見たことない言葉遣いや漢字がすごい
戦前の本なので、表記や漢字が今とかなり違う。そういうものをひとつずつ見つけるのもかなり面白い。
ペリ。ペルリというのは聞いたことがあるけれど、ペリもあったのか。外国人の名前の表記揺れはいろんなパターンがあって、おもしろい。
たまに、図版のないものもある。例えばエクセントリックポンプ。
機械工学はまったくわからないので書いてあることがわからない。エクセントリックはエキセントリックのことだろうか。
そのうえ、あろうことか日本語の漢字のところもまったく読み方がわからない。この歳で読めない漢字に出会うのはなかなか新鮮な経験でもある。
漢検2級の名に賭けて調べたところ……喞筒は「しょくとう」または「そくとう」と読み、ポンプのこと。そして圓壔(えんとう)は筒のことで、喞子(しょくし)はピストンのこと……だそうです。合ってますでしょうか。
ついでなので、隣の項目のエクセントリックロッドのムズい漢字も調べときました。気筩は(きとう)と読み、シリンダーのこと。搖棒はよくわからなかった。(ようぼう)で良いのだろうか? おそらくシリンダーの弁を調節するロッドのことだろう。
このころは蒸気機関もまだ現役で使われていた頃だろうから、こういった機械工学の用語もかなり細かい部品までちゃんと載っているということなのかもしれない。
左側のエグゾーストパイプとエグゾーストヴァルヴのかっこよさに痺れつつ、他を見てみよう。
イセンデキ。胃洗浄のことだけど。胃洗滌(いせんでき)と書いてある。
まず、胃洗浄についてこんなに詳しく、図版を2枚もつかって説明しているところに驚くが、もっと不可解なのが洗滌の読み方だろう。
これは、昔はものをきれいに洗うことを「洗滌」と書いていて「センデキ」と読んでいた。
しかし、滌の旁の部分、條(ジョウ)の読みに引っ張られて次第にジョウと読むようになり、漢字自体も同義でジョウと読む浄の字に変わっていき、戦後に文化庁が「洗滌は洗浄とするのが妥当」と見解を示すと、洗滌は使われなくなった。
……というのは、漢字マニアの間ではけっこう有名なトリビアだが、これを見たときに進研ゼミでやったところがテストに出たような気分が味わえた。
90年前の最新技術を知る
この本が出版されたのは1930年代だ。時代としては、日本は日清・日露戦争、第一次世界大戦に勝利して、樺太や朝鮮半島、台湾などを日本領として領有しており、満州事変の真っ最中で、中国東北部に満州国を建国したりしている。まだ第二次世界大戦の勃発前だ。
そんななか、当時の最新技術の情報が結構載っている。
ヘリコプターの形がすごい。1930年代ではまだ実用化されるかされないかぐらいの時代のものなので、試作機なのかもしれない。
ウィキペディアをみると世界初のヘリコプターは1936年にドイツで作られたらしいので、まさにこの本が出るか出ないかの頃の最新技術を紹介しているということになるだろう。
X線も、当時の最新技術だっただろう。1895年にレントゲンが発見したと記述してあるので発見からすでに30年以上経っているけれども、解説部分に人体への影響への言及がない。