板橋、池袋界隈の有名店
やってきたのは東京都板橋区上板橋。板橋、池袋界隈にやきとん屋、イタリアン、海鮮居酒屋、日本料理の4業態9店舗を展開する「ひなた株式会社」のひなた上板橋店。ひなた株式会社が創業した店舗です。
今回のやきとん調理体験のイベントは「いたばしTIMES」という地域メディアが開催したもの。それに参加する形で社長に聞いてきました。社長、やきとん儲かりますか!
やきとん調理の指導をしてくれるのは、辻社長と関店長。辻社長はバンドをやろうと上京。その後、バンド解散、飲食で働きながら音楽活動は続けるものの、飲食に魅力を感じフグ調理師に。その後、独立、閉店、やきとん屋で修業、再び開業、9店舗のグループ社長と色々盛りだくさんな人生を歩んでいる方。関店長も元は会社員でひなたに飲みに来ていて、やがてここで働くことに。
飲食業界、色々な経歴の方がいます。
それでは、やきとん調理体験に入ります。その前に店で出しているモツ煮の仕込みを、家庭でも出来る範囲で実演してもらいました。それと共に肉の部位についても解説が入ります。
肉の部位の説明後、串に刺す形に切り分ける実演。実際に切る前には綺麗に洗ったり、何度も茹でこぼしたり、筋をとったりと前準備がありますが、そこからやると時間がかかるので切る所から入ります。
体験用の肉は既に切ってあるものが配られるので、切るのは関店長の実演を見るのみ。串に刺すところと、焼きを体験できます。
切り方は部位によって異なりますが、肉には繊維の走っている方向があるので、それが揃うように。そして、焼くと肉が縮むのでそれを考慮して食べやすいサイズに切ります。
と、簡単に書きましたが、肉によって弾力や形状も異なるので、切断面を均一かつ綺麗に切っていくのはなかなか難しい作業。家ならば別にバラバラでも問題ありませんが、店となるとそうはいきません。経験が必要です。
続いて串打ち作業です。ここから実際に体験していきます。先に小さ目の肉を刺して、上には大き目のものを刺す。刺すときには肉の繊維の方向や、それに対する肉のサイズなどを考えて刺す方向を決めていきます。
繊維が並んで幅が広いものを繊維方向に沿って刺すと肉が垂れたり、焼いている時に回ってしまったりする。逆に繊維方向に長い物は繊維に沿って刺した方がしっかり刺せる。いずれにしろ、肉の中心を狙って刺すのが基本だと関店長。
あと、刺すときに波打つように刺していくと、肉がしっかり串に止まるとのこと。串の打ち方は店によっても異なるそうだが、概ね基本はこんな感じのようだ。
ということで、基本を踏まえてやってみた結果がこれ。隙間があってガタガタ。「これは結構ヒドイ」と関店長がポツリと一言。
ですよねー。研修初日の店員の方が打った1本目ということで。誰でも最初は初心者です。
ということで関店長に直してもらいました。うん、綺麗だ。やきとん屋で出てくるやつだ。当たり前か。
この経験をふまえて、肉の並びや刺す方向を何度か検討しながらもう1本。刺したり、抜いたりを繰り返し、できあがったのがこちら。
微妙に不揃いな感じはしますが、先ほどよりかマシになったでしょうか。ただ、焼いて肉が縮んだり、反ったりして変わってくるので、できあがりは焼いてのお楽しみのようです。
こんなに時間かけていたら仕込みが永遠に終わらないなんて思いつつ、ひとまず串打ち3本終了。上板橋店では1日200本ぐらいは出るそうなので、このペースで仕込んでいたら開店時間どころか、閉店時間に間に合わなくなります。
そして、できあがりを見た辻社長が、なかなか綺麗にできていると手に取ったものが、先ほど関店長が直したものである事は黙っていました。
続いて焼きです。本来なら炭を動かして火力の調整とかもやらないといけないのですが、そこはお店の方にやってもらいます。真ん中あたりの火力が強くなっていて、端にいくほど弱火になっているそうです。
そうすることで、場所を動かして焼ける速さを調節できます。接客しながら焼くことになるので、焼き過ぎないように一番端に持って行って火から逃がす事もします。飲食店は色々同時進行。
どのぐらいで焼き上がるかは、慣れてくると分かるそうですが、分からなければ肉をキッチンハサミなどでずらして見るという手もあります。または、肉を皿とかコンロの端で軽く叩き、跳ね返り具合で焼けているかどうかを判断できるそうです。
焼いて、タレをつけて、また焼いて、ひっくり返してなんてことを繰り返し、なんとか焼き上がりました。肉が回ったり、外れたりすることもなく、見た目はまあまあ。
味は大変美味しかったです。食べやすさとか、焼き具合も、横で見てもらっていただけあってひとまず問題ないと思います。やきとん、うまいですね。ビールが進みます。
で、体験が終わったところで、辻社長。そこんところ、どうなの?やきとん屋、儲かるの?
儲かる業態です
ストレートに聞いてみたところ、辻社長からは「儲かる業態ですよ」との回答。おおっ!そうなんですか!
まず、やきとんに使う材料は仕入れが安い。そして、やきとん屋はサワーとかホッピーといった酒類が多く出やすい業態なのです。サワーやホッピーなどは店で出す飲み物の中で比較的原価が安く、日本酒やワインと比べて多く飲まれます。
また、海鮮物は切ったらその日のうちに使い切るということになりますが、肉ならば多少余裕があります。食材のロスも少なくできるので、その分利益が出ます。やきとん屋は儲けが出やすい業態といえます。
とはいえ、飲食店は1年で3割、3年で5割、5年で7割、10年で9割がつぶれると言われています。ただ、やきとん屋をやれば儲かるという訳ではありません。
味はもちろん、色々な工夫、営業努力が必要です。体験レベルでも分かるとおり、店に出せるものを作るにはそれなりの経験を積まなければならないし、仕込みもかなりの労力がかかります。
また、ひなた規模の店になってくると、働く人の確保、育成と言う問題も出てきます。どこの業界もそうですが、飲食業界も人手不足。いい人が雇えず閉店する店もあります。
辻社長も人の確保には苦労をしているようで、募集をかけても一人も採用できなかったなんてこともあるそうです。
やきとん屋は儲かりやすい。ただ、それ相応の工夫と努力。そしてお客様に楽しんでもらえる店の人のホスピタリティが無くてはならない。儲けるのは色々大変です。
飲食店は楽しい
私もカウンター7席のみで日本酒と発酵食品の酒の肴の店を経営していますが、小さい店でも続けるためには様々な工夫が必要です。1人あたりの平均注文量から計算して仕入れる日本酒の数を調整して常に質を保つとか。メニューに季節感や変化を持たせるとともに、ロスやオペレーションを考えるとか。新規顧客やリピーターを増やすための施策とか。ターゲット顧客にいかにリーチするとか。
幸い、夫婦2人でやっていて、特に2号店を出そうなんて気はないので、人手不足とか、人材育成といった問題は無いのですが、近隣の店でも結構苦労しているところがあります。どんな仕事もそうですが、色々苦労があります。
ただ、飲食店をやっていると、普通に生活をしていたら絶対に会うことは無かっただろうと言う人と多く出会えます。楽しかったとか、美味しかったとか直接言ってもらえる機会も多いです。実に楽しい。
それはそうと。そうかー、やきとん儲かるのかー。そうかー。うちの店では出せないなー。色気は出さず、日本酒と発酵食でこれからもやるか。
取材協力
ひなた上板橋店
〒174-0071
東京都板橋区常盤台4-25-1
東武東上線 上板橋駅北口より徒歩2分
電話:03-3936-8910
http://yakiton-hinata.com/aa-map-kami-itabashi/
いたばしTIMES
http://itabashi-times.com/
お知らせ
経営している店「酒と醸し料理BY」は、おかげさまで来年2019年1月11日に7周年を迎えます。ありがとうございます。7周年を記念して1月12日~14日の3連休15時~20時は「7周年記念昼から日本酒立ち飲み特別営業」をやります。
7周年記念立ち飲み特別営業では、日本酒、おつまみどれでも300円の特別価格。かたいプリンも数量限定であります。ご来店お待ちしています!
ちなみに、店の名前のBYは日本酒の醸造年度を表す表記「BY(Brewery Year)」からきています。私の名前は関係ありません。Googleで「日本酒 BY」で検索すると私の店ではなく醸造年度の表記の説明が出ますが、「日本酒 面倒臭い」で検索するとトップに出ます。「日本 日本酒 面倒臭い」「東京 日本酒 面倒臭い」などでもトップに出ます。店を検索するときは、あの面倒臭い日本酒のところなんだったっけ?と思い出せば検索しやすいです。
それから、今月12月22、23日15時~20時は「自慢日本酒特集 昼から日本酒立ち飲み特別営業」あります。何か自慢話や自慢の品を持ってきた方は日本酒1杯サービスの「自慢アイテムサービス」あります。昨年の様子はこちらで。