特集 2024年4月15日

冷奴に合うネギ選手権

3種類のネギから、豆腐のベストパートナーを探求します

冷奴の相棒、ネギ。家で冷奴を食べる時、冷蔵庫に残っているネギを適当に乗せる。白ネギがある時は白ネギ、小ネギなら小ネギ……と。

でも、本当にそれでいいのだろうか? 豆腐にもベストネギパートナーがいるのではないか?

真剣に向き合いました。
 

1978年生まれ、甲子園出身。兵庫県西宮市出身と言っても誰もわかってくれないので甲子園出身と言うことにしているけど、甲子園は大阪府だと思われがちなのが悩み。
好きなバレーボールはモルテン。好きな音楽家はKAN。

前の記事:きのこ山 たけのこ里の チョコの量 比べてみれば いとをかし


3種のネギ×2種の切り方を比べる

「冷奴でネギ選手権」にエントリーしたのは3選手。

・白ネギ(埼玉「深谷ネギ」/関東代表)
・九条ネギ(京都/近畿代表)
・小ネギ(大分「味一ネギ」/九州代表)

白ネギ1種類と、青ネギ2種類だ。九条ネギは太い青ネギの代表的なブランド。今回は、細い青ネギ(小ネギ)と分けるため、九条ネギだけブランド名で呼ばせてもらう。

3つとも輪切りにした。4~5mmぐらいに切った「太め」と、2~3mmぐらいの「細め」をそれぞれ用意した。

左から白ネギ、九条ネギ、小ネギ。上が太切り、下が細切りです

豆腐は「おとこまえ 京の石畳」をチョイス。絹ごし充てん豆腐で、甘めトロッとした食感だ。

審査員は、DPZ代表の林さん、ライターの石井さん、トルーさん(それぞれ東京都出身)と、岡田(兵庫県出身)の4人がつとめます。

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本当にこれでいいのか白ネギよ

まず、関東ではおなじみの白ネギ(細切り)から試したのだが、林さんがいきなり、根本的な問題を提起した。「本当にこれでいいのか?」

本当にこれでいいのか?

 

「白ネギの冷奴、当たり前のように食べてきたけど……ちゃんと味わうと、あっちゃこっちゃ行ってますね」(林さん)

そう聞いて、私もじっくり味わってみた。ネギのシャキシャキ感と香り、豆腐の柔らかい食感と甘み、醤油の塩分とコク。いろいろな味が混じってまとまり切れていない。「冷奴にはネギ」という前提が、初手から覆されそうだ。

いきなり前提を覆しにきた白ネギの細切り

が、ここはいったん落ち着いて、冷奴+ネギ=正しい、と疑わずに食べ進めることにしたい。

というわけで改めて、白ネギの細い輪切りを冷奴と合わせると、ネギの香りが飛んでしまうことがわかった。シャクシャクとした食感は残るが、ネギらしい存在感が薄まるのだ。

食べやすいけれど、豆腐と一緒になると存在感が消える白ネギの細切り

かといって太い輪切りだと、辛みが強すぎて冷奴に合わないことが分かった。 

太いほうはとても辛い!

「輪切りは繊維を断ち切るので、辛みを際立たせる」と石井さん。石井さんの本業はおそば屋さんだ。毎日白ネギを切り、そばの薬味としてお客さんに出しているプロである。

続いて「白ネギを冷奴に合わせるなら、みじん切りという選択肢もありますよ」と教えてくれた。輪切りは白ネギのポテンシャルを引き出しきれない切り方だったようだ。白ネギに申し訳ない気持ちが浮かんできた。

白ネギ:合ってないかも
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初体験だと不安になる? 青ネギ

次は、私のイチオシである九条ネギだ。なぜイチオシかというと、郷土の味だからだ。

私の実家の兵庫や、大学時代を過ごした京都では、ネギといえば九条ネギに代表される、太い青ネギだった。生でも煮ても美味しく、上から下まで全部使える素敵なお野菜だ。

兵庫のスーパーの青ネギ(九条ネギと似た品種)。地場産の安心感とこの安さ!

だが就職して越してきた東京のスーパーには白ネギばかりで、九条ネギがほとんどない。 

東京のスーパーは白ネギの強さが際立つ

東京の方々に九条ネギの良さを知ってほしい! スーパーでの扱いが増えてほしい! そんな圧を込めながら今回、九条ネギを用意した。

こちらが九条ネギの細切りでございます

九条ネギの細い輪切りの匂いをかぎ、そのまま一口食べた林さんは、おそるおそるこう言った。

「あの……九条ネギを生で食べるのが初めてなので……このネギ傷んでる? って言っちゃうかも……」 

傷んでる……?

なんということでしょう。九条ネギ、初心者には不安な風味がするようです。

「香りが強すぎて……変な匂い、しちゃってない? って……。でも、シャキシャキしてるんですよ。傷んで溶けているわけではない」

石井さんは「こっちは葉の味が強いですね」と冷静な評価。「葉物(葉ネギ)なんだけど、後から“やっぱりネギだな”という香りが来ます」。

石井さんはネギを「根」と「葉」で分類して語る。さすがプロである

生の九条ネギに親しんでいただいた後、いよいよ冷奴に合わせて食べてみる。

「おいしい!」と林さんが明るい表情になり、九条ネギ推しの私はホッとした。

九条ネギの冷奴おいしいですね

私も食べてみたが、細切りでもネギらしい味と香りが残り、豆腐の香りに負けないので、白ネギより冷奴に合っている気がする。

青ネギ:合っている
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やっぱり本命? 小ネギ

最後は小ネギ(今回は大分「味一ネギ」。「博多万能ネギ」の仲間)だ。冷奴の薬味として最も親しみがあり、“本命”と言えよう。

小ネギ(味一ネギ)。弾力が強いので切りやすい

ネギだけで一口食べた林さんは「歯ごたえの派手さがすごいですね。クリスピーな感じがする」と食感を絶賛。「これはウケます。流行りますよ。食感がポッピンシャワーみたいだもん」(林さん)

私も味わってみたが確かに、弾力があって食べやすい。冷奴に乗せて食べても白ネギや九条ネギより香りが弱く、豆腐を邪魔せずスルスルと入っていく。

トルーさんも「クリスピーですね!」と林さんに共感しつつ「ぼく実は、青ネギと小ネギの違いがそこまでピンと来てない」とも。

青ネギと小ネギ、違いがわからない……

調べてみたところ、味一ネギや万能ネギといった小ネギは、九条ネギなどの太い青ネギを改良・若どりしたものらしい。元々は同じ野菜のようだった。違いが分かりづらくて当然だ。

小ネギ:クリスピー
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「自分が冷奴専門店を経営しているとして、お客さんに出すとしたら、どのネギですか?」

3種類食べ終わった。結局、冷奴に最も合うネギはどれなのか?

まず、白ネギの輪切りは冷奴に合わないという意見で4人が一致。予選落ちだ。細切りだと存在感がなさすぎ、太切りだと辛みが強すぎて「野生の犬」(林さん)である。

勝負は九条ネギと小ネギの2者に絞られた。

石井さんはおそるおそる言う。「冷奴には小ネギが1番合う気がする……。でもそれって、すごくつまんない結論な気も……」

やっぱり小ネギかも……

小ネギのクリスピーかつ柔らかい食感とクセの弱さは「ポメラニアンですね」と林さん。品種改良され、誰にでも愛される存在だ。

だが最も一般的な小ネギがベストと言い切りたくないのが、デイリーのライター陣だ。「俺は九条ネギだよ! と言ったほうが、なにか知っている感じはするかも」(林さん)

なかなか結論が出ないので、私はみんなに、「自分が冷奴専門店を経営しているとして、お客さんに出すとしたら、どのネギですか?」と迫った。

結局どれなんですか!

石井さんは「小ネギは納得感がありましたよ。でも、歴代一番の選手にイチローを挙げるようなつまんなさが……」と逡巡。トルーさんは「クセの違いはよくわからなくて……でも食感は九条ネギのほうが良かったかな」と、九条ネギ推しの筆者に気を遣ってくれた。 

「九条ネギは豆腐に合う」という結論になったはずだが、私以外の表情が固い
判定結果を恣意的な四象限にまとめてみた

林さんは「自分1人で食べるなら九条ネギ。人に出すなら万能ネギにするかも」と2者並び立てるチョイス。「九条ネギはクセが強くて好き嫌いがあるからチョコミントみたい。一人ならチョコミント、人に出すならポッピンシャワーかな」

サーティワンのアイスクリームにたとえられて私も納得した。私は、チョコミントが苦手なのだ。ポッピンシャワーが万能ウケするのはよく分かる。

ただ私は、ポッピンシャワーよりクッキーアンドクリームがいいし、できればトリプルでいろんな味を楽しみたい。

最終判定が終わったあと私は、残った3種類のネギを全部混ぜて豆腐にかけてみた。すると、いろいろな香りや食感が混じり合ってこれが一番おいしかった。

結論:冷奴のネギは、いろいろ混ぜるとうまい。
トリプルネギが一番おいしかった

後日、石井さん提案の「白ネギのみじん切り」も冷や奴に乗せて食べてみた……のだが、正直なところ、細切りとの違いがわからなかった。食感が弱くて存在感は薄いのに、たまに辛いところに当たる。食べにくい。

うーん……

今回使った白ネギのラベルをよく見たら「焼き物、鍋物に最適」「白髪ネギサラダ、天ぷらがおすすめです」と書かれていた。冷や奴は、いっさいおすすめじゃなかった。

もともと向いていない白ネギを冷や奴に乗せて、「冷や奴には合わない」なんて当たり前のことを言っていただけかもしれない。白ネギに「何を言ってるんだ? 風評被害だ!」と訴えられても仕方がない。

次は鍋で食べます。

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