特集 2019年2月11日

コオロギは見た目も味も食べやすい食材になっていた

これもコオロギ。見た目では分からない。

本当にこれ食べられるのか?というような生き物を色々食べてきた当サイト。当然昆虫類も各種食べています。

昆虫食というと、アイドルや若手芸人が無理やり食べさせられて大騒ぎしているなんてテレビ番組がよくあります。食べても大丈夫で、味もそれほど悪くない。さらに栄養価も高いとわかっていても、やはり見た目のハードルは結構高い。私もイナゴの佃煮などを食べれば美味しいと思うのですが、パッケージを開けた瞬間はちょっと引きます。

ところが、最近の昆虫食は見た目も味もかなり食べやすくなっていました。食材として色々使えます。実際に食べて調理してみました。

編集部注:昆虫の写真はほぼ出てきません

1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

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> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

高プロテインのコオロギパウダー

コオロギはこのように形を変えていました。

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Clcket(コオロギ) Powder。100%コオロギ粉末。

コオロギの粉末です。人が食べる用に飼育されたコオロギを乾燥させて粉末にしたもの。Amazonで購入しました。他に食用バッタの粉末などもありました。

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原産国はタイ。1食10g。10食分100gパック。

EUでは2018年に規制が変わり、食用の昆虫の流通が増えてきているそうです。飼育による環境負荷が小さく、栄養価が高いなど、次世代に向けた新たな食材として注目を集めています。

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1食分10g中プロテイン(タンパク質)が8g。かなりの高プロテイン食品。

肉類や大豆など、タンパク質を多く含むといわれる食材で、タンパク質含有量が10~40%の間ぐらい。それに対し、コオロギは70~80%ほどの含有量になるそうです。もうマッチョになりたかったら、筋トレしてコオロギを食べようといった感じです。

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とは言え見た目がね。粉末なら大丈夫。

とはいえやはり見た目が気になる。カニやエビも初めて見た人類は、ゴツゴツしていて泡吹くし、飛び跳ねるし、挟むし、食い物と認識したかどうか。実際、日本をはじめ世界中で昆虫は伝統的に食べられています。慣れれば大丈夫なはずですが、元々食べる習慣のない人にとっては厳しい。その点、元の姿のわからない粉末ならその障害は無くなります。

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特別おいしいものではないが、まあ食べられるか。

ということで、コオロギ粉末を食べてみました。香りは甘さのないココアというか、米ぬかのような。または、釣り餌で使うサナギ粉の香りをかなりマイルドにしたようにも感じます。

食べてみると、米ぬかと川エビの殻を混ぜたような感じと言えばいいでしょうか。好んで食べるような味とは思いませんが、食材として特に問題なく食べられます。栄養補助食品的に何かに混ぜて食べるには十分だと思います。

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コオロギ粉末入りプロテインバー

 このコオロギパウダーが使われた加工食品も市販されているので食べてみました。

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抹茶味とチョコ味のコオロギ粉末入りプロテインバー。1本50gで500円。

コオロギ粉末入りのプロテインバーです。これ1本で50匹分のコオロギ粉末が入っていて、10gのタンパク質が摂取できます。抹茶味とチョコ味の2種類。

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かなり硬いハイチュウといった食感。

この時点でコオロギパウダーの香りはしません。ココアや抹茶の香りと共に飴のような甘い香りがします。もちろんコオロギの形もありません。普通のプロテインバーと同じです。

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ちょっと甘すぎるが、なかなかうまいね。

食べてみると、先ほどのコオロギパウダーの味はほぼしません。言われれば、最後の方に少し感じるだろうかという程度です。うまいです。ただ、コオロギとは関係なく、タイ製だからか、プロテインバーだからなのか、かなり甘く感じます。タンパク質の補給だけでなく、疲労回復に糖分、アミノ酸も一気に摂取できそうです。

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うどんにしてみよう

続いて入手したコオロギパウダーで何か料理を作ってみたいと思います。粉の味がより感じられるように、うどんにしてみました。

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うどんのつなぎとしてコオロギパウダー。

全部をコオロギパウダーにすると、ボソボソになりうどんの形にはならないと思われるので、小麦2に対してコオロギパウダー1の割合で混ぜてうどんとします。

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お試し打ちなので小麦100gにコオロギパウダー50gの少量で。

材料は小麦(中力粉)、コオロギパウダー、水、塩。あと、麺つゆとして醤油、みりん、酒、砂糖、鰹節。薬味として小ネギを使います。

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うどんというよりそばになりそうな色。

うどんの打ち方については各種サイトに出ているのでそちらを見ていただければとおもいます。粉に塩水を入れて練り、袋に入れて足で踏むなどして何回も伸ばす。丸めてしばらく休ませたら麺棒で伸ばして切れば出来上がりです。

より深くうどんの作り方について知りたい方は、ライターの玉置標本さんの「趣味の製麺」をご覧ください。製麺記事も各種あります。

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やはり色は蕎麦だ。

こうして出来上がったうどんの生地がこちらです。コオロギパウダーの色が強く、見た目は蕎麦のようになってしまいました。でも、弾力はうどんの弾力です。それもかなり強い弾力となりました。

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うどん素人の切るうどんなんてこんなものです。

打ち粉をつけて麺棒でのばし、細く切り分ければうどんの麺は完成です。太さや厚みがバラバラなのは、私のうどんスキルの低さのせいです。気にしないでください。

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極太蕎麦、ではなくうどんです。

できた麺をしっかり茹でて、水で締めて皿に盛ったら薬味を乗せて完成です。麺ツユもつくりいよいよ実食。

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かなりもっちりとしたうどんだ。うまいね。

できたうどんは練りや太さの影響なのか、コオロギパウダーの影響なのか分かりませんが、かなりもっちりとした麺にしあがりました。そのままで食べたコオロギパウダーの味がかなりマイルドになり、そこに小麦の甘さが合わさった味になっています。

他にも、小麦を製粉するときに出る小麦の皮「ふすま」を混ぜたうどんの味に少し似ている気もします。それよりかはもっとクセがあるので、麺ツユではなく、カレーうどんとかにするといいかもしれません。

ひとまず、コオロギパウダーはうどんのつなぎとして問題ありません。加熱によりコオロギパウダーのプロテインがどのように変わるかわかりませんが、筋トレ後のプロテインとエネルギーの補給にコオロギパウダー入りうどんもいいかもしれません。


すぐに使うことはないけれど

ライターの水嶋さんが書いた記事「食糧危機はともかくうまいぜ高級虫料理」の中でコオロギパスタが出てきます。まさにこのコオロギパウダーを使ったパスタだと思います。

そのままはちょっとクセがあって好みが分かれるところですが、料理に使えば慣れない姿に躊躇することもなく普通に食べられます。しかも栄養価が高く、飼育に対する環境負荷も少ないので、家庭では難しいですが、加工食品には今後多く使われるようになるかもしれません。

ただ、その時はコオロギ粉末とは言わず、クリケットパウダーとか、何かいい感じの商品名になって原材料の所に記載されているような気がします。染料や食品添加物に使われる赤色天然色素のコチニール色素も、カイガラムシ色素とか書かれていたら引く人が結構いると思います。都会の人で虫嫌いの人は多いですからね。

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ちなみに、コオロギはカニやエビなどの甲殻類にアレルギーのある人が食べると、アレルギー反応が出ることがあるので食べないでください。
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