特集 2022年5月12日

ラーメン界のおかゆ「揚子江ラーメン」を食べられるだけ食べる

大阪には「揚子江ラーメン」がある。どんぶりの底が見えるような澄んだスープは鶏ガラと豚骨のダシが効いた塩味で、麺は細めのストレート。あっさりさっぱりした味わいで、どんな時に食べても「そう、これこれ」と思わせる。

その「揚子江ラーメン」にはいくつかの支店、のれん分け店がある。それらの店舗を淡々とめぐり、それぞれの店の揚子江ラーメンを食べてみた。するとどうでしょう。お店ごとに細かい違いがあることがわかってきたのだった。

大阪在住のフリーライター。酒場めぐりと平日昼間の散歩が趣味。1,000円以内で楽しめることはだいたい大好きです。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーとしても活動しています。(動画インタビュー)

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二日酔い気味の昼に食べた揚子江ラーメン

ちょっと前のある日、友達と大阪・梅田で待ち合わせた。「お昼ご飯を一緒に食べよう」と数日前から約束してあったのだが、その日、私は前夜に酒を飲み過ぎたせいで二日酔い状態だった。

「大丈夫?」と友人に心配されつつ、私は「揚子江ラーメンに行くのはどうだろう」と提案し、近くの店舗を目指した。地図アプリを立ち上げて調べてみると「揚子江ラーメン」の支店がいくつか表示されたので、最も近い「揚子江ラーメン 林記」という店に行くことに。

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大阪市北区兎我野町にある「揚子江ラーメン 林記」

私は一番シンプルなメニューである「揚子江ラーメン」に排骨がトッピングされた「特製排骨麺」を注文した。

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スープの透明感を見ていただきたい

済み渡ったスープ。ダシの風味と繊細な塩加減。細くプツプツと歯切れのいい麺。「ああ、たまらん」と、私はこの一杯のおかげで自分が復調していくのを感じた。

で、卓上に置かれたメニューを見ながら、「こんなに色々な料理があるんだなと思った」。

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右上には「特製魚肉すり身だんごスープ」なんてあるぞ

そして「揚子江ラーメン」が好きだと思っていながら、その全貌をまだまだ知らない自分を痛感したのであった。店を出た私は友人に宣言した。「揚子江ラーメンってあちこちにあるよね。俺、片っ端から食べてみるよ!」と。それを聞いた友人は、「へー」と言っただけだったが、私の決意は固かった。

「揚子江ラーメン」とはそもそも何なのか

さっきから繰り返し書いているその「揚子江ラーメン」だが、もともとは1964年に梅田に総本店がオープンし、そこで修行した方がのれん分け店を出したり、フランチャイズの支店が増えたりしていったようである。

しかし、大阪市北区角田町のビルの地下にあった総本店は2020年の4月に閉店してしまった。源流となる店がすでに失われてしまっているのだ。

ちなみに私はかつて週刊誌でラーメン紹介記事を書いていたことがあって、その仕事で「揚子江ラーメン総本店」を取材させていただいたことがある。

穏やかな雰囲気の店主が、「揚子江ラーメン」の前身は「揚子江飯店」という中華料理店であり、そこで提供していた中華スープがベースとなって生まれた味であることを教えてくれた。鶏と豚骨から出るダシの強弱はその時の仕入れによって違うので、そのバランスを見極めるのが大事であるとのことだった。あっさりしたスープにでもよく絡むようにと、麺は細いものを選んだそうだ。

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その時に食べた「揚子江ラーメン」

取材をした2015年当時、具材は水菜、もやし、小ネギと薄くスライスされたチャーシューといった構成で、もともとは水菜のかわりに菊菜(「春菊」ともいうが大阪では「菊菜」と呼ばれることが多い)が使われていたらしかった。写真には撮っていなかったが、揚げタマネギ(フライドオニオン)が別皿で提供され、それを加えると香ばしい風味が一気に広がるのも特徴だった。

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当時「揚子江ラーメン総本店」を取材して作ったページ
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かつて「揚子江ラーメン総本店」があった場所は美容院になっていた

とにかく、その総本店は今は無くなってしまったのだが、それでもまだ幸いなことに、揚子江ラーメンの支店、のれん分け店は大阪市内にいくつも残っており、そこを訪れれば今でもその独特のラーメンを食べることができる。

まずは「揚子江ラーメン名門 神山店」へ

「揚子江ラーメン」を片っ端から食べ歩くと宣言し、まずやってきたのが「揚子江ラーメン名門 神山店」だった。ちなみに現在、「揚子江ラーメン」には「揚子江ラーメン」と「揚子江ラーメン名門」と「揚子江ラーメン林記」の3つの系統が存在している。

「揚子江ラーメン名門」と「揚子江ラーメン林記」は総本店からのれん分けしてオープンしたお店で、その「揚子江ラーメン名門」の大阪市北区神山町にある支店が「揚子江ラーメン名門 神山店」ということなのである。

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「揚子江ラーメン名門 神山店」です
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看板はラーメンとチャーハンと餃子の写真が並ぶ

カウンター席に座り、すぐにラーメンを注文。

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静かなムードの店内

メニューを見てみると、こっちには排骨系の料理は無いようだ。

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あ、でも右上の写真「名門特製ラーメン」にトッピングされているのは排骨かな…?
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他のお客さんが結構な割合で「とり唐揚げ」を注文していたのも気になった

さあ、「ラーメン」が運ばれてきた。

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透明なスープ。乗っているのは菊菜ではなく水菜のようだ
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極細の麺。キシッとした食感のチャーシュー
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卓上にはフライドオニオン。後半に入れるのが楽しいのだ

夢中になって食べてしまった。さっぱりした味わいだから、食べ終わっても胃がもたれるような感じは皆無。もう一杯おかわりしたくなるような感覚なのである。

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壁には「揚子江」の文字が並ぶ古めかしい書が飾られていた

会計を終え、すぐ近くにある「揚子江ラーメン名門」の前まで行ってみる。

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「本日はお休み」とのこと

この日は定休日だったのだが、店の外からも見えるようになっている食品サンプルの「ラーメン」の価格が800円。

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あれ、値段がさっきと違うな

さっき食べた「揚子江ラーメン名門 神山店」のラーメンは600円だったから、そこからして違う。

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こっちには「排骨メン」があるようだし……

同じ「名門」の名を持つ店で、目と鼻の先ぐらいの距離なのにこうも違うのである。めぐり甲斐があるというものだ。

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なんとなく記念撮影しておくか
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次に「揚子江ラーメン日本橋店」へ

日を改めてやってきたのは大阪市浪速区日本橋にある「揚子江ラーメン日本橋店」だ。2021年5月にオープンしたばかりの新しい店舗である。

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「揚子江ラーメン日本橋店」です

ここは入口入ってすぐの場所に食券の販売機があって、先に食券を買う方式。

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メニューも色々あるようだけど
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600円の「ラーメン」を。
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新しいお店だからというのもあってか、ちょっとシックな、おしゃれな雰囲気の店内

ラーメンが運ばれてきた。

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これもまた綺麗だなー!

量は控えめだが、上に乗っているのは菊菜である。私は揚子江ラーメンに菊菜の香りがアクセントをつけてくれる感じが好きなので嬉しい。

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白くて細くて美しい麺だよなー

麺をすすっていると、店員さんがフライドオニオンとなんと辛子高菜を持ってきてくれた。

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高菜もあるなんて!意外!

フライドオニオンは揚子江ラーメンの定番トッピングだけど、辛子高菜とは!大喜びで両方入れてみたのだが、あっさりスープに高菜がめちゃくちゃ合うので驚いた。

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これは最高の組み合わせじゃないか

乗っているのが菊菜だったり水菜だったり、トッピングが微妙に違ったり、メニューの幅広さにも差があったり、ひと言で「揚子江ラーメン」と言っても各店に個性があるのがわかってきた。

そのまま「揚子江ラーメン難波店」へ

「揚子江ラーメン日本橋店」で美味しいラーメンを食べた後、そのままの勢いで「揚子江ラーメン難波店」へやってきた。小食の私が2杯立て続けに食べられるのもまた、揚子江ラーメンならではかもしれない。

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「揚子江ラーメン難波店」です

この「揚子江ラーメン難波店」は2021年5月オープンで、さっき食べた「揚子江ラーメン日本橋店」の数日後に開店している。そう聞くと、中身の似た店が立て続けにオープンしたように思うけど、さっきの「揚子江ラーメン日本橋店」は食券制だったのに対し、こっちは後会計式で、メニューの数も多いようだ。

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丼ものや
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一品料理が充実している
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「豚バラ丼」や
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「マーポ天津飯」といったオリジナルメニューも

とはいえ、私の注文は例のごとく「ラーメン」である。

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ラーメンの見た目はさっき食べたものと似ている。

ここも水菜ではなく菊菜が乗っていた。

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麺も同じように細く美しい。

卓上にはフライドオニオンが置かれていたが、辛子高菜は無かった。いやー、細かな違いがたくさんあるなー!

今度は「揚子江ラーメン名門」へ

またまた日を改め、ちょっと前に来た時は休店日だった大阪市北区堂山町の「揚子江ラーメン名門」へやってきた。

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「揚子江ラーメン名門」です

ちなみにこの店、私が以前デイリーポータルZに書いた“「優しい味」って実際どんな味なのか確かめたい”という記事の、大トリを務める「優しい味」としても取り上げさせてもらったことがある。この店舗に来るのはかなり久々だ。

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オープン直後に一番乗りしてしまった

壁に貼られたメニューを見るに、割とその数は少なく、厳選されている印象。

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これはこれで、いいんだよなー。

ラーメンを注文してしばし待つ。運ばれてきました。

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菊菜もチャーシューもたっぷり

ここ「揚子江ラーメン名門」のラーメンは他店に比べると少し値段が上なのだが、それも納得の盛りの良さである。

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ワシャワシャっと食べる感じがたまらない
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どんぶりのフチの「名門」マークもかっこいい

食べ終え、メニューの端の方に「持ち帰りスープ230えん 生メン200えん」と書いてあるのが目に入った。持ち帰りができるならぜひ!と思い、お店の方に聞いてみると、残念ながら「切らしている」とのこと。「また作っておくから今度よろしくお願いしますね!」と言ってもらった。

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その次は「揚子江ラーメン大池橋店」へ

次にやって来たのは大阪市生野区中川にある「揚子江ラーメン大池橋店」だ。梅田や難波あたりに集中している系列店が多い中、少し外れた場所にある。大阪メトロ千日前線の北巽駅で下車し、そこから徒歩15分ほど。

店の周辺には「揚子江ラーメン ココ入る!」と目立つ駐車場案内の看板が出ていたり、液晶モニタを使ったデジタルサイネージ的看板も設置されていたりして、気合を感じる。

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揚子江ラーメンここにあり!という迫力を感じる看板
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ついつい見とれてしまう液晶モニタ

揚子江ラーメンの中で唯一(だと思う)公式ホームページを持っているのもこの「揚子江ラーメン大池橋店」であり、そこからして他店とは違う感じなのだ。

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店の外にも目立つポスターなどが掲示されていて気分が高まる

店の外に設置された券売機で食券を買って入店するシステムになっている。

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ラーメンのボタンを押しながら券売機の他のボタンを見てみると
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2食入り500円の「お土産用生ラーメン」があったのでこれも買う

店内にもメニューが置かれており、それを見てみる。

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メニューひとつとっても店ごとに違うな
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「キクナ大盛り」なんてトッピングメニューもある

運ばれて来たラーメンには一面が覆われているぐらい菊菜がたっぷり。

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何も知らずにこのラーメンに出会う人は結構驚くんじゃないか
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麺はもちろん極細ストレートな感じ

卓上には「フライネギ」とテプラの貼られたフライドオニオンがあって、さらに紅しょうがも用意されている。

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「フライネギ」という文字列、なんかいい
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フライドオニオンと紅しょうがを一緒に乗っけられるのはこの店ならでは

メニューには「とんこつラーメン」もあるので、紅しょうがは本来そっちに入れるべくして用意されているのかもしれないが、しかし、あっさりした揚子江ラーメンにもすごく合う。徐々に足していって味を濃くしていけるという楽しみがある。

会計を終え、「お土産用生ラーメン」を渡してもらった。

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パッケージに「大池橋店」とプリントされていることから、この店のオリジナル商品であるとわかる
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裏面にはこのスープを活用した「チャンポン」「玉子スープ」の作り方も

お守りとして常に財布に入れておきたいショップカードもいただく。

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なんか御利益ありそうでしょう?

そして今度は「揚子江ラーメン林記 お初天神店」へ

「まだあるの?」と思っている方がいるかもしれないが、まだあるのだ。もう少しだけお付き合いください。

再び梅田方面へ戻り「揚子江ラーメン林記 お初天神店」を訪れた。大阪市北区曾根崎、歓楽街の一角に店舗がある。

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周囲には飲み屋がひしめいていて賑やか

この店舗、面白いのが「やきとり りんき」という焼き鳥店も兼ねているところだ。

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「揚子江ラーメン林記 お初天神店」の同一店舗内に「やきとり りんき」もある
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この店でお酒を飲んで、締めにそのままラーメンを食べることも可能

とはいえ、もちろん「揚子江ラーメン林記 お初天神店」として、美味しいラーメンを食べるために利用してもいい。

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丼もの、一品料理も色々あるな
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卓上には店名を彫り込んだ箸立てが置かれていて迫力あり

運ばれてきたラーメンには水菜が乗っている。

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これが「揚子江ラーメン林記 お初天神店」のラーメン

菊菜も好きだけど、シャキシャキした水菜もまた良いなと、だんだんそう思えてきた。もやしの歯ごたえもシャキシャキで、ちょっと柔らかめの麺とのバランスがよかった。

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もちろん途中でフライドオニオンを入れます

私が入店したのは夜帯の営業が始まったばかりの18時過ぎで店内も静か。きっともっと夜が深まるとだいぶ雰囲気が違うんだろうと思った。

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もう一丁「揚子江ラーメン緑橋店」へ

「揚子江ラーメン林記 お初天神店」を食べた足でさらに「揚子江ラーメン緑橋店」へやってきた。大阪市東成区中本にある店舗で、ここも「揚子江ラーメン大池橋店」同様、他の店舗より少し外れた場所と言えるかもしれない。

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夕闇に輝く看板が素敵
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外観の感じは「揚子江ラーメン名門 神山店」に近い気がした

店内に置かれているメニューも「揚子江ラーメン名門 神山店」や「揚子江ラーメン難波店」で見たものとかなり近い(でもじっくり比べるとちょっと違うのがまた深い)。

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メニューのフォーマットが「揚子江ラーメン名門 神山店」と同じだ
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裏もそっくりだ

もしかしたら「揚子江ラーメン難波店」や、ここ「揚子江ラーメン緑橋店」は、「揚子江ラーメン名門 神山店」の流れを汲む店なのかもしれないぞ。まあ、今はあまり考えないでラーメンを食べよう。

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上に乗っているのは水菜だな

たまたま運がよかったのかもしれないがチャーシューの端っこに当たり、これがすごく美味しかった。

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厚みもあってやわらかくていいチャーシューだった
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澄んだスープにフライドオニオンを投げ入れる、この瞬間がやめられないのよ

ラーメンのどんぶりを運んでくれたお店の方が「熱いから気をつけてくださいね!」って言ってくれたり、なんだかアットホームな温かみを感じる店で、そこもよかった。

ちなみに私はこの日、昼に「揚子江ラーメン大池橋店」、夜に「揚子江ラーメン林記 お初天神店」と「揚子江ラーメン緑橋店」を続けて、と、一日に合計3杯の「揚子江ラーメン」を食べている。スケジュールの調整ミスでそういうことになったのだが、しかし、考えてもみてください。これ、普通のラーメンチェーンだったら似た味のラーメンを3杯も食べられなくないですか?揚子江ラーメンがいかにさっぱりとした、飽きの来ない味かおわかりいただけるだろう。

もう一息「揚子江ラーメン名門 高殿店」へ

一日に3杯の揚子江ラーメンを食べた翌日の昼、私は大阪市旭区高殿にある「揚子江ラーメン名門 高殿店」へやってきた。繰り返すが、そんじょそこらのラーメンチェーンだったら「今日はもういいわ」って思うであろうところ、揚子江ラーメンだから、食べるのがまた楽しみになっているのである。

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「揚子江ラーメン名門 高殿店」です

こちらはメニューからして一目で独自路線の店とわかる。

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手描き文字の踊るメニューの中には
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オリジナルキャラ(だと思われる)「ヨウちゃん」がいるし!
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函館の塩ラーメンまである

しかもなんと取材当日は、店長の手作りメンマが無料でサービスされる日だという。こんな揚子江ラーメンもあるんだなー!

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嬉しい驚き!

運ばれてきたラーメンには菊菜が乗っている。

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菊菜もたっぷりチャーシューも大きいしメンマも乗っていて歓喜

麺は少し黄味がかっていて、これまで食べてきた他店のものとは違っている。フライドオニオンは卓上には置かれておらず、希望の場合はお店の方に声をかけるシステム。そんなところにも違いがある。

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ちょっと中華麺っぽい感じの麺だった
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お願いすると別皿でもらえるフライドオニオン

ところどころに独自のものを感じる「揚子江ラーメン名門 高殿店」だが、店の壁を見上げれば、源流店から受け継いだものと思われるのれんが飾られていた。

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「揚子江ラーメン林記」で見かけたのれんの形だ

最後に「揚子江ラーメン宗右衛門町店」へ

2022年5月現在、揚子江ラーメンが食べられる店は残りあと一つ(だと思う)。「揚子江ラーメン宗右衛門町店」である。この店舗、2021年12月にオープンしたばかりの、今最も新しい店舗なのだ。

店舗は道頓堀の繁華街もほど近い大阪市中央区宗右衛門町にあり、建物のすぐ裏側を道頓堀川が流れている。

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入口は川の反対側にある
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緑色の看板が特徴的だ
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外観のカラーリングも他店と違っている

宗右衛門町と言えば“大阪を代表する夜の街”というイメージで、キャバクラやホストクラブが立ち並ぶエリアだ。酔客を見込んでか、「揚子江ラーメン宗右衛門町店」の営業時間は18時から深夜までとなっている。開店直後の客は私だけで、広い店内を独り占めした気分に。

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今風の中華ダイニングっぽい雰囲気
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「揚子江ラーメン林記 お初天神店」で見たのと同じ箸立てだ

メニュー表はこの店独自のもので、麺類以外に丼もの、一品料理も多数。

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「締めにもう一杯飲んで食べる」みたいに使える店なのだろう
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酒類のメニューもたくさんある

ラーメンが運ばれてきた。水菜が乗っているところからも「揚子江ラーメン林記」系と思われる。

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何度見ても見飽きないラーメン(この日2杯目だが)
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水菜も菊菜もどっちも好きさ

ただ、メニューの端に「菊菜・水菜(季節により)50円」とあり、「林記系だから水菜だ」とは限らず、季節に応じて旬のものを採用しているのかもしれない。

お会計をお願いすると「500円です」と言われた。メニューには750円と記載されていたので「あれ?」というと「今、サービス中なんです」とのこと。得したついでに、壁に貼ってあったお持ち帰りメニューについて聞いてみる。

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スープを300円で、生麺を200円で持ち帰ることができるようなのだ

すると、「はい、できますよ!」とのこと。ラーメン用のスープを目の前で容器に入れて、生麺と一緒に渡してくれた。

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アツアツの揚子江ラーメンのスープ片手に大阪の町を行く

他にも揚子江ラーメンが食べられる場所があるのではないか

さて、こうして私の揚子江ラーメンめぐりは一旦終わったのだが、さらに調べていくと、揚子江ラーメンの本店あるいは系列店で過去に修行をした方が開いた店もいくつかある(あった)ことがわかった。

たとえば、JR新大阪駅からほど近い、大阪市淀川区西中島の「大王」という中華料理店は、店主が揚子江ラーメンで修行をした方で、そのままの味を守ったラーメンを提供しているという。

今回、その店も訪ねてみたのだが、残念ながら現在移転準備中らしく、店は閉まっていた。

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移転後の再開を待望しています

残っていた看板にラーメンの写真があって、それを見るにまさに揚子江ラーメンだ。

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左下のラーメン。菊菜が乗った揚子江ラーメンそっくりである

また、話がいきなり大阪の外に飛ぶが、福井県福井市には「真竜ラーメン」というラーメン店があり、ここも揚子江ラーメンで修行された方が、一目で(一口で)それとわかるラーメンを提供しているそうだ。

「揚子江」という店名を掲げていなくても、あの味を引き継いでいる店が他にもあるかもしれない。そう考えると、まだまだ先が見えなくなってくる。というか、揚子江ラーメンの一つの店舗とっても、食べたことのないメニューが山ほどある。キムチラーメンを出している店も、カレー丼を出している店もあるのだ。ゴールはまだまだ遠い。目まいがするが、なんだか嬉しい。


大阪らしい食べ物というとたこ焼き、イカ焼き、串カツとか、ホルモンとか、色々とあると思うのだが、「揚子江ラーメン」はそこに加わってもいいほど独特のラーメンなんじゃないか。

私はもっと引き続きこの魅力的なラーメンを掘り下げていきたいと思う。

もし大阪に観光に来る方がいたら、スケジュールのどこかに「揚子江ラーメン」を入れて欲しい。あっさり味なので居酒屋で飲んだ後でもいいだろう。きっと大阪のイメージに新しい色合いが加わるはずだ。

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