対して平行に積まれているものである。ところがこのトンネルは、見事なまでに、煉瓦が斜めに積まれているのだ。まっこと、不思議な光景である。
トンネルの外に立つ案内板を見ると、そこには「ねじりまんぽ」とあった。ふむ、ねじりまんぽ、とな。ねじりまんぽ、ねじりまんぽ……。何かこう、心をくすぐるネーミングである。「ねじり」で「まんぽ」なのだ。素晴らしい。私はこれを、声に出したい日本語の土木部門第一位に据えるとしたい。
とまぁ、そんな戯言はさておき……。ねじりまんぽは、正式には斜拱渠(しゃきょうきょ)と言い、強度を高めるために煉瓦を斜めに積んだトンネル、ということだ。「まんぽ(間歩)」とは鉄道の線路をくぐるトンネルのことで、それがねじれているから「ねじりまんぽ」。至って単純明快なネーミングである。
しかし、このねじりまんぽが作り出す螺旋模様はおもしろい。他にも現存しているものが無いかと調べてみたら、やはりあった。しかも嬉しいことに、私が住んでいる関西圏に集中しており、特にJR東海道本線の大阪-名古屋間に多いようだ。これは是が非でも巡らなければ。
……ところで、この螺旋状のトンネルを見ていて、何かを思い浮かべないだろうか。筒状の内部を線が螺旋に走る――そう、銃のライフリング(銃弾が通る、銃身に刻まれた線)である。というワケで、アレをやってみた。
お分かりいただけただろうか。007のオープニングである(→参考動画)。モデルとポーズがおかしいのは大目に見ていただきたい。
ねじりまんぽの螺旋を銃のライフリングに見立てる。これは良い思い付きだぞ、うっしっしと思いきや、既に思い付くどころかTシャツのデザインにまでされている方がいた(→参考外部サイト)。が、まぁ、それも大目に見ていただきたい。
というワケで、今回はねじりまんぽがいくつか残る東海道本線を巡り、それぞれレビューしてみたいと思う。ぜひとも、最後までお付き合い下さい。
琵琶湖疎水インクラインのねじりまんぽ | |
ねじれ度 | ★★★★☆ |
保存良好度 | ★★★★☆ |
ジェームズボン度 | ★★★★☆ |
琵琶湖疎水インクラインのねじりまんぽ位置図