発明家って憧れの職業だよね
「発明家」に憧れがある。
小学校の図書館にあった「発明百科」みたいな本にトーマス・エジソンをはじめとした数々の発明家&発明品が紹介されていたのだが、彼らが発明に没頭するあまりに引き起こしてしまったクレイジーなエピソードと、その後のサクセス・ストーリーに「大人なのにこんなメチャクチャな人たちがいるのかッ!」と感銘を受けまくっていた。
んで「ボクも発明をッ!」とか思ったものの、何からはじめたらいいのか分からないので、とりあえず時計を分解したりしてオヤジからぶん殴られたものだ。
「発明家」「科学者」あと「マッド・サイエンティスト」の区別がついてないです
しかし今の日本にエジソン的な、いわゆる「発明家」っているのだろうか? 企業で研究開発している人の中にはそーゆー人もいるのかもしれないけど、どっちかというと「発明家」というよりは「開発者」って感じがするし……。
現在、日本における「発明家」ってアレでしょ? かかとのないスリッパをはいてダイエット……的な、そんでそれが商品化されて数億円儲けた的な、いわゆる「主婦発明家」みたいな人たちが主流でしょ。
主婦発明の代表格
もちろん、主婦発明家のみなさんたちも、日々研究開発を行って発明品をクリエイトしているという面では偉大だと思うのだけれど、例のかかとなしスリッパの大成功があまりにも有名になってしまったため、「何かを生み出さずにはいられないッ!」というほとばしるパッションからの発明というよりは、「商品化&ボロ儲け」みたいな願望が先行している人が多いような気がして、イマイチ興味を持てないのだ。
まあ、そういうのが一番興味持たれるんだろうけど
一方、主婦発明家と比べてメディアなどでの注目度は低めなものの、男性の素人発明家というのも沢山いて、こちらはなぜか「ボロ儲け」狙いというよりも、自らの表現衝動に突き動かされるがままに発明品を生み出し続けている「へんてこ」寄りな発明家が多いような気がする。「○○町のエジソン」って呼ばれているような、変なものばっかり作ってる人って大抵おっちゃんだもん。
ボク的にはそんな、お金にもならない、何の役にも立たない、そしてたぶん作ったおっちゃん自身にも全くメリットがない珍妙な発明品の方が、手ぶらで傘をさせたり、洗濯機の糸くずをとれたりする発明品よりも遙かに魅力的に思えるのだ。
モーツァルトは「浪花の」くらいしかいませんけどね
……そんな感じで最近、珍発明に興味を持っているのだが、そういや昔ちょろっと絡んだことのあるおっちゃんが珍妙な発明をしていたなぁ……と思い出し、今回は久々に連絡を取って取材させてもらうことにした。
何だかスゴイ発明家登場!
今回、紹介するおっちゃんは、その昔ボクがスタッフをやっていた某ネット番組に出てもらったことがあるのだけれど、自宅に伺うのははじめて。
都内某所のこんなアパート在住
明らかにアパートの共有スペースと思われる場所にまで発明品があふれ出してるよ!?
け……研Q所!? 「研究所」ってことよね、たぶん
ほい、この人が今回紹介します発明家・高橋宏三(ひろみ)さん
色々と気になるところがありまくりではあるものの、まあ、百聞は一見にしかずとも言うし、とりあえず高橋さんの発明品を実際に使用している様子を見てもらおう。
一体……!?
おおうッ……。何というか、ちょっとひと言では表現しがたい感じの……まあ、あまり工夫せずに言ってしまうならば「どーかしている」としか名状できないこの姿!
一体、コレは何をするための発明なのかというと、見て分かるように……いや、分からないだろうけど、陸上でも水泳の練習をすることのできるマシーンなのだ。
その名も「スイマーセン」……ダジャレですよ
で、裏側を変形させて足を長くすると
うつぶせになってクロールの練習もできます
おっちゃんは「この他にも平泳ぎ、バタフライの練習ができるよ!」と言っていたが……コレで練習して、その気になって海に繰り出してブクブクおぼれちゃったとしてもボクは一切責任取りたくない。自己責任ッ!
ユーモア発明のデパートやッ!
ダイナミックな背泳ぎを披露するおっちゃん
さて、いきなり腰を抜かすほどヴィジュアル・ショック全開な写真が登場してしまったが、この方が発明家の高橋さん!
ユーモア……という言葉で済ませてしまうには、あまりにもユニーク過剰な発明品をいっぱい生み出してしまっているおっちゃんなのだ。
謎の発明品がビッシリ
おっちゃんの作り出したユニーク発明のリストを見せてもらったのだが、もう、どこから突っ込んだらいいものか悩んでしまうほど、大量のどーかしている発明品が。
「踊る発明家のヒネった ユーモア発明のデパート(なんじゃこりゃコーナー)」……
先ほどの水泳練習マシーンはこんな感じで紹介されている
「平泳ぎ」「背泳ぎ」あたりは分かるけど「ク・ロール」「バッタンフライ」って……冗談なのか、ガチで間違えているのか判断しかねるところ。
ちなみに、大半の人が気付いていたかと思うけど、板や手足に巻き付けている物体はホース。
「どうしてホースなんですか?」と聞いたら「だって直接、板の上に寝たら痛いでしょ? 手足が道路にぶつかったら痛いし……」とのこと。は、はぁ……(だから、どうしてホースなんだろ?)。
「間違っても己の玉だけは打つな」という熱いメッセージ
この他にも気になる発明品がてんこ盛りで、全部見せてもらいたくて仕方がないのだが、すべての発明品を完成状態で保管しておくスペースはないため、気が済んだら分解したり、廃棄しちゃっているものも結構あるようだ。
……ということで、とりあえずパッと使える状態にある発明品を次々と見せてもらうことに。
目まいがするほど珍発明
棒の先にタコちゃんが吊されたような発明品
棒を背負って……
そこら辺を走り回る!
走り回った振動で、タコの足部分に取り付けられた木の玉が頭にビッシビシ当たりまくって痛そう……。でも別にコレ、マゾ的なプレイのための道具じゃないですよ。
なんと、このビッシビシで頭皮に刺激を与えて発毛を促進するという発明らしいのだ……ホントかよ!? 逆に毛根を叩きつぶしちゃうような気も……。
「こんなツルッツルだった頭も」
「こんな風にフッサフサになるんだよ!」
な、何か真緑のキモチワルイ髪の毛が生えてますけど!?
この発明品は「ハゲ山森林化グッズ」という名前なんだそうで、まあそこから「森林のように髪がフッサフサ生えてきた」という効果をビジュアル化したイラストなんだろうねぇ。
えらくおおざっぱな設計図
続いて、最近完成したばかりだという最新発明品を見せてもらうことに。その名も「ツチノコ・ツッチー」!
ツ……ツッチー…………?
えーっと、えーっと……。設計図から想像していたものとはちょこっと違う、すさまじくアヴァンギャルドなカラーリング。ツチノコってこんな色なの!?
そして、この「ツチノコ・ツッチー」どのように使うのかというと。
上に寝っ転がります
そうして……
伸びたり縮んだりすることによって前に進むという乗り物なのです!
「面白い動きでしょ?」
う……うん、確かに面白い動きだけど、おっちゃん自身の方がその80倍くらい面白いよ!
面白いですよ、そりゃ!
フツーに考えれば、こんなおっちゃんが地べたに寝っ転がってクネクネしてたら即・通報モノだと思うが、ご近所の人たちはもう慣れっこらしく、何事もなかったかのように脇を通り抜けて行っているのが印象的だった。
まだまだ続くヨー!
棒の先にサッカーボールと謎の物体がぶら下がった発明品。これを装着して何をするかというと……
走る! 走るッ!
ドリブルドリブル! ナイッシューッ! オーレーオレー……
そして、上の物体をパンチ! パーンチ!
この発明品も使用している姿は相当どーかしているが、何やってんのかというと、サッカーとボクシングを同時に練習しているとのこと。
コレさえあれば、サッカー部とボクシング部の両方から勧誘されているというような上杉達也のようなケース(アレは野球部とボクシング部だけど)でも安心だ!
「股間に棒が食い込んで痛いんだけどねぇー」とのこと。そ、そうでしょうねぇ……
ひとりでサッカーの練習ができる発明品「ドリブル・ワン」を改良したものらしいです。……なぜそこにボクシングを足した!?
まだまだ出てくる珍発明!
さて、屋外の撮影を終え(ボクが恥ずかしくなっちゃったので)高橋さんの「研Q所」を見せてもらうことに。
この研Q机で数々の発明が生み出されているのだ
ちなみにコレは、自転車のペダルをこぐことによって、モチをつくことができる発明の試作模型。ペ~ダ~ルをこ~い~でぇ~……。
気付くと、おっちゃんが身体に変なものを巻き付けている!?
ヒモに木片がくくりつけられたようなものですが
コレを全身に巻き付けて、どうするかというと……
踊るッ!
踊るッ!
おっおっおっ! アソーレソーレソーレ!
ブハハハハーッ! な、何やってるんすか、おっちゃん!?
ア然としているボクを尻目に、オリジナルソングらしき歌を口ずさみながらダンシング・オールナイト状態で踊り狂うおっちゃん……サバトだサバト!
ラップだったのか……
この発明品は「踊りゃんせダイエット」といって、装着して踊ることによって木片が全身に刺激を与えてマッサージ効果で痩せるという優れモノらしい。
「駅前なんかでやると特に効果が高いね。人に見られて恥ずかしいから血行がよくなるでしょ?」
え……駅前でやれないよッ、こんなこと!
こちらもダイエット器具。板の上の玉を落とさないように運動すると痩せるらしい
ゴルフとパチンコを組み合わせた新遊具「ゴルパチ」
パターゴルフの要領で玉をこの穴に入れるんですが、盤面に書かれたメッセージが味わい深い
実はスゴイ発明家でもあった
このように、へんてこな発明ばっかしているように見えるおっちゃんですが、実はスゴイ発明もしているのだという。
おっちゃんのマトモ系発明の代表作がコチラ!
野菜の皮をむくピーラー
ええーっ、ピーラーなんてウチにもあるよッ! スッゲエエエェェ!
もともとピーラー自体は存在したのだけれど、一台で薄むき&厚むきをできるように改良したのはおっちゃんなんだそうな。
この改良版ピーラーは商品化されて大ヒットし、数億円も売り上げたらしい。なんだー高橋さん、ボロ儲け系の発明家でもあったんじゃないですかぁ~!
こちらもマトモ路線の発明品、栗の皮むき器「びっ栗むきまる」……ネーミングにおっちゃんセンスの片鱗が
――もともと、どうして発明家になろうと思ったんですか?
「昔は子ども用玩具の開発をしてたんだけど、ああいうのってヒット商品を作ってもすぐにマネされちゃうのね。だから特許を取れるようなものを作っていかないと意味ないかなぁって思って発明家になったんだよ」
――はじめは普通の発明をしていたんですか?
「フリーの発明家になって最初に開発をはじめたのがピーラーね。 完成して商品化されるまでに3年くらいはかかったけど」
――あ、じゃあいきなりヒットを飛ばしたんですね。相当儲かったんじゃないですか?
「いやぁ、あれで特許料を一億円くらいもらえるなら嬉しいんだけどさぁ。そこまではもらえなかったなぁ……」
オモシロ路線の第一弾「夕焼け味噌ピストル」
味噌を溶かすためのピストル。……まだ実用性が高め。名前はクリント・イーストウッドの『夕陽のガンマン』より(おっちゃんの好きな映画)
――ユーモア発明をはじめたきっかけは?
「まあ、息抜きだよねぇ。真面目な発明ばっかりしているとツライから……。でも、最近はユーモア発明ばっかりになっちゃってるんだけど。やっぱりこういうヤツの方が注目されるでしょ! ……お金にはならないけど」
いやぁ、億単位を売り上げるマトモ発明よりも、オモシロ&注目を重視してユーモア発明ばっかり作ってしまうおっちゃん、ステキです。
ここで、おっちゃんが現在開発中だという衝撃的な発明品のアイデアを見せてもらうことができた。それがこちら!
その名も「まいう~鼻メガネ」
グリグリメガネに鼻をくっつけたような見た目のこの発明。一体、どんな役に立つのかというと……。
人の感覚とはそこまでいいかげんだろうか!?
視覚、嗅覚を勘違いさせることによって、キライな食べ物でもカンタンに食べられるようになれるという優れもの! ……おっちゃんの理論上は。
現在はまだ開発中……グリグリメガネ買って来ただけじゃん!
実用性があるかどうかはともかくとして、とにかくすさまじいばかりの創作意欲で発明をしまくっているおっちゃん。
しかし、おっちゃんのクリエイティビティーは発明だけにとどまっていないのだ。
イラスト。妙にかわいらしいのがまた……
本。おっちゃんの親世代の戦争体験を題材にした自主制作本らしい
作詞・作曲
何というか……マルチにもほどがある! まさにハイパーメディアクリエイター!
この年になっても「まだまだ色々やりたいことがいっぱいあるんだけどねぇ、時間が足りなくて!」と語るおっちゃん。
この、ほとばしり過ぎているバイタリティ……見習いたいものだ。
クリエイターかくあるべし
お金を目的に、まあ仕事として何かを作り出すのも大変だとは思いますが、お金にならない、役に立たない、誰も得をしないものを作り続けるモチベーションってどこからわき出てるんでしょうか!?
ホント、仕事で色んなことをやったり、色んなところに取材に行ったりしていると「これはネタにならないからやらない」「あそこは記事にできそうにないから行かなくていいや」みたいな考え方になりがちなんですが、おっちゃんのノー見返りで物作りしている姿を見てちょっと反省しました。これこそがクリエイターのあるべき姿だよ!
まあ、発明品自体はどーかしてると思いますけどね!
なんと、おっちゃんが作詞した歌を『孫』の大泉逸郎さんに歌ってもらってCDを作ったこともあるんだとか……スゴイ行動力!