食べに行くのは野生のメロン!
大きさはウズラ卵程度、熟す前はむちゃくちゃ苦いが、熟すと黄色く色づき、ほんのり甘くなるという。
生物学的には同じメロンだが、栽培メロンとは違う、雑草として野生化しているメロンだ。






なぜわざわざ初島へ向かうのか?



雑草化して、今では主に瀬戸内海から九州の島々に分布しているが、北限として熱海の初島にも生育するという。
古代人の食べたメロンが熱海にある!
ここ2~3年、雑草野菜を追い続けている僕としては、このロマンチックな雑草への想いに、胸がはちきれんばかりである。



直径400mほどの小さな島で、10分も歩けば対岸に着いてしまう。「東京から一番近い離島」という名にふさわしい。




雑草探しは、いつも広すぎる大地を前に茫然としてしまうのだが、今回はターゲットが極めて小さく、しかも弥生時代から生えているという事前情報もある。
これは勝ったも同然だ。
100%の勝算を胸に、初島の中心部へと分け入った。

リゾートに集う人、雑草を探す僕



リアルが充実した感じの人が大勢集まっていて、雑草どころの騒ぎじゃない。
「ええと、古代のメロンがですね……」なんて話を始めたら、「お客様、お引き取り下さいませ。」と言われること間違いなしである。



初島の民家は密集していて、どこも「海の幸の定食」を観光客に提供していた。(そしてちょっと値段が高い)
住宅地は意外と雑草が見つかるポイントなのだが、ここでは焼き魚定食の値段ばかりが目についた。









今から勝利の雄たけびが、脳内に響くようである。

見つからぬ雑草メロン
区割りが適当で、小屋とノラ道がうねうねと入り組んでいる。田舎のおばあちゃんちで探検する気分である。



例えばこんな感じである。
















雑草メロン、絶滅か



この島が生育の北限ということで、そもそも多く無かったものが、リゾート開発で姿を消してしまったのかもしれない。
弥生時代から生きていたはずの植物が無くなってしまったとしたら、いたって悲しいことである。



胸につのる申し訳無さから、帰りは新幹線ではなく、鈍行列車で帰ることにした。



でも、雑草メロン食べられました。
どのような経緯で成功したかを、ここまでの話が無かったかのように、次のページで報告します

雑草メロンを栽培している植物園









「まあ、あんまり……ですね。栽培してる同じメロンの仲間でコヒメウリていうのがあり、これは『かわいいー』ってよく言われますけど」



「えっ!? 私は無いですね(笑) 非常に苦いということは聞いていますけど。でも黄色く熟すと、しっかりメロンの香りがしますね」

そういえばトウモロコシの祖先を取材した時も、「え!?食べたことないなあ」と取材先では苦笑いであった。
常に食べることが真っ先に思い浮かぶ僕には、飢饉で死んだ古代人の霊が憑いてるのかもしれない。





これが、これが熱海で雨に濡れ、陽にさらされ、5時間追い求めた雑草メロンである。写真で見たのと全く同じ愛らしいルックスだ。大きさもほんとにウズラ卵程度しかない。



感動して撮影しまくっていると、山村さんが「隣の植物も雑草メロンですよ」 と教えてくれた。









このように地域によって、さまざまな変種があるのだという。
すごい! 雑草メロンの世界、奥が深い!



正直に言って、食べてみたい。
ひゃっほう!
はやる気持ちを抑えつつ、薄黄色に色づいた雑草メロンをひとつ収穫させていただく。



これが雑草メロンの断面……



衝撃なのでもう一度言うと、種しか無い!!
雑草メロン、メロンと言いつつ、さすが雑草、見事なまでの色気の無さ。食うところが少しも無い。
人間に対して媚びることの全く無い、これが真の雑草魂だ。
しかし雑草と言いつつ、やはりメロンである。
種の部分は見憶えのある、ちゅるっとしてとろっ、としたあの感じ。この部分はちゃんとメロンだ。
ここが甘ければ、こいつをメロンと認定してもいいのではないか。とりあえず嗅いでみる。



種のルックスと合わせて、メロン度は20点ぐらいである。
しかしこれで甘ければ50点ぐらいにしてもいいかもしれない。
食べてみた。





酸っぱくって、苦くって、えぐくって、果物の要素がまるで無い!
道ばたの適当な雑草の味、そのものである。
あまりの「メロンじゃ無さ」に、しばらく笑いが止まらなかった。
もうすごい、これ全然メロンじゃない!



他の雑草メロンはどうか
他のふたつの雑草メロンは、意外といけるんじゃないか。
先にも書いたが、オレンジの方なんて「極楽に実る不老不死の果実」 みたいなルックスをしている。どう見てもうまそうだ。
これも山村さんにお願いして食べさせてもらった。







さっきのに比べて、考えられないぐらいメロンである!
ちゅるちゅるの中の種の整列してる感じが特にすごい。
その上色は鮮やかオレンジ、ほぼ夕張メロンと言っていいルックスである。
これは絶対にうまい!食べてみよう。



食感はシャクシャクとしているが、うっすら甘い。
そして何より香りがいい。めろーんとした甘い香りがする。
おお、これはなかなかメロンじゃないか!すごいぞ!、と思ったあたりで苦みが来る 。
雑草らしいエッジのある苦みが広がり、じわじわと舌に残る。悪い苦みだ。これがさっきまでのメロニティーを一気にかき消していく。



やはり所詮は雑草なのか。

最後の雑草メロンはメロンなのか。








懐かしのプリンスメロンの小型版、みたいな感じだ。
そして特筆すべきは香りがいいこと。割った瞬間にふおっとメロンの香りが明瞭な輪郭をもって漂ってくる。
これはメロンの期待が高まる。食べてみよう。



さっきのオレンジより甘いし苦くないし、充分メロンである。
甘いと言っても、普通のメロンの外側の、皮に近いとこぐらいにしか甘く無いんだけれど、それでも十分にメロンとして脳が認識する。
アケビとかヤマモモみたいな微妙な果物より、ずっとずっと食べたくなる味に近い!
野山に生えてたら、絶対子供が取って食べる味である。








雑草メロンもメロンです

個人的には、中央のちゅるちゅる部分がかなりメロンであるのに感銘を受けた。
シリーズ・雑草野菜、これで5回目だが、まだまだ次なるネタを探しに行きたいと思っているのでご期待下さい!
第一回:雑草の実で作ったお粥がうまかった
第二回:1万年前のトウモロコシでポップコーンを作る
第三回:雑草のハトムギでお茶とご飯を作る
第四回:雑草になったニンジンを食べてみたい





