木津川市にある笠置(かさぎ)町のアメーバ飛地
なぜ私が勤務中であるにもかかわらず素っ頓狂な奇声を上げ、同僚の注目を浴びるに至ったか。それを知るには、まぁ、当該物件を見ていただくのが手っ取り早いことだろう。
それは……これだ。
さぁ、皆さんご一緒に、「なんじゃこりゃー」
一体コレは何なのだ。まさにそんなセリフが相応しい、意味不明なぐちゃぐちゃぶりである。地図に書かれた線である以上、何らかの境を表しているということはかろうじて分かるのだが、いや……しかし、これは……
なるほど、どうやらこれは、京都府木津川市加茂町の中にある、京都府笠置町の飛び地らしい。
飛び地自体は日本各地に結構散在しているもので、当サイトでもこれまでに千葉県船橋市の飛び地など、いくつかの飛び地を扱ってきた。村自体が飛び地になっている和歌山県北山村なんてのもあった。
しかし、この笠置町の飛び地(便宜的に、「アメーバ飛び地」と呼ぶことにしよう)は凄い。なんていうか、まず形状が凄い。何でこんな形の境を設けたのか、全く持って意味が分からない。その意味の分からなさ具合が凄い。
本当に意味が分からない
では張り切って、現地まで
アメーバ飛び地が気になった。気になったのなら行かねばならぬ。というわけで、京都は木津川市の加茂駅までやってきた。ここからとぼとぼ歩いて件のアメーバ飛び地を目指す。
ちなみにアメーバ飛び地へは、直線距離では飛び地東側にある笠置駅の方が近いように見えるのだが、地図を見る限りではそちら側からでは道が無い。アクセスが可能なのは、西側の加茂駅からのみだ。……笠置町なのに。
加茂は奈良から電車で15分程度。大阪にも電車一本で行けたりする所ではあるが、その町はかなりのんびりとした時間が流れている。周囲も山に囲まれており、自然も豊か。駅前の高層マンションが不釣合いなくらいだ。
今でこそ、どこにでもあるようなこざっぱりとした家々が建てられ、また区画整理された土地が売り出されていたりして、ちょっとした新興住宅地みたいになっているものの、おそらく少し前までは田畑の広がる田園地帯だったのだろう。
笠置町のアメーバ飛び地は結構な山の中にあるらしい。ゆえに、これから山間部へと入っていくのだが、そのふもとの辺りで神社を見つけた。
立ち寄ってみると、何とも良い雰囲気を放つ社殿があるではないか。鎌倉時代の後、南北朝の時代に建てられたものであるらしい。このように、たまたま立ち寄った場所で偶然古い建物に遭遇したりするのはなんとも嬉しいことである。妙にテンションが上がってしまう。
とりあえず、無事帰ってくることができますように、熊とかイノシシとかにやられませんように、と祈願して退散。先を急ぐ。
加茂駅を出発して30分程度。辺りは既に山道の様相を呈してきた。道中には妙に禍々しい、干首のようになったサンタクロースのカカシや、くず加工場なる工場が点在するのみだ。
しかし何なのだ、くず加工場というのは。私のような人間のクズを加工して、真っ当な人間へと仕立て上げる政府の機密工場か。だとしたら危険だ、逃げよう。
例えそのくずというのが木くずとかを意味するものだとしても、木くずというのは木村のクズ野郎の略であり、すなわち狙われるのはやはり私だ。危険だ、逃げよう。
茶の里、山田集落に到着
たどり着いたのは、一面に茶畑やら棚田やらが広がる場所だった。これまで鬱蒼とした暗い杉林の山道を歩いてきただけに、いきなり現れたこの一帯の広さと明るさには驚いた。
地図で確認してみると、山田という名の集落だということが分かった。山田集落は笠置町飛び地のすぐ横に位置しているので、ここを超えればもう間も無くでアメーバ飛び地に入るはずだ。さてはて、どんなモノが待っているやら。