小出し記事 2020年10月17日

中国の巨大都市・重慶の高低差にふるえる その5

高低差の激しい街・重慶は地下の世界も深い。

今回紹介したいのは、地上からの距離・約94.5メートルの地下鉄駅だ。合わせて鉄道まわりの話もしたい。

編集部よりあらすじ中国の内陸部の重慶に旅行したときに、高い建物やモノレールが走るルートに驚いたライターネッシーさん。
海外旅行好きだが海外へ行けない今、過去旅した「重慶のたてものの高低差」について連載します。最終回は地下鉄、鉄道関連のはなしです。

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

前の記事:ドラムスティックのような野菜スティックを作る

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小出し記事「中国の巨大都市・重慶の高低差にふるえる」
ライター:ネッシーあやこ

第一回:重慶はどこにあるのか
第二回:道路に興奮したはなし
第三回:地上から高さ約68メートルに設置された歩道橋のはなし
第四回:ロープウェイとリフトのはなし
第五回:地下鉄のはなし

※小出し記事は書けたところから即、小出しに公開する連載企画です!

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深い深い地下鉄の駅

「重慶には中国一深い地下鉄の駅がある」と聞いてやってきた。

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こちらだ。6号線と10号線が交わる紅土地駅
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改札から出口まで、複数のエスカレーターがつないでいる
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ぴかぴか。ピンク色の手すりがかわいい

一番深い部分は、地上との距離が約94.5メートルもあるという。

ものすごくざっくりいうと、この駅を大きな穴にして、渋谷マークシティ・イーストのホテル棟(99.67メートル)を埋め込んだら、少しはみ出すくらいの深さである。

100メートル走を思い返し、あのくらいの深さってことか……と想像するのでも、いい感じに気が遠くなるのでおすすめだ。

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しかしそのわりに駅の構内図は穏やか。全然深そうにみえないぞ

日本を代表する2つの「深い駅」とも比較してみようか。

日本一深い地下鉄駅・大江戸線の六本木駅は、地上からの距離が最大42.3メートル。日本一深い駅・JR上越線の土合駅は、駅舎と下りホームとの標高差が70.7メートルだ。

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群馬県みなかみ町にある土合(どあい)駅。詳しく知りたい方はこちらをどうぞ

つまり重慶の紅土地駅は、六本木駅の約2倍深く、土合駅以上にモグラ駅なのである。どんだけの量の土を掘ったんだろう……って想像し始めると果てしない。一体モグラ、何万匹いたら掘り起こせるんだ。

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このモグラは悪そうな顔をしてるな

ストップウォッチと一緒に歩いてみたところ……

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この記事を読んで、わたしも同じ方法(スマホ)でやろうと決めた。スマホ優秀
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景色は大きく変わらないまま
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ただ時間だけが積み重なってゆき
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なんとなく到着

ドラマティックな展開は何もなかったが、深いと聞いてやってきた場所が、本当にちゃんと深かったことにホクホクした。

なおわたしが時間を測ったのは6号線の改札から出口までの移動だ。先日ググった際に見つけた記事によると、6号線から10号線に乗り換えをする場合にはプラス3分ほどかかるらしい。

つまり、出口から10号線改札までの移動時間でカップラーメンが2回作れる。いや、電子レンジを活用した時短料理なら一品完成してしまうかもしれない。あさりの酒蒸し、もやしと鶏肉のレンジ蒸しとか。

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世界最長のモノレールは地下も走る

ところで重慶の鉄道最大の特徴といえば「モノレールが走っていること」だろう。市内を10数本走る軌道交通のうち、モノレールは2号線と3号線。なかでも3号線はモノレール世界一の営業距離をほこる。

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製造には日本も関わっていて、大阪高速鉄道(大阪モノレール)2000系をベースに作られているため兄弟のような風貌

重慶のモノレールは基本地上を走っているが、一部区間のみ地下に埋まっている。一方、地下鉄も地上を走る区間がある。そして地下鉄とモノレール、両方が停車する駅も存在する。

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地下鉄とモノレールのマークのわずかな違いぐっとくる

するとどうだろう。自分が乗っていた鉄道が何だったのかわからなくなる瞬間が生まれる。地下鉄?モノレール?…どっちだったっけ。

記憶力の良い人なら、そんな現象起こらないのかもしれない。だが筆者のようにぼんやりしている人は周りの景色に影響され、あっさり混乱してしまう。旅先ならなおさらである。

しかしこれが妙に楽しい。癖になる混乱なのだ。

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観光地化した駅周辺の謎オプション

混乱といえば。マンションを突き抜けるモノレールを鑑賞するために作られたスペースの一部がスケルトンになっているのも混乱だった。

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李子壩(りしは)駅。日本でもSNS上でバズるなどして知る人ぞ知る存在になった
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別アングルから見るとこんな感じ
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駅近くに鑑賞スポットがあるのだが
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足もとに注目してほしい
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透けてるのだ
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鑑賞用に整備された様子はなく、足場とか組まれている

こういうの、どこかの展望施設で見た記憶がある。足もとがスケルトンになっていて真下の世界が覗けるやつ。でも……、なぜここに施してしまったんだ。設計考えた人に問いかけたい気持ちでいっぱいだ。

うっかり視界に入れてしまうと「下には下があるんだよ」という無言の圧を感じ、ぷるぷる震えてしまう。

高所恐怖症じゃなくても十二分に恐怖なのである。

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モノレールが似合う街

……とはいえ、モノレールを見どころはマンションだけにあらずである。いっそ全線全域といってもさしつかえない。

起伏が豊かな重慶の街並みとモノレールはよく似合う。

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鉄道を撮影する趣味を持たない人でも、いちど重慶のモノレールに触れてしまったら、撮りたい衝動が抑えきれなくなると思うんだ
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長江との共演も良き
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絵になる光景が多いせいで気がつくとカメラロールがぱんぱんになる

2020年10月現在、中国への渡航は制限されている。

今年末中国に旅立つ予定の上野の子パンダ・シャンシャンが乗る飛行機も、直行便を希望してはいるものの、経由便になる可能性がゼロではないと先日知った。

大切なパンダがそんな状況なのだ。ごく一般人であるわたしが重慶行き直行便に乗れる日はまだまだ先の話だろう。

禁断症状がでたら、ぱんぱんのカメラロールを繰り返し眺めつつ、次訪れた時の変貌ぶりを楽しみにしたい。ああ、行きたいぞ重慶!

 

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