特集 2012年6月14日

雑草になったニンジンを食べてみたい

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ノラニンジン、という植物がある。
その辺に生えてる雑草だけど、種類としてはニンジンと全く同じ植物らしい。
てことは食べれるのか。雑草野菜ハンターとして僕はさっそく収穫に行ってきた。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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野菜なのか、雑草なのか、ノラニンジン

ノラニンジン。日本全域に見られる植物だ。
名前的には野菜感があるが、「野良」とついているので雑草のようでもある。こいつは野菜なのか雑草なのか。
本編に入る前に野菜とは何かを少し考えてみたい。
じつは野菜と雑草には明確な区分は無く、違いを表すと下の図のようになる。
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左の雑草たちを、人間が保護しつつ右側へと変化させて生まれたのが「野菜」である。
野菜には敵から身を守るための要素が少ない。だから食べておいしいが、野生では生きていけない。

雑草界の尾崎豊こと「逸脱種」

さてそんな野菜の中に、人間による保護をいやがって、野生の世界に逃げ出したものがいる。逸脱種だ。
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野菜が逸脱種になると、雑草的な要素を取り戻してどんどんまずくなっていく。野生で生きるために身を守るのだ。
丸々と太った可食部がやせ細り、筋ばって苦くなったさまは、生き延びるために悪事に手を染め、眼光鋭くなった不良少年のごとしである。
逸脱種として有名なハマダイコン。その根は細く堅く、凶悪なまでに辛い。
逸脱種として有名なハマダイコン。その根は細く堅く、凶悪なまでに辛い。

盗んだバイクで走り出したニンジン「ノラニンジン」

というわけで、畑のニンジンが「もう学校や家には帰りたくない!」と逃げ出したのがノラニンジンである。まあ正しい由来は不明なのだが、逃げ出したと考えると愛おしく思えるので、そうしよう。
ニンジンは家を出て、長い野生生活の果てに、どのような有様になったのか。それを確かめに江戸川の河原までやってきた。
この河原に流れ着いて、生きているという噂。
この河原に流れ着いて、生きているという噂。
家出の果てに流れ着いた先が河原だなんて、まるで転落人生のようであるなぁと思いながら歩いていると、橋の下に洗濯物が干してあり、リアルに流れ着いた感じの人がいたので笑えなかった。
野生生活は厳しい。
はたしてノラニンジンは河原で生き伸びているのだろうか。というか、この河原に生えているという噂は本当なのだろうか。
失踪した息子を探す母のような気持ちで探索は続く。
む。あの白い花はもしかして……
む。あの白い花はもしかして……
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発見!ノラニンジン!

白い半球状の花が目印!
白い半球状の花が目印!
発見である。噂の通りノラニンジンは、江戸川の河原に流れ着いていた。思ったよりも元気そうである。
半球状の花が目立ち、わりとすぐに発見できた。この花はドライフラワーとして観賞用にもなるらしい。たしかにキレイだ。
実際に花として普通に栽培してもいいレベル。
実際に花として普通に栽培してもいいレベル。
続いて葉を見てみよう。
ギザギザで、ちりちりで、ギザギザ。
ギザギザで、ちりちりで、ギザギザ。
これはニンジンの葉だ。間違いない。
台所に放りっぱなしにしたニンジンから、こういうのが生えているのをよく見る。
この葉っぱ、やっぱりニンジンの匂いがするのだろうか。ちょっとちぎって揉んで嗅いでみた。
くんくんくん。
くんくんくん。
ニンジンだ。ニンジンの匂いがする。
甘ったるくて、ちょっと青臭いような、まさにあのニンジンの匂いだ。これは期待できる。
みんな知らないが、河原にニンジンが生えている。いつも食べてるあのニンジンである。いよいよ引っこ抜いてみよう。
せーの!!! (ずぼっっ!!!)
せーの!!! (ずぼっっ!!!)
あれ……。
あれ……。
うむ。
読者全員が感じていると思うが、かなりニンジンとは違う。
写真が全てを物語っている気もするが、それでも改めて箇条書きにすると、
・赤くない。
・小さすぎる。
・ひげ根多すぎ。
・というか、ただの根っこでは。
あたりだろうか。

しかし雑草の割には根が太いようにも見えないだろうか。
庭の雑草を抜いて、このレベルの根がついていたら、「おお、この雑草は根が太いなあ。ニンジンのようだなあ」と思うだろう。(思って下さい)
これなんか、かなりいけてる太さ。(と自分を説得)
これなんか、かなりいけてる太さ。(と自分を説得)
このようにして心を強く保ち、開花前の収穫しごろのノラニンジンをごっそりと収穫してきた。
ざっと8本ほど。
ざっと8本ほど。
さあ、持って帰って炒め物にでもしてみようと思います。
わっさー。ニンジンわっさー。
わっさー。ニンジンわっさー。
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ノラニンジン、シャレにならない固さ

ノラニンジン、洗って泥を落としてみるとこのような風体である。
ニンジンにはほど遠い。食えるのか……。
ニンジンにはほど遠い。食えるのか……。
百歩譲って、間引きされたゴボウというところだろうか。
どう見ても野菜のルックスをしていないが、それでもあきらめるわけにはいかない。
まずは刻んでキンピラゴボウでも、と包丁を手にしたところ、想定外の困難にぶち当たった。
包丁で切れない!
包丁で切れない!
想定以上である。河原で抜くときに一本折れて、その時の感触と見た目から、固いんだろうなという気はしていたが、もはや野菜の域を凌駕した固さだった。
折れた時、「木」としか言えない固さが手に走った。
折れた時、「木」としか言えない固さが手に走った。
中心はまさに木材で、いくら押しても全く切れる気配がない。なのに傷ついた表面からニンジンの匂いはするのが、また切ない。
しょうがないから大ハサミで切断。剪定か。
しょうがないから大ハサミで切断。剪定か。
この根っこの細いところを選んで、小さく刻んでみた。
これを油で炒めてみようと思う。
どう見てもゴボウですが、ニンジンです。
どう見てもゴボウですが、ニンジンです。

木の棒になった。

ニンジンのごま油炒め(ただしノラ)
ニンジンのごま油炒め(ただしノラ)
出来上がったノラニンジンの油炒め。
さっそく食べてみる。
むぎーーー。
むぎーーー。
ふんぎーーーーーー。
ふんぎーーーーーー。
木の棒を口にくわえた感触しかしない。
端的に言えばつまようじだ。つまようじを噛みしめている感覚だ。ノラニンジンは油で炒めると、つまようじになることが分かった。
というわけで圧力鍋の登場となる。
圧力鍋、つまようじに勝てるのか。
圧力鍋、つまようじに勝てるのか。
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圧力鍋で、無言の圧力をかける

根の断面。オレンジの点線の内側が固いところ。
根の断面。オレンジの点線の内側が固いところ。
この中心部は、はっきり言って、何をどうしようと食べられる兆しが無いぐらい固い。しかし、その周囲は包丁でも切り込むことができる。まだ可能性があるように思えた。
この部分なら食えるかもしれない。
最後の切り札・圧力鍋で、不良ニンジンことノラニンジンに無言の圧力をかけることにした。
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食えなくはないね。
食えなくはないね。

ノラニンジン、むしろ甘い。

かじったノラニンジンの柔らかい部分は、たいへん食物繊維に富んでいて、甘く、ニンジンの香りがした。
ちょっとえぐくてアクもあり、ワイルドだけど、ハンバーグの横にくっついているあのニンジンの味だった。
分離させた芯と周囲の可食部。
分離させた芯と周囲の可食部。
もっと細かくたとえると、焼き芋のいちばん端の筋ばっている部分の味である。
もってりとした甘さ、舌触りの悪い食感、甘ったるい匂い、かなりのところまで焼き芋の端に似ている。
食えなくはないけど、あまり食いたくないこの味。全然誰にも勧められないが、ギリギリのところで「食べられた」と言えるのではないか。
うむ、食える、これは食える。
というわけでノラニンジン、なんとか食えた!と判定して、今回の挑戦を終わりとしたい。

これからも雑草野菜、食うよ!

これで原種を食べるシリーズ4回目となったが、最もハードな味であった。
食べたときは良かったが、寝る前に鼻の奥からワイルドなニンジン臭が漂ってきて、壮絶に気分が悪くなった。
ニンジン嫌いの気持ちがわかった気がした。
しかしこんなことにもめげず、人類の祖先を想うために、これからも野菜の原種は追って行こうと思うのでよろしくお願いします。
第一回:雑草の実で作ったお粥がうまかった
第二回:1万年前のトウモロコシでポップコーンを作る
第三回:雑草のハトムギでお茶とご飯を作る
きんぴらにしようと思ったゴボウ、むなしく余る。
きんぴらにしようと思ったゴボウ、むなしく余る。
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