小出し記事 2020年9月29日

中国の巨大都市・重慶の高低差にふるえる その4

乗りものに乗っている時間が大好きだ。乗りものはいつだって身ひとつでは到底行けないような場所に連れていってくれる。

そのたび「わたしただ乗っているだけなのに、こんなに楽しくていいの……?」って気持ちになる。

今回はそんな乗りものの話。高低差の激しい街・重慶ならではのロープウェイとリフトのことを記したい。

編集部よりあらすじ:中国の内陸部の重慶に旅行したときに、高い建物やモノレールが走るルートに驚いたライターネッシーさん。
海外旅行好きだが海外へ行けない今、過去旅した「重慶のたてものの高低差」について連載します。

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

前の記事:中国の巨大都市・重慶の高低差にふるえる その3

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小出し記事「中国の巨大都市・重慶の高低差にふるえる」
ライター:ネッシーあやこ

第一回:重慶はどこにあるのか
第二回:道路に興奮したはなし
第三回:地上から高さ約68メートルに設置された歩道橋のはなし
第四回:ロープウェイとリフトのはなし
第五回:地下鉄のはなし

※小出し記事は書けたところから即、小出しに公開する連載企画です!

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長江上空を渡るロープウェイ

重慶には長江があり、長江の上空を往来するロープウェイ「長江索道」がある。

長江はとにかくでかい。さすがアジア最長の川である。歴史の教科書に出てきたのを記憶している人も多いのではないだろうか。私自身、黄河とセットでひーひー暗記したことをよく覚えている。

……しかし、まさかそのころは本物を見る日がくるとは思ってなかったな。未来はわからないから面白い。

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文明が生まれた川、長江。とにかくでかい

山にあるイメージが強いロープウェイだが、巨大都市・重慶では高層マンションの真横をロープウェイが通り過ぎる。

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住民のみなさんはどんな気持ちなんだろう。もう慣れちゃったのかな

この長江索道、かつては「山城空中公共汽車」と呼ばれ、通勤や通学などに使われていたそうだ。公共汽車は日本語にすると「バス」である。空中のバス。文字並びだけを見ると、ねこバス並にファンタジーだ。

現在はモノレール網の発達に伴い、公共交通機関としての役目は終えたものの、観光スポットとして人気という。入り口に到着すると、わいわいがやがや沢山の人であふれていた。

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チケット売り場は遊園地のに似ている。うん。観光地だ
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チケット。味わい深さとQRコードが同居している
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この列の先にロープウェイがある
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わ、きた。なかなかでかい箱である。コンテナ1個分くらいありそう
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つり革がついている。バスっぽい!

空の旅が始まった。ロープウェイはするすると進んでいく。だが、見た目のインパクトほど派手な動きはない。むしろ地味だ。さすが元・公共交通機関!と感じる安定感である。

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ただし隣にマンションあることには、ぎょっとなる
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うっかり誰かの生活を覗いてしまったらどうしよう…とつい思う
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窓の数が尋常じゃない。くらくらする
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こ、構造どうなっているんだ……?

マンション群を過ぎたら、いよいよ長江を渡る。この日の長江は泥色だった。もともと内側がまるで見えない川だが、雨の影響でさらに濁りを増していたように思う。

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泥色って心を不穏にさせる色だなぁとしみじみ思う
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対岸からこちらに向けてやってきたロープウェイ
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裏側にも何か文字が書いてあるのね

到着。

……なんだろう。乗り心地の地味さと状況の特異さを脳が同時に処理できなくて、さっきまで長江の上空にいたなんて嘘みたいとひたすら思った。

正直、書いている今も嘘みたいだ。自分のことなのに。実感って、体験すれば間違いなく得られるとも限らないのか。人体の不思議に片足突っ込んだ気分である。

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ビルに突っ込むリフト

……とふわふわした話をしたところでもうひとつ。リフトの話をしたい。こちらは一転「乗った実感」がものすごくあった。ありすぎた。

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美心洋人街の入り口

リフトが設置されているのは、重慶の中心部からバスで30分くらい行ったところにある遊園地「美心洋人街」である。

が、ググってみたところ、2018年の洋人街の移転に伴いリフトは撤去され、もう存在しないようだ。まじか。残念きわまりない。

参考記事:さすがは3D都市・重慶……ビルに突っ込んでいくスリル満点観光リフト

しかしもう存在しないならばなおさら、ありし日の姿をインターネットに紡いでおくべきだろう。

このリフト、何がすごいのかといえばまず、上記記事にあるように「ビルに突っ込んでいく」スタイルなことだ。

そしてなにより高い場所にありすぎる。見た瞬間ぎょっとした。

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こちら
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箱のような形のもある

とはいえ、せっかく来たからには乗らずにはいられないのが観光客というもの。 意を決して飛び乗り、見下ろすと足と地上との間にたっぷり空間があった。足をぷらつかせるとより不安が募る。

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そしてよくわからない突然のLOVE(※写真右側)

4年前の記憶だけど、カメラを持つ手にぎゅっと力がこもったのをまだちゃんと覚えている。なにがなんでも落としたくなかったのだ。  

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慎重に撮影した1枚
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……おや?なんだろう……蛇口のようなものが見える……
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蛇口だ!……なぜ

高さと見える景色のおかしさにくらくらしながら乗車すること10分弱。先述した「ビルの中に突っ込んでいく」局面がやってきた。

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リフトがビルに吸い込まれていく……
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吸い込まれる階、思ったより高い。3〜4階くらい?
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足下にあるのは卓球台だろうか
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白昼夢のような悪夢のような写真がとれてた

リフトは足先を自由にぷらぷらできる分、空中にいる実感が湧きやすい。だが、実感がわきすぎてお腹いっぱいになる。

地に足をつける(物理的に)って素敵なことなんだな……。降りた直後、地上のありがたみに感じ入ってしまった。重力は最高だ。

 

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