庚申待をやってみていて、ついに終わります
60日に一度ある庚申の日にみんなで徹夜をするという江戸時代に流行したイベント、庚申待(こうしんまち)。
それを真似してみたい。みんなで JOYSOUND の VIPルームを借りて、庚申待と称して一人ずつ話をしようということになり、これまで2回の記事を書いた。
平安時代から続く徹夜イベント「庚申待」をやってみた
土地家屋調査士は昔の人の尻拭いをしている 〜庚申待・第二夜〜
最後となる今回は、ドローンで空から地理を見る話、そして給油所の美しさの話だ。会場は引き続きJOYSOUND 品川港南口店のVIPルームである。
藤田さんのドローンで地理を見る話
まずは藤田哲史さんのお話だ。
藤田さんは道に詳しく、中央自動車道の本を出したりしている。また最近はドローンの空撮によって、上空から地理や地形を見てみようという本を出している。
今日はドローン空撮のお話をしてくれるという。その中でも、水の流れについて詳しく見てみようというお話。
藤田さんのお話は、まずドローン自体の紹介から始まった。
藤田:まずドローンですが、航空法とかいろんな規制があって、一番手軽にやろうとすると高さ150メートル未満で飛ばすことになります。許可の必要な飛行(「特定飛行」)に該当しなければある程度自由に飛ばしていいということになっています。
会場:ドローンって今いくらくらいするんですか?
藤田:安いものだと数万円ほどで、業務用だと何百万円もしたりするんですけど、空撮だと10万とか 20万とか出せばある意味誰でも飛ばせます。
上からみることの面白さ
藤田:上空から見ることの面白さとして、地上では見えないものが、上からだと見えてくるということがあります。ひとつは全体像が分かるということです。
藤田:たとえばこれは富士見塚古墳(茨城県かすみがうら市)です。
藤田:前方後円墳なんですが、地上から見ても2つこぶがあるなっていう程度で、どっちが丸いのか四角いのかも分からない。
藤田:ところがこれは空から見ると、こんな風に分かります。
会場:おー!完全に分かる!
藤田:まずは前方後円墳だという形が分かる。それからその隣にじつは円墳があるのも分かる。
藤田:ロケーションとしても、霞ヶ浦の湖畔の台地の先端にある。しかし台地がくびれてるので、先端すぎると場所が取れないからちょっと手前のここになる、といったことが分かります。
藤田:まとめると、地上から見た場合に比べて格段に情報量が多いです。形も分かるしロケーションも分かる。地形も分かる。
黒部川の扇状地と霞堤(かすみてい)
藤田:ここからは実際に、ドローンで水の流れを空から見てみようと思います。まずは黒部川の河口です。
会場:砂州(さす)がすごい・・
藤田:黒部川の扇状地は扇頂(せんちょう:山から平野に川が出てくるところ)から河口まで18kmくらいしかなくて、山が近いんです。だから川の分類としては中流域がそのまま海に突っ込んでるようなところです。
会場:おー! ほっとくと砂がどんどん堆積しちゃう?
藤田:そうなんですが、富山湾は急に深くなっているのでそんなにたまらないと思います。
会場:なるほどー
藤田:ここで堤防が斜めに入り込んでます。ふつう堤防は繋がってるんですけど、ここで切れてるんですよ。
藤田:これが切れてるところの空撮です。「オオサンショウウオ」と名付けてます(笑)
上の写真の「ショウ」の字のちょうど上あたりがオオサンショウウオの頭で、こっちを向いているように見えるということだろう。
藤田:ここは大正時代くらいから内務省が河川改修をやり始めるんですけど、その前は霞堤(かすみてい)といって切れたやつが・・
藤田:一番外側に一重(ひとえ)、真ん中に二重(ふたえ)、というふうに幾重にもなっていた。まっすぐなところは近代的に道路にしちゃってますが、全体の形は残っている。
藤田:堤防の上は道路にすることが多いんですが、ここは切れちゃってるので、いったん坂を降りてまた登る、みたいな道になってます。
会場:自転車で走りたい(笑)
会場2:堤防が切れてるところはどうなってるんですか?
藤田:まわりが田んぼなので用水路や排水路になってますが、ここは河口に近いので排水路になってますね。カルバート(コンクリートの筒)を(道の下に通して)水を通してます。
砂鉄が模様を描く川
会場:おお、かっこいい・・!なんか模様がありますね。水深が浅い?
藤田:これは斐伊川(ひいかわ)という島根県の川で、この模様の黒いところが砂鉄なんです。
会場:おお・・!黒いほうが砂鉄なんですか。
藤田:そうです。赤いのは花崗岩(かこうがん)ですね。中国地方って土壌としては花崗岩で、花崗岩の中に砂鉄が含まれてるんですね。
たたら製鉄で砂鉄を使う
藤田:たたら製鉄ってありますよね。あれをやる時どうするかっていうと山を切り崩して、細かくしたやつから鉄分を取り出すために鉄穴流し(かんなながし)といって、水をバーっと流して比重選鉱(重いものほど下に沈む)をするんですよ。
藤田:重い砂鉄が先に沈むので、それを回収してたたら製鉄をやります。ただこれ山を切り崩していくんで、洪水の原因になるんですよ。
会場:おー、なるほど
藤田:江戸時代とかは、藩は鉄を作って財政を強化したいんで、これを進めるんですけど、ただ洪水になると下流の農民たちが困るので、バランスをとってやってました。
藤田:(山を切り崩して砂鉄を取るのが)全面的に禁止になるのは昭和の 20 年とか 30 年ぐらいに、公害意識とか河川汚濁っていう概念が出てきてからです。ただ禁止されたんですけど、砂鉄は流れてくるんで、こういう風な模様になってるということです。