小出し記事「中国の巨大都市・重慶の高低差にふるえる」
ライター:ネッシーあやこ
第一回:重慶はどこにあるのか
第二回:道路に興奮したはなし
第三回:地上から高さ約68メートルに設置された歩道橋のはなし
第四回:ロープウェイとリフトのはなし
第五回:地下鉄のはなし
※小出し記事は書けたところから即、小出しに公開する連載企画です!
カメラのおかげで蘇る細部の記憶
……と、息を巻いて書き始めたところ早速つまずいた。重慶を訪れたのは、2016年と2018年。大枠は覚えているものの、細部の記憶がぼんやりなのだ。バイアスもかかりがちだ。
そんななか、助けてくれたのは、Googleフォトに保存されていた撮影写真約2000枚である。
脳内では、せいぜい10dpi(解像度)だった荒い記憶が、写真を見ているうちに120dpiくらいまで息を吹き返した。文明に感謝したい。
写真を見返しているうちに、「世界にはこんな一面があるんだなぁ……というかこの光景、わたし肉眼で見たんだったわ」と驚愕し、人ごとのように感激することもあった。
改めて。写真撮っておくのって、とんでもなく大事ですね。
……とはいえども
写真を撮っていた当時、「肉眼で見ているときの、このスケール感を己の撮影技術で再現するには限界があるのではないか」と惑ったことも覚えている。
道路の存在を知ったのは偶然だ。モノレールの窓に上の写真のような景色が現れたものだから、ギョッとして駅を降りたのだ。
どうしたら、今感じている興奮を持ち帰れるんだろう。撮れば撮るほどわからない。近くにいるのに現実感がまるでなかった。
で、もう1度訪れたのである
偶然の出会いから2年が経過した2018年。再訪した。1回きりでは物足りなかったのだ。
上方へと続く階段とエスカレーターを見つけた。
えげつなく高い位置の道路という異世界感とは裏腹に、簡単に道路の高さと自分の高さが近づいた。
すると急に周囲の状況が飲み込めるようになった。うわー。この道路は、ほんとうにほんとうに、現実に存在する道路なんだ。
せっかくなのでそのまま、歩行者が侵入できる場所を歩いてみることにした。
身ひとつで大きな橋を渡るのは久々だ。思えば東京の暮らしのなかで、大きな橋を徒歩で渡る機会ってそうそうない。
街にごく当たり前にある交通インフラが、新参者にとっては、いちいち楽しい。天然のジェットコースターだ。
この街、なにをするでもなく、ただ歩いているだけで1日過ごせる。むしろ積極的に歩きたくなる場所だ。