特集 2014年8月28日

理想の木のうろを求めて

これは見ていてムカつくタイプの木のうろ
これは見ていてムカつくタイプの木のうろ
近所の慣れ親しんだ公園で、ずっと生えている木に違和感を持っていた。

その正体が「木のうろ」だったことに最近気がついた。

いろいろな木のうろを見てまわり、理想のうろを見つけたい。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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気づけばそこにいる「うろ」

いつも撮影などでお世話になっている近所の公園。

見慣れた風景にもう発見なんてないかと思っていたのだが、最近気がついた。木ってけっこう「うろ」あるなーと。
スタンダードな、うろ。
スタンダードな、うろ。
ちょっと痛々しいけど、これもうろ
ちょっと痛々しいけど、これもうろ
うろは下の方にあることもある。根系のうろ。
うろは下の方にあることもある。根系のうろ。
うろ。要するに木にあいた穴。ただちょっとふさがろうとしているところに生命力を感じる。

できる仕組みはこういうことらしい。

木の内側の細胞はほとんど死んだ状態。そのため太い枝が落ちたりしとき、樹皮は再生して傷を埋めようとするのだが、中央部分はそのまま。結果、空洞になる。
真ん中はうろだと思うけど上下のはどうなんだろう
真ん中はうろだと思うけど上下のはどうなんだろう
できる仕組みはともかくとして、ひとつ公園を歩いて回るだけでもいろいろなうろがあることが分かる。

僕の思いとしては、もっとまるくてぼっかりした感じのものが理想的だ。(満足してしまうとここで記事が終わる。)

理想のうろを求めて

うろを求めて移動してみよう。

山奥とかに行けばめくるめくうろにあふれているのだろうが、今回はとりあえず初級者編ということで街中限定で探してみたい。

ということで、もっと木がたくさん生えている公園へやってきた。
ここならいっぱいありそう
ここならいっぱいありそう
公園に足を踏み入れると、さっそくいいうろを見つけた。
まじめな仕事をしそう、という感じがする
まじめな仕事をしそう、という感じがする
うろの輪っかがまん丸で肉厚。見ていてすっとする、実直なうろである。

桜の木と違って樹皮が比較的滑らかなのも高評価だ(僕の中で)。

中は真っ暗でまじめが故に暗いものを抱えている…というように見える。
木のうろを覗き込むとき、木のうろもまたお前を覗き込む
木のうろを覗き込むとき、木のうろもまたお前を覗き込む
ケヤキのうろはこういった雰囲気のものが多かった。今後、ケヤキを見かけたらうろをチェックしておきたい。
ぜったい「ケヤき」って書いたのをごまかしてる
ぜったい「ケヤき」って書いたのをごまかしてる

うろの歪みが脳を刺激する

理想的ではないが、個性あふれるうろもある。うろの襞?の部分が歪んでいたりするものだ。
おっさんみたいなうろ
おっさんみたいなうろ
うろの上の部分の傷も相まって、顔のように見える。まるいうろや、控えめなうろが多い中で、こういうひねくれたうろは異彩を放つ。すごく下品なこと言ってそう。

中にはきゅっとすぼまったうろもある。樹皮が穴を閉じようとする生命力のあらわれである。

ちょっと見て欲しい。
見て、そして、これに人差し指を入れたところを想像してください
見て、そして、これに人差し指を入れたところを想像してください
ギュ…
ギュ…
上と下は違う気なのだが、ずっと指を入れっぱなしにしたら、そのうちうろに噛まれることになるだろう。

うろに指噛まれたらどうなっちゃうんだろうなあ。きっと体も木になっちゃうんだろうなあ。怖いなあ。

二重に「そんなわけない」のだが、どうしても想像してしまう。

こうして考えてみると、根よりも葉っぱよりも、木の中でうろが一番生命感があるような気がする。
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うろタワー

さらに公園内を見て回る。上にも下にもうろがある豪華な木を発見。
3つうろがある木に対して「豪華だ」と思い始めている
3つうろがある木に対して「豪華だ」と思い始めている
上向きにぽっかりあいたうろ
上向きにぽっかりあいたうろ
下までつながってたらいい
下までつながってたらいい
上下がつながっていればいいなと思って小石を投げ入れてみたが、その直後に下のうろを確認できない。

うろ用の俊敏性。これをぼくは持ち合わせていなかった。悔やまれる。

サルスベリ、容赦無いうろ

公園の奥にはサルスベリが生えていた。

花が咲いていてきれい~と思って近づくと、これのうろがまたすごかった。
ドラクエの序盤のボス
ドラクエの序盤のボス
村人がこいつのせいで全員夢を見ている
村人がこいつのせいで全員夢を見ている
樹皮のツルツルした感じと、容赦無いうろの侵食ぐあいが、見ていて不安になる。敵か味方かでいうと明確に敵。

ずっと眺めていると脳の中の大事なデータが吸い取られてしまう気がする。だが目が離せない。うろの奥深さである。

街角うろ探し

サルスベリが怖いので、公園を出て街の木を見て回ろう。

先ほどの公園のものと比較して、街路樹のうろはより小ぶりなことが分かる。幹が細いからだろうか。
葉っぱに隠れて恥ずかしげなうろ
葉っぱに隠れて恥ずかしげなうろ
おちゃめな感じがするうろ
おちゃめな感じがするうろ
ひとつに合体しそう
ひとつに合体しそう
小さくて可愛らしいとは思う。しかし、サイズが小さくまとまってしまった感じもあり、あまりワクワクしない。

でもたまに、小さいながらもなんでこんな形になっちゃったんだろう、といううろも見かけるので見逃せない。
クレジットカードを入れたらスキミングされそうなニセモノのうろ
クレジットカードを入れたらスキミングされそうなニセモノのうろ
うろ界の北斗の拳
うろ界の北斗の拳
僕もだんだんうろに対してわがままになってきた。うろに対して、ここがいいとか悪いとかそういう気持ちが出てきた。

神社の木のうろでかいぞ

これが人間の傲慢さに震えながら、そういえば…と、神社のことを思い出して立ち寄る。
神社にいいのがありそうだ
神社にいいのがありそうだ
あった。これは大きい
あった。これは大きい
かなり大きなうろがそこにはあった。僕の身長以上ある大物だ。

人間、うろ以下である。
うろに体ごと入っちゃいそうだわ
うろに体ごと入っちゃいそうだわ
体が勝手に三脚をすちゃっと立てて、流れるように記念撮影。ひそかに胸に抱いていた「でかいからって偉ぶるなよ」という対抗心がすっと収まる。

(すぐ記念撮影するのは僕の趣味です。)
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新宿のも見てみよう

さてけっこううろ欲も満たされてきたのだが、ちょっと違う街のものも見てみたいと思う。

都会の木のうろはどうなってるだろう。新宿の木を観察してみることにした。
舞台は新宿へ
舞台は新宿へ
とりあえず新宿西口の繁華街を歩いたが、木のうろは全然見つからない。

街路樹はあるのだがどれも細く、うろがあったであろう箇所がふさがってしまっている。

新宿にはうろがないのか…。
ない
ない
ない…
ない…

都庁周辺はすごかった

しかし、店が立ち並ぶ繁華街を抜け、大きなケヤキが植えられているあたりにたどり着くと、うろが大変なことになっていた。さすがケヤキ。
京王プラザホテル前でいいうろを発見
京王プラザホテル前でいいうろを発見
うでがまるごと入りそうな迫力
うでがまるごと入りそうな迫力
退屈な優等生とは一線を画す見事なハート形
退屈な優等生とは一線を画す見事なハート形
うろの穴が小さい分、暗闇が空洞の大きさを思わせる……
うろの穴が小さい分、暗闇が空洞の大きさを思わせる……
求めていた理想のうろはこういうものだったはずだ。たしかに迫力があった。

しかし実際目にすると怖気づく。なんか…こわい。木のうろが知らないうちに日常を侵食しているような。みんな、こんな物があるところを歩いていて平気なのか。

さらに脚を伸ばすと、うろは都庁を侵略せんとしていた。
都庁前。このあたりが特にすごかった。
都庁前。このあたりが特にすごかった。
声を出したら飲み込まれる
声を出したら飲み込まれる
あまりのインパクトに帰って二度寝したくなった
あまりのインパクトに帰って二度寝したくなった
なぜ隠すのか、いや、なぜ下半分隠さないのか
なぜ隠すのか、いや、なぜ下半分隠さないのか
もううろじゃないけど、中に悪しきものが埋まっているのではないか
もううろじゃないけど、中に悪しきものが埋まっているのではないか
こう、木の厚みが伸びてくる感じが見ていてひゃっとなる。

人類は木のうろに侵略されないように対策を練る必要があるのでは…? 見てはいけないものを見てしまった気分だ。

このあたりで今回は終わっておこう。

ノイローゼになってました

これらの写真、インパクトありすぎて公開してはいけないかも…と思ったので、編集部の人に見せてみた。

全然だいじょうぶ、とのことだった。まあ、街路樹だしな。

急にいろいろ見過ぎたせいで、過敏になりすぎたみたいだ。

今後はあまり思いつめずカジュアルに木のうろを眺めていきたい。
ラシュモア山のアメリカ大統領の彫像みたいなうろ。数足りてないけど。
ラシュモア山のアメリカ大統領の彫像みたいなうろ。数足りてないけど。
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