小出し記事「中国の巨大都市・重慶の高低差にふるえる」
ライター:ネッシーあやこ
第一回:重慶はどこにあるのか
第二回:道路に興奮したはなし
第三回:地上から高さ約68メートルに設置された歩道橋のはなし
第四回:ロープウェイとリフトのはなし
第五回:地下鉄のはなし
※小出し記事は書けたところから即、小出しに公開する連載企画です!
深い深い地下鉄の駅
「重慶には中国一深い地下鉄の駅がある」と聞いてやってきた。
一番深い部分は、地上との距離が約94.5メートルもあるという。
ものすごくざっくりいうと、この駅を大きな穴にして、渋谷マークシティ・イーストのホテル棟(99.67メートル)を埋め込んだら、少しはみ出すくらいの深さである。
100メートル走を思い返し、あのくらいの深さってことか……と想像するのでも、いい感じに気が遠くなるのでおすすめだ。
日本を代表する2つの「深い駅」とも比較してみようか。
日本一深い地下鉄駅・大江戸線の六本木駅は、地上からの距離が最大42.3メートル。日本一深い駅・JR上越線の土合駅は、駅舎と下りホームとの標高差が70.7メートルだ。
つまり重慶の紅土地駅は、六本木駅の約2倍深く、土合駅以上にモグラ駅なのである。どんだけの量の土を掘ったんだろう……って想像し始めると果てしない。一体モグラ、何万匹いたら掘り起こせるんだ。
ストップウォッチと一緒に歩いてみたところ……
ドラマティックな展開は何もなかったが、深いと聞いてやってきた場所が、本当にちゃんと深かったことにホクホクした。
なおわたしが時間を測ったのは6号線の改札から出口までの移動だ。先日ググった際に見つけた記事によると、6号線から10号線に乗り換えをする場合にはプラス3分ほどかかるらしい。
つまり、出口から10号線改札までの移動時間でカップラーメンが2回作れる。いや、電子レンジを活用した時短料理なら一品完成してしまうかもしれない。あさりの酒蒸し、もやしと鶏肉のレンジ蒸しとか。
世界最長のモノレールは地下も走る
ところで重慶の鉄道最大の特徴といえば「モノレールが走っていること」だろう。市内を10数本走る軌道交通のうち、モノレールは2号線と3号線。なかでも3号線はモノレール世界一の営業距離をほこる。
重慶のモノレールは基本地上を走っているが、一部区間のみ地下に埋まっている。一方、地下鉄も地上を走る区間がある。そして地下鉄とモノレール、両方が停車する駅も存在する。
するとどうだろう。自分が乗っていた鉄道が何だったのかわからなくなる瞬間が生まれる。地下鉄?モノレール?…どっちだったっけ。
記憶力の良い人なら、そんな現象起こらないのかもしれない。だが筆者のようにぼんやりしている人は周りの景色に影響され、あっさり混乱してしまう。旅先ならなおさらである。
しかしこれが妙に楽しい。癖になる混乱なのだ。
観光地化した駅周辺の謎オプション
混乱といえば。マンションを突き抜けるモノレールを鑑賞するために作られたスペースの一部がスケルトンになっているのも混乱だった。
こういうの、どこかの展望施設で見た記憶がある。足もとがスケルトンになっていて真下の世界が覗けるやつ。でも……、なぜここに施してしまったんだ。設計考えた人に問いかけたい気持ちでいっぱいだ。
うっかり視界に入れてしまうと「下には下があるんだよ」という無言の圧を感じ、ぷるぷる震えてしまう。
高所恐怖症じゃなくても十二分に恐怖なのである。
モノレールが似合う街
……とはいえ、モノレールを見どころはマンションだけにあらずである。いっそ全線全域といってもさしつかえない。
起伏が豊かな重慶の街並みとモノレールはよく似合う。
2020年10月現在、中国への渡航は制限されている。
今年末中国に旅立つ予定の上野の子パンダ・シャンシャンが乗る飛行機も、直行便を希望してはいるものの、経由便になる可能性がゼロではないと先日知った。
大切なパンダがそんな状況なのだ。ごく一般人であるわたしが重慶行き直行便に乗れる日はまだまだ先の話だろう。
禁断症状がでたら、ぱんぱんのカメラロールを繰り返し眺めつつ、次訪れた時の変貌ぶりを楽しみにしたい。ああ、行きたいぞ重慶!