特集 2014年1月28日

冬の海で野生ダイコン獲るぜヒャッハー!

!
冬の砂浜には野生のダイコンが生えているという。
ダイコンが雑草のように野良でそこらに生えてまくっているというのだ。
これはぜひとも食ってみたい。
ここ数年、雑草野菜を追い求めている僕は、千葉県の東端・犬吠崎へと車を走らせた。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

前の記事:科学的には熱い缶コーヒーは速く転がる?

> 個人サイト まさゆき研究所 新棟

畑から逃げ出した野菜「ハマダイコン」

この野生ダイコンの名は「ハマダイコン」という。
元は畑で育てられていたダイコンが逃げ出し、そして野生化した「逸脱種」と呼ばれる仲間だ。
「もう畑や農家には 帰りたくないー」
「もう畑や農家には 帰りたくないー」
この話はまあまあ有名で、雑草野菜の代表格とも言えるハマダイコンだが、実を言うと僕も食べたことが無い。
雑草野菜ハンターとか言いながら、恥ずかしい話だ
この長年の懸案事項を解決すべく、ダイコンの季節である冬、千葉県・九十九里浜までやってきた。
浜風がめちゃくちゃに寒いが、ここに来た理由がある。
浜風がめちゃくちゃに寒いが、ここに来た理由がある。

ピクニックの思い出とハマダイコン

九十九里浜でかつてハマダイコンを見た覚えがある。もう30年も前、家族総出でこの浜に来てピクニックをした。
うららかな春の日、祖父母やおじ、両親と鍋を囲み、みな笑い、そして砂浜には紫の花が咲いていた。
「父さん、この花はなに?」
「父さん、この花はなに?」
これはハマダイコンだよ、と父が教えてくれた。
むらさきの花が記憶の中で春の強い浜風に揺れる。
あのころはまだ家族の仲が良かったなあ……。
……おおっと、思わずダークな話題に触れるところだった。危ない。
家族の話はあとで匿名ブログにでも書くことにして、まじめにハマダイコンを探そう。

さっそく発見! ハマダイコン!

ハマダイコンはどこにでも生える雑草だが、名前の通り砂浜ちかくによく生える。種としては畑のダイコンと変わらないので、葉の形も全く同じだ。
これは畑で育つダイコン
これは畑で育つダイコン
こんな巨大でギザギザした形の雑草はそうそう無いので、すぐ見つかるはずだ。
砂浜からその近くの道ばたまで適当に、ぼそぼそと、うろうろと探して回る。
お! この葉のギザギザ感!
お! この葉のギザギザ感!
もしやこれはハマダイコンだろうか。
だとしたらそれなりに根が大きいはずだ。
変な細い路地に生えてたのだが、車をちょっとはじに停め、焦っていそいそと引き抜いてみる。
おわ! ダイコンだー、ダイコン!
おわ! ダイコンだー、ダイコン!
すごい! 思ったよりずっとダイコンである!
白く太く、そしてすべすべとした肌は、あきらかにこの植物が野生の生まれではないことを物語る。
栽培ダイコンと比べればかなり小さいが、道ばたに生えていたと思えば、相当立派なレベルじゃないだろうか。
生えてたのはここ。The道ばたof道ばた。
生えてたのはここ。The道ばたof道ばた。
これは期待できる、ハマダイコン!
そしてこの期待通り、僕は次から次へヒャッハー!とダイコンを獲りまくることになるのだ。

犬吠崎、ここはハマダイコン天国

じつは現在、九十九里浜から少し移動している。
千葉県東端の犬吠崎に大量に生えているとの情報を得ていたからだ。
ただ情報は自然写真ブログの「海とハマダイコンの花」ばかりだったので、根のサイズは未知数である。

より大きな地図で 犬吠崎 を表示
しかしそんな不安を吹き飛ばす勢いでダイコンが獲れまくる。
一度見つけて目が慣れると、そこらじゅうにハマダイコンが生えまくっているのが分かる。
そして獲れる獲れる獲れる。
たとえば、こんな道ばたでも……
たとえば、こんな道ばたでも……
ヒャッハー! ダイコン獲れたぜヒャッハー!
ヒャッハー! ダイコン獲れたぜヒャッハー!
お墓でもヒャッハーー!!
お墓でもヒャッハーー!!
俺たちのダイコンだぜヒャッハーーー!!!
俺たちのダイコンだぜヒャッハーーー!!!
もう獲れて獲れて申し訳ない。
サイズも、家庭菜園を始めて1年目のおじさんが作ったくらいに大きいので、だんだん「やっぱりこれ、誰かが育てているダイコンでは!?」と不安になるくらいだった。
「これ抜いたら怒られるんじゃ!?」ぐらいの野菜っぽさ。
「これ抜いたら怒られるんじゃ!?」ぐらいの野菜っぽさ。
しかし通りがかったおばちゃんも「あら、こんなに大きいのねー、あたしもとろうかしらー」と言っていたので、地元の人も無頓着らしい。やっぱ雑草なのだ。
獲っていいんだ、ハマダイコン、気兼ねをすることなくダイコン獲り放題だぜヒャッハーーー!!!
コイツは長いぜヒャッハー!
コイツは長いぜヒャッハー!
犬神家だぜヒャッハー!
犬神家だぜヒャッハー!
冬なのに花咲いてるぜ、ヒャッハー!?
冬なのに花咲いてるぜ、ヒャッハー!?
ハマダイコンの花は4月、春に茎を伸ばして咲くはずだが、犬吠崎では真冬なのに咲きまくっている。
理由はよく分からないが、もう狂い咲きの百花狂乱、理想郷のようなダイコン天国だ。

九十九里浜で、本日最高の収穫!

そしてこのあと、九十九里浜へと再び移動したが、そこでも最高の収穫を得ることができた。
海岸通りで……
海岸通りで……
ギザギザ葉っぱの子守歌。(チェッカーズ)
ギザギザ葉っぱの子守歌。(チェッカーズ)
砂地の中から……
砂地の中から……
本日最高なの獲れたぜヒャッッハーーー!!!
本日最高なの獲れたぜヒャッッハーーー!!!
もうこれ完全なるダイコンじゃないか!
丸々と太々として、2歳児でもわかるほどにダイコン!
なんと素晴らしい日だろうか。雑草野菜ハンターを始めて今日ほど豊かな収穫に出会えたことは無い。
感無量である。
ただ問題は、これを食べてうまいのかどうかだ。
獲れまくったダイコン、味の方は……?
獲れまくったダイコン、味の方は……?

衝撃的辛さ、野生のダイコンおろし

さて、まず断面いってみよう。
最後に獲れた一番太いのだ。
すごい! 断面の模様も完ぺきにダイコン!
すごい! 断面の模様も完ぺきにダイコン!
包丁で「すとっ」、と軽快に切れる。嬉しい。
市販のダイコンよりやや硬く、サトイモを切る時ぐらいの密度感があるが、感触はダイコン、立ち上る香りもダイコンだ。これはいけるだろう。
まず大根おろしを作ってみよう。
おろすとゾリゾリとした質感がする野生ダイコン。
おろすとゾリゾリとした質感がする野生ダイコン。
完成、ハマダイコンおろし。
完成、ハマダイコンおろし。
ちょっとイメージと違う、まったく汁気の無い大根おろしが完成した。ワサビっぽい。
そして「大根臭さ」がすごい。おろしている途中から家全体にダイコン臭が漂い、栽培ダイコンではありえない密度で鼻に侵入してくる。
さて、ちょっと食べてみよう。
食えるか……ハマダイコンおろし……
食えるか……ハマダイコンおろし……
はっ! むはっ! ふあっ!
はっ! むはっ! ふあっ!
かっ、かっ、かっ、かっ、辛い!
辛い辛い!
この世に生まれてからベスト3に入るぐらい辛い!
ふつうの辛い大根おろしの10倍ぐらいの猛烈な辛さが、ごほーっ!!と嵐のように鼻とのどを駆け抜けていく。涙も止まらないし、とにかく辛い。
もはやワサビと互角のレベル、ハマダイコンおそろし!
もはやワサビと互角のレベル、ハマダイコンおそろし!
薬味にはなるかも知れないが、辛さはのどから胃に広がり、腹の中全体がヒリヒリする。ある意味、弱めの毒ではないだろうか。
が、よく考えれば、普段僕らが薬味として食べてる刺激物も元は植物の作った防衛のための毒だ。そうでなければ野生で大根が生き残るなんてできないだろう。
さすが野生だな、ハマダイコン!
辛くておれの胃は負けたけど、お前はたくましいぞ!
ど根性っぽい場所にも生えてたりするし。
ど根性っぽい場所にも生えてたりするし。

恐怖のトゲトゲ、野生のダイコン葉、

つぎは葉っぱに挑戦したい。
栽培ダイコンの葉は、普通にみそ汁・けんちん・漬物などにして食える。しかし、ハマダイコンの葉は食べるのにひと癖ありそうだ。
上の写真の通り、ちょっとごわごわして硬いし、鋭いトゲを多数持つものもある。
ナイフみたいにとがっては 触るものみな傷つけた(チェッカーズ2回目)
ナイフみたいにとがっては 触るものみな傷つけた(チェッカーズ2回目)
これは素手で触るとそれなりに痛い。
家出した不良ダイコンはやはりこうなってしまうのですね、母さんは悲しい。
が、やはり野生を生き抜くにはこれぐらい必要なんだろう。さいわい、いい環境で育ったものにはトゲの少ない個体もあったので、それを煮て食ってみることにする。
のどかな環境ではトゲができないっぽい。
のどかな環境ではトゲができないっぽい。
これはかなり期待の持てる野菜感!
これはかなり期待の持てる野菜感!
ものすごくやわらかくなった!
ものすごくやわらかくなった!
これはぜんぜん食える!
野菜としてあってはならないエグ味・苦味はほとんど無いし、ちょっとごわっとしてるけど、甘みも十分にある。
普段フキノトウやゴーヤを食ってるのを思えば、こっちのほうがぜんぜん野菜っぽい。これはいける!

このまま加熱作戦で根っこの方も煮込んでしまおう!
辛さも煮込めば敵ではない、はず!
辛さも煮込めば敵ではない、はず!

煮込めば根も食えるぜハマダイコン

根っこを切って料理してると不意にぱらっと2層に分かれ、ああやっぱりこれ雑草の根っこなんだなーと気づく。
外と内にメリッと分かれる。こんなの大根じゃない。
外と内にメリッと分かれる。こんなの大根じゃない。
じゃあ硬くて食えないのかな、と思ってかじると、多少スジっぽいけど内側も外側も普通に噛み切れて、甘味と辛味の強い大根スティックみたいな味がする。
やっぱ野菜かなー、と思う。
こういうはざまの生き物って、始祖鳥みたいで素敵だ。大好きだ。何度出会っても飽きない。
始祖鳥的ダイコン、煮えあがりました。
始祖鳥的ダイコン、煮えあがりました。
さてそんなハザマダイコンを細切りにして煮込んでみた。相変わらずキッチンにアクの強いダイコン臭が立ち込めるが、これは食えるのだろうか。さっき負けたぶん臆病になるが、一切れ食べてみよう。
辛いのか……苦いのか……まずいのか……
辛いのか……苦いのか……まずいのか……
いやうまい! これ結構うまい!
いやうまい! これ結構うまい!
想定外にうまい!
食感はやや硬くて煮込んだニンジンのようで、苦味も強いが甘みも強い。
栽培ダイコンから水分を抜いて、ギュッと3分の1ぐらいに凝縮したような食い物だ。
クセも強いが、食べられる野草としては抜群にうまい。
葉っぱと合わせてみそ汁にした! うまい!
葉っぱと合わせてみそ汁にした! うまい!
これはいける!と調子に乗って、勢いでイカと煮込んで、イカ大根なども作ってみたが、こちらはすごいインパクトの食べ物であった。
海×海のシーフード料理、イカハマダイコン。
海×海のシーフード料理、イカハマダイコン。
通常、イカ大根はイカのうま味を大根が吸収するはずだが、イカハマダイコンにおいては逆である。
ハマダイコンの濃密な組織はイカ味の侵入を拒み、逆にハマダイコンの強い苦みがイカに染み込んでいた。
つまり、イカを食べるとダイコンの味がするのだ。

やはり、ハマダイコンはみそ汁で済ませておくのが妥当な落としどころであろう。

ハマダイコン食えるぜヒャッハー!

ハマダイコン、これまでの雑草野菜シリーズ中、最も野菜に近い植物であった。そのへんに生えてたら普通に食ってもいい。ワサビが無いときは代わりにもなる。
ただダイコンは春になると花芽を長く伸ばして「とう立ち」してしまう。こうなると根も硬くなってほぼ食べられない。だから冬に獲りに来た。
食べたい人は、今この冬のうちに収穫してその野生味を味わってみよう!
ありがとう、犬吠崎の大自然ヒャッハー!
ありがとう、犬吠崎の大自然ヒャッハー!

募集:アズキの原種「ヤブツルアズキ」の群生地を関東近辺で探しています。ご存知の方、編集部か僕の個人ツイッター(@masayukigt)宛に連絡ください。お便り待ってます!

過去シリーズ
第一回:雑草の実で作ったお粥がうまかった

第二回:1万年前のトウモロコシでポップコーンを作る

第三回:雑草のハトムギでお茶とご飯を作る

第四回:雑草になったニンジンを食べてみたい

第五回:メロンが雑草として育つ島
▽デイリーポータルZトップへ

デイリーポータルZを

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ

↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓