お祓いの手順。
今回お祓いにやってきたのは、神奈川県相模原市にある照天神社。
住宅地の一角にひっそり佇む、アットホームな雰囲気の神社です。
照天神社外観。
奉献されたお酒がたくさん。
こじんまりしてますが、14~5人座れます。
ここで、簡単にお祓いの流れをご説明しましょう。
1. お悩みヒアリング。
お札が載った檜作りの台に持参した携帯電話を置き、事前に伝えている名前や住所の確認とお祓いの内容についてのヒアリングがあります。
どうしてお祓いしようと思ったのか等、参拝者と神主さんが1対1でしっかり話し合います。
お札の横にこんなもの載せていいのかと心配になりました。
2. お祓い準備待ち。
ヒアリング終了後、少しの間神主さんが祈願の準備に入ります。
準備が整うのを待ちましょう。
神主さんが正装で登場したら、お祓いタイム開始です。
3. 清めと祈願。
お祓い本番のスタートです。
大麻で携帯や私の頭上を清めてくれたり、お祈りを捧げてくれます。
ていうか、お清めに使う棒状のものが「大麻(おおぬさ)」という名前だと知っていましたか。私は知りませんでした。
携帯や私の頭の上でシャカシャカしてくれました。
私の携帯がうやうやしく運ばれています。
お祈りを捧げてすっかり清められた後、手元に帰ってきます。
お祓い本番自体は、10~15分くらいです。
きれいになって戻ってきた携帯電話。
4. お祓い後のお土産
お祓いが終わると、神主さんから紙袋を手渡されます。
お札、お守り、お神酒。
お祓いによって清められた状態を守ってくれそうな、頼もしいグッズですね。
そんなグッズの中でも、神主さんが特にお勧めするのはお神酒だそうです。
「うちのお神酒、評判いいんですよ。」と神主さんイチオシ!
『携帯電話のお祓い』という冗談みたいな響きなのに、結構ちゃんとしたお祓いですよね。
物珍しさメインでお邪魔したのですが、お祓いが終わる頃には携帯だけでなく私の心も清められたような、穏やかで静謐な気持ちになりました。
どうやら変わった神社らしい。
ここ照天神社は日本初、そして唯一携帯電話のお祓いをしている神社です。
その時点で十分に変わっているのですが、実はそこ以外にも一般的な神社のお祓いと異なるところがいくつかあるようです。
そちらは追々ご説明するとして、そもそも何故携帯電話のお祓いを始めようと思ったのか聞いてみました。
「携帯電話って人の縁をつなぐ道具でもあるし、人の心そのものでもあるんですよ。嫌な電話がかかってきたら、好きな人からメールがきたら、着信と一緒にあなたの心も動くでしょう?」
と仰る照天神社宮司・金子さん。
「だから、お祓いすることでその人の抱える問題が見えてきます」とのこと。
時代に取り残されない本当に必要とされる神社を目指した結果、現代人にとって身近な存在である携帯電話のお祓いにたどり着いたそうです。
電話という道具を介した人間関係に悩む方が多く訪れ、お祓いを通して、そういった人々の話を聞いて相談に乗っています。
「特に恋愛の悩みが多く、お祓いに来る9割は女性ですね」
私は「携帯が壊れたので供養したい」という特に悩みが存在しない理由なので5分程度で終わりましたが、人によっては1時間近くお話される方もいらっしゃるのだとか。
それぞれの悩みによって神様への祈願も変わってきます。
ここも、普通の神社とは大きく違うところです。
お祓いにきた参拝者と宮司が1対1で1時間も話すようなことは普通は考えられないし、ここまでじっくり参拝者と向き合うことはまずないそうです。
また、こちらの神社のお祓いは予約制で事前に電話やメールで申し込みをするようになっていますが、それも参拝者ひとりひとりと十分な時間をとって向き合うため。
『本当に必要とされる』という目的のためです。
「大阪から新幹線で来る人もいるし、東北からという人もいます。どこもやっていないことだからうちに来るというのもあるでしょうが、逆に、どこもやっていないことだからこそ私がやろうと思っています。
どこかがマネして同じこと始める前に、『携帯電話のお祓い』で商標登録しておいた方がいいかな?ハハハ」
人の心の近くにありたいという思いはお神酒にも表れています。
『幸運のワイン』。赤ワインでした。
お神酒がワインだなんて他の神社でまず見かけませんが、これにも理由があります。
「若い人たちにとっては、日本酒よりもワインの方が身近だし飲みやすいでしょう?その方が神社を身近に感じてもらえるし、何よりワインを渡したら皆喜んでくれますからね。
ウチのお神酒、ホントに美味しいんだよ。帰りにつまみ買って、今日の夜にでも飲んじゃって!あ、よく冷やしてね!」
携帯電話のお祓いもワインのお神酒も奇抜な試みのようでいて、実はその根底には確固たる信念がありました。
情熱の神主・金子さん
Webサイトで自身を『情熱の神主』と称する金子さんは、以前は大きな神社で働いていたこともあるそうですが、理想の宗教とのあまりに違う実情や人間関係の問題などいろいろな問題を経験し、紆余曲折の末20数年前にここにやってきました。
「その頃はこれしか無くてね」
の、『これ』。
2坪の土地の小さな祠のような神社に4万円の元手でやってきても、不安な気持ちはほとんどなかったそうです。
祭壇を買って4万円を使い切ってしまっても、
「むしろワクワクしてたね。ここを俺が大きくしてやるぞ!って」
という前向きな姿勢を崩さなかった金子さんは、その決意のとおり、5年後には6坪、10年後には80坪と徐々に神社を大きくしていきました。
今では全国各地から人が訪れる人気の神社となり、テレビや雑誌等各種メディアで紹介されることも多いそうです。
当時4万円で買った祭壇。
掲載された雑誌や書籍が置いてありました。
熱い情熱をもって神社運営に取り組んできた努力が認められてきたということですし、神社も大分広くなっていますし、もはや成功を収めたと言ってもいいのではないかと思いますが、金子さんに今後の目標を聞いてみました。
「ここを、今の2倍くらいの広さにしたいよね」
死ぬまでに神社の広さを今の2倍にして、祭壇をもっと金ぴかで豪華なものにするのが目標だそうです。
昨今の風潮としてガツガツせず欲を持たない方がスマートでかっこいいと思われがちだし、そもそも聖職者というと悟りを開いて達観していそうな印象ですが、そんなイメージの真逆を行く言葉でした。
現状に維持せず前進していこうという情熱と参拝に来た人に驚きや喜びを与えたいという思いが伝わってきて、それは神社としてどうなんだろう…なんてツッコミも忘れ、「頑張ってください!」と思わず応援してしまいました。
「人生を無難にやり過ごすだけなんてつまらない」
「理不尽なことに立ち向かえるように、殴られたら殴り返せる体作りのためにボクシングを始めた」
という、聖職者らしからぬ考え方を持つ金子さん。
この神社のことを記事にしてもいいですか?と伺うと
「もちろん!どんどん宣伝しちゃって!! もし記事のおかげで参拝者が増えたらバックマージンあげないとね、フフフ」
と快諾してくれました。
こんなにパワフルな宮司さんにお祓いしてもらったら、悩みを持つ人も背中を押されて前向きになれそうです。
「最後くらいはちゃんと神職っぽくしないと」と表情を改めた金子さん。
パワフルかつ、繊細な方でした。
壊れた携帯電話との最後のメモリアルとしてお祓いをしてもらいましたが、なかなかどうして面白い経験ができました。
金子さんは言葉だけ聞くと変わった人だと思われるかもしれませんが、実際に変わった方ではありましたが、自分の信念を貫くパワフルな人でありながら、たくさんの人の悩みを聞いて弱っている人の心に寄り添おうとする繊細な人だと感じました。
人のためになる神社を目指して、より大きくしたい、より多くの人に知ってもらいたいという貪欲な姿勢を、私も今後見習っていきたいと思います。
そうそう、「うちのお神酒は美味しいよ!」との言葉のとおり、お神酒はとても飲みやすくて美味しかったです。
お酒弱いのにひとりでハーフボトルを開けてしまいました。
取材協力:照天神社
〒252-0135 神奈川県相模原市緑区大島563-2
電話番号 (042)-751-1043
メール
[email protected]
※お祓いは予約制ですので、ご希望の方は事前にお問い合わせください。