デジタルリマスター 2023年11月1日

琵琶湖疏水をたどって京都まで(デジタルリマスター)

琵琶湖疏水(びわこそすい)をご存知だろうか。それは明治時代に作られた水路であり、その名の通り琵琶湖に端を発し、山科を通って京都の鴨川、そして宇治川へと注ぐ水の道だ。

私は古いものに目が無く、また水路や鉄道、古道などと言った筋をたどるのも好きである。これまでにも、八ツ沢水力発電所の導水路や、碓氷峠鉄道の跡を歩いて記事にしてきた。

そんな私にとって、琵琶湖疏水はまさに西の大御所。いつかたどってみたい憧れの存在だ。しかし私は今回、ついにその憧れへと手を伸ばし、攻略してみる事にした。

2009年10月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

前の記事:奥祖谷、高低差390mの斜面集落(デジタルリマスター)

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琵琶湖疏水とはなんじゃらほい

まずは琵琶湖疏水について軽くご説明。

明治時代に入り、日本の首都は京都から東京へと移ることになった。それにより京都の人口が減り、町は廃れてしまう。京都は海に面していない為、産業を興そうにも燃料を運ぶのが面倒で、他の都市とは地理的な部分でハンデがあった。

京都府知事の北垣国道は、琵琶湖から京都市内に水路を引くことで舟運の利便性を高め、また工業用水や農業用水、飲料水を確保して近代化を推し進めようと考えた。

琵琶湖疏水の工事は明治18年から始まり、明治23年に大津から鴨川までの区間(第一疏水)が完成。鴨川から宇治川までの区間(鴨川運河)は、明治25年に工事が始まり明治27年に完成した。

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琵琶湖疏水はおおむねこんな感じ(縮尺とか、そういうのはテキトウです)

琵琶湖疏水は第一疏水以外にも、第二疏水やら分線やらと、いくつかのルートがあるのだけれど、今回はそのうち明治時代の面影を良く残す、大津港の取水口から鴨川までの第一疏水、およそ20kmをたどってみたいと思う。

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大津港の取水口からスタート

出発地点は滋賀県大津市の大津港。そこに琵琶湖疏水の取水口はある。

それでは、いざ京都へ!と意気込みたいところではあるが、残念ながらこの日は雨。傘を差しての行軍となった。まぁ、雨の疏水も風情があるさ……きっと。

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琵琶湖疏水はここから始まる
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疏水の入口に何かの施設があった

釣り人が湖面に糸を垂らす大津港から内陸に入ると、いきなり現れるのがこの琵琶湖第一疏水揚水機場。

これは万が一、琵琶湖の水位が下がって水を確保できなくなった場合、ポンプで水を汲み上げて疏水に流すための施設らしい。けれどまぁ、見た感じ今は水が不足していることも無さそうで、あまり頻繁に使われるものではない模様。

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取水口から取り込まれた水は、水路を流れていく
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やっぱり石積みは趣がありますなぁ

この琵琶湖疏水、一見するとどこにでもありそうな町中の川に見えるけれど、ところがどっこい、よくよく見ると、護岸はすべて石積みなのですよ。石というのは時間がたっても汚くならず、逆に味が増すのが良いですな。

そのまま直線の疏水を300mほど歩いて行くと、今度は目の前に水門が現れた。

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大津閘門(左)と制水門(右)

これは疏水の水位調節のための閘門。その横には水の逆流を防ぐ制水門がある。

閘門の支柱にはレンガが使われており、石とはまた違った雰囲気が出ていて素敵だ。無骨な鉄の門と相まって、なんとも良い感じの味わいを見せてくれる。

いやはや、たまらんですなぁ。

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鉄とレンガと石
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それはそうと、合流点の曲面がセクシー

ここで最も印象的だったのが、閘門と制水門の合流点だ。水路と水路が連結するその部分が、なんていうか、セクシーなのだ。丸っこくて、滑らかで。指でなぞってみたくなりませんか。

さて、閘門から出た琵琶湖疏水はやはり直線に突き進み、取水口からおよそ500mの所でついに山へと衝突。ここから水路は第一隧道(ずいどう)に入ることになる。ちなみに隧道とは、トンネルのこと。

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琵琶湖疏水は真っ直ぐに伸び、山の中へと消える
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何気にカッコ良い、第一隧道入口
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間近で見れないのが残念極まりない

明治に作られたトンネルの入口は、職人が意匠を凝らした気概溢れるものが多い。ここにある第一隧道の入口もまた、新古典主義風でなかなかにカッコ良い。

ここでは水路部分に立ち入ることができないので、間近でじっくり見ることができないのが非常に残念だ。

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疏水はトンネル、人は峠を越えねばならぬ

琵琶湖疏水はトンネルへと入ってしまった。この第一隧道の長さは2436m。その間は当然ながら水路を見ることができない。

昔は舟でトンネルの中を通っていたらしいが、今はさすがにそんなことは無理なので、というか素人の私がやったらお陀仏間違いないので、素直に歩いて峠を越えることにする。

行くは小関越え。昔から東海道と北国街道(西近江路)を繋ぐ間道として、人々に利用されてきた古い道だ。

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このような寺社群を横切ります
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風情ある江戸時代の道しるべも残っている

実はこの付近一帯、三井寺という有名なお寺さんの土地となっており、その周辺にも数多くの寺社が建てられている。

三井寺は4棟の国宝建造物を始め、数多くの文化財にまみれた非常にそそられる領域ではあるけれど、しかし今回それらを周っている時間は無い。今、私が追うべきものは、三井寺ではなく琵琶湖疏水なのだ。ここは涙を飲んでスルー。

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この道が小関峠へと繋がっている
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峠とは言っても舗装されているので楽だ
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そしてここがたぶん、小関峠
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おそらく、左側の道が正解

たぶんとかおそらくとか曖昧な表現が多いが、実際どちらの道へ行けば良いのかいまいち分からず、ちょっと戸惑った。

とりあえず左だろうと何ら根拠の無い勘のみで進んで行ったのだが、どうやらそれが正解だったらしく、その先でなかなか面白いものを見つけることができた。

それは琵琶湖疏水第一隧道の竪坑だ。正確には、第一竪坑。

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湯気がもうもうと立ち上る、第一竪坑

琵琶湖疏水第一隧道は、建設当時日本一長いトンネルだった。その工事は相当大変なもので、両端から掘り進めるだけでは時間がかりすぎる。その為、上から竪坑を掘り、そこからも両側へ掘り進めるという工法を取って工期を短縮したのだ。

これはその名残りの施設。レンガ製で直径は5m。見える部分の高さは2mで、水路はこの45m下を流れているという。

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レンガが良い感じに古びて雰囲気がある
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でも、残念ながら近寄ることはできない
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しょうがない、先を急ごう
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……と思ったら、山道はあっけなく終わって市街地に出た
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よし、ここらで昼メシにするとしよう。男は黙って梅おにぎり

そういえば、以前琵琶湖疏水について調べた際、第一隧道の竪坑は確か二つあったと記憶している。一つは先ほど見つけたものだろうが、さてはて、残り一つはどこだろう。

辺りは山道から住宅街へと変わり、どこにも竪坑などがあるようには見えないのだが……

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何となく、気になって路地を奥を調べてみた
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そしたら……あれはもしや……
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おぉ、竪抗だ。やっぱり竪抗だ

何と、あっけなく見つけることができてしまった。その具体的な位置など全く調べていなかったのに。いやぁ、素晴らしい。

この第二竪抗、先ほどの第一竪抗よりだいぶ小さいが、すらっと伸びていてスタイルが良い。水路までの深さは20m。

しかし残念ながら、周囲を住宅に囲まれており、近付くには私有地を通らなければならないため、こちらも遠目で眺めるのみ。ぐぅ、さすがは大御所、琵琶湖疏水。ちょっとやそっとじゃ近寄らせてもくれやしない。

⏩ 次ページに続きます

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