なぜ処分するのか
処分したい百科辞典はこちら。
『図解現代百科辞典』全5巻、三省堂が1931(昭和6)年から1933(昭和8)年にかけて刊行した百科「辞典」だ。
ふつう「百科」の場合は「事典」とするものが多いが、これは「辞典」となっている。「辞」つまり、言葉に注力した百科辞典かと思いきや、冒頭に「図解」とある。
絵がちょいちょい載ってるのかなとナメた考えでページをめくると、ものすごい量の写真、図版に圧倒されてしまう。
三省堂ウェブサイトの境田さん(以前、お宅を拝見させてもらった事がある)のコラムによると、1908(明治41)年から1919(大正8)年にかけて作られた『日本百科大辞典』という全10巻の日本初の本格的百科事典があり、それに続く百科事典として刊行された。
詳細を極めすぎた『日本百科大辞典』に比べ、こちらの方は内容の記述は簡潔に、図版を多くし、内容や価格を万人向けにした百科事典ということらしい。
タダでもらった
そもそもこの百科辞典は、デイリーポータルZライターの馬場さんから昨年、タダでもらった。
築100年ぐらいの古民家にウン十年間そのまま置いてあったものらしい。面白そうと思って引き取ったわけだけど、5冊全部で重さなんと10キロある。
狭い我が家には置く場所がなく、廊下に置いておいたところ、家族がというか、自分も含めて足の小指をぶつけること数しれず。とはいえ、そのまま処分するのももったいなく、なんとなくそのまま家の中に置いてずるずる来た。
実はこの百科辞典、国立国会図書館デジタルコレクションで全巻無料で閲覧することができる。しかも会員登録なしで見られるタイプのやつで、なんならPDFで全ページダウンロードしてオフラインでじっくり見ることも可能だ。
ネットでデジタルデータを無料で見られるものを、わざわざ家に置いておく必要性もかなり薄い。さらに百科事典や文学全集は古書店に持っていっても買い取りしていないところも多い。
そして最初にも述べたように、引っ越しをしなければならなくなったので、いよいよ処分せねばという話になってきた。
せっかく10キロもあるし、なんだかそのまま捨てちゃうのももったいないので、みんなで眺めてやいのやいの言ってから処分しよう……ということで、会議のついでに持ってきた。
やっぱり写真がおもしろい
図解と謳っているだけあって、図版の量がものすごい。しかも、ちょくちょくカラーページが存在している。
絵の綺麗さもさることながら、カラーページのひとつ前のページに薄いグラシン紙のページがあり、インコの種名が印刷されている。
クイズみたいな作りで、かなり凝っている。昔の写真や本でよくあるやつだが、今こういった作りの本はあんまり見かけない。鳥の鳴き声が聞けるQRコードを載せる感覚に近いかもしれない。
ただ、中にはどんな基準でカラー図版ページにそのカラー図版を載せると判断したのかちょっとわかりかねるものもある。鳥の卵とか。
鳥類の卵。意外とカラフルなんだなというのはわかる。
楽器も、絵の綺麗さもさることながら、バイオリンやピアノと一緒に尺八や火焔太鼓が描かれており、和洋折衷ここにありという感じでおもしろい。
シャクナゲの扱いがすごく大きい。シャクナゲ、当時は花として人気があったのだろうか? 園芸の歴史にまったく疎いのでそのへんがよくわからない。
解説は意外とあっさりしたもので、この解説で1ページ丸ごとのカラー図版はすごい。シャクナゲは変種が多いらしいので、それを図解したかったのだろうか。ちなみに、左下に理学博士牧野富太郎氏選と入っている。知ってる人が出てくるとオッとなる。