土合という駅をご存知だろうか。 「どあい」と読むこの駅はJR上越線、谷川岳の山中にひっそりとたたずむ無人駅である。 しかしこの小さな無人駅が、鉄道ファンのあいだでは「日本一のモグラ駅」として有名な駅なのだ。 いったい何がどんな風にモグラ駅なのか、行って確かめてきた。
(工藤 考浩)
越後湯沢から上越線で
先日のデイリーポータルZ5周年企画で金沢を訪れた帰り、せっかくなのでいつかは行ってみたいと思い続けた土合駅へ足を伸ばすことにした。 土合駅は山あいの小さな無人駅で、上り線はごく普通のホームなのだが、下り線のホームが駅舎から階段を462段も降りた地中深くにある「日本一のモグラ駅」だというのだ。 僕は地下が大好きなので、東京へ帰るには少し遠回りにはなるが、ぜひとも寄り道してみよう。 というわけで越後湯沢駅から上越線に乗り換えて、めざす土合駅へと出発した。
山の中へと
越後湯沢から水上方面へ向かう場合、上りの列車という事になる。 土合駅には上り線の地上ホームに到着するのだ。 電車は刈り入れが終わった田んぼと遠くに深い山を車窓に映しながら、土合駅へと進んでゆく。
登山客がいっぱい
三連休という事もあってか、電車内は登山客の姿が目につく。 この人たちはひょっとすると土合駅で降りて谷川岳に登るのだろうか。 電車は30分程で土合駅に到着する。
人が降りない
土合駅に到着しても、乗客は降りようとしない。 登山客たちは居眠りをしたままだ。 きっと彼らは下山客だったのだろう。 僕と、もう一人の乗客がホームに降り立ち、電車は走り去っていった。
一見ふつうの地上部分
土合駅の地上部分は、一見するとごくふつうの山中にある無人駅である。 けれどもよく見ると、ところどころにふつうじゃなさを感じさせる表示がある。 たとえば待合室や改札口には、下り線のホームまでたどり着くのに10分かかるという注意が示されている。 10分といえば、僕の自宅から最寄り駅までの時間だ。 駆け込み乗車をするには大変な苦労を伴うだろう。
駅から通路が伸びている
駅を出て周辺を見渡すと、駅舎から駅前を走る道路の上をまたいで、急な崖の表面に突き刺さるように伸びている通路が目に入った。 これが地下ホームへと続くコンコースなのだろう。 建設されてからだいぶ年月が経っているらしく、田舎の古い小学校の渡り廊下のようだ。 こういう渡り廊下は趣があって大好きだ。 この通路だけでもを渡れるだけでも、ここまできた甲斐がある。 ではさっそく、地下ホームへと向かってみよう。