選挙カーが出していいのは時速100キロくらいまで
撮影協力:袖ケ浦フォレストレースウェイ、株式会社アドバンス
選挙カーは街をゆっくりと流しながらスピーカーで候補者の名前や主張を道行く人に伝えるのが役目である。
もしあの選挙カーのスピードが速かったらどうだろう。候補者の主張は何キロくらいまで聞こえるのだろうか。
サーキットを借りて本気で走らせてみました。
※この記事の本編はLINE NEWSに掲載されていますのでどちらもお楽しみください。
これまで選挙に出馬したことがある人は知っているかもしれないが、選挙カーは一般人でも借りられるのだ。正確にいうと借りるというよりも作る、といった方が近いかもしれない。
今回、実験のために専門の業者にお願いして選挙カーを1台作ってもらった。それがこれである。
うむ、立派な選挙カーである。
候補者役にはスーツが似合う人がいいだろうと思い、ライター西村さんにお願いした。特に詳細は話さずにスーツできてほしい、とだけ伝えて待ち合わせしたので、これを見た時にはなぜおれが選挙に?と驚いたことだろう。
気持ちの整理をつけてもらうため、その足で国会議事堂の前までやってきた。
最初はびびっていた西村さんだが、さすがである。すぐに観念してポーズを決めてくれた。西村候補、誕生の瞬間である。
ちなみに今回、選挙カーの業者にたすきとポスターも作ってもらったのでその気になれば本当にこのまま立候補できる。
しかし今回は記事に政治色を出したくなかったので、キャッチコピーは「好きです!県境」とぼやかした。西村さんが県境好きだからだ。そして選挙区分としては「国会議員候補」である。日本国籍を有し、衆議院は25歳、参議院は30歳以上であれば誰もが候補ではあるから間違いではない。
西村候補、これから奥さんをピックアップする必要があるというので、せっかくだからこのまま行くことにした。
西村さんの奥さんは前にも突然結婚写真を撮ったりしたことがあり(あれも僕の企画だった)、もはや少々のことでは驚かないだろう。西村さんは「逃げるかもしれないな」と言っていたが、そんなことないと信じている。
選挙カーには強力なLEDライトもつけてもらったので、これも全開で迎えに来た。
さすが候補者のご家族である。多少あぜんとした程度で特に取り乱すでもなく、選挙カーに乗り込んできてくれた。懐の深い家族を持つこと、これが厳しい選挙戦を勝ち抜くための条件なのかもしれない(てきとうに言ってます)。
選挙カーは候補者を下ろしてしまうと、運転している分には普通の車だった。ただ、信号待ちなんかで窓に写る姿を見ると、これがただの車じゃなかったことを思い出す。
撮影は翌日である。今日は僕はこの車で帰って明日の朝まで家の前にこれを置いておくのだ。普段から近所ではなにやってるのかわからない人と思われているふしがあるが、いよいよ自分でもわからなくなってきた。
今回、選挙カーを速く走らせるのがミッションである。
しかしさすがに公道でやるのはまずいだろう。この車でスピード違反とかで捕まると言い訳がしにくい。候補者が気を付けなくてはいけないのは公職選挙法だけではないのだ。
というわけで千葉にある本気のサーキットを借りた。
この日、サーキットはからりと晴れてスピード日和だった。
僕たちがサーキットに到着するとすでに本気のスポーツカーたちが走行会をしていた。当たり前だが本気の人たちのスピードはすごい。くわえて音もすごい。「ブオーン」ではなく「ビイイイイン」といった感じだった。およそ僕たちが普段乗っている車の音ではない。
ここに我々は選挙カーで乗り付けている。
結局この状態のままアクアラインを走ってきた。昨日の夕方からそこらじゅうに出没したので、もしかしたら記事の公開前にTwitterで話題になってるかもな、と思い「西村、DPZ、選挙」などで検索してみたけど特に騒がれている様子はなかった。自意識過剰とはそんなもんである。
ところで、サーキットを借りたからといって誰でも速く運転できるわけではない。そこには速く走らせるための技術が必要である。今回は安全を最優先に考えて、普段このサーキットを走っているというドライバーさんに運転を依頼した。横田さんである。
せっかく選挙ポスターも作ったので、気分を盛り上げるためにサーキットの控室を借りて選挙事務所にした。こうなったらやれること全部やるぞ。
それではさっそくサーキット走行に移りたいと思う。行きましょう、先生。
上の写真では普通の選挙カーに見えるが、逆側、運転手側から見ると完全におかしい。
選挙カーには候補者の主張を道ゆく人に届けるための音響設備が備わっている。これにも出していい音の大きさが決まっているらしく、最大にしても法に触れない範囲で装置を組んでもらった。
映像とサウンドをちゃんと検証するため、カメラマンと音響さんもプロにお願いした。
それではさっそく行ってみよう。選挙カーによるサーキット走行は、もしかしたら人類に民主主義が浸透してから初めてなんじゃないだろうか。
そう考えるとこれもひとつの歴史的瞬間である。
選挙カーは演説をしながらゆっくりとサーキットを一周し、最終コーナーを曲がったあたりから見たこともない加速を始めた。
来るぞ。速い選挙カーが、来る。
撮影のため、僕も選挙カーに同乗させてもらっているのだけれど、見た目以上に中はアクティブだった。なにしろ車の背が高いので、横風がなくてもカーブでものすごい外側に振られるのだ。ドライバーの横田さんはそんなことお構いなしに縁石ギリギリを攻めてくれる。
選挙カーは時速30キロから20キロずつ、速度を上げながらサーキットを周回した。
周回を重ねるたび、ドライバー横田さんは絶好調になっていき、われわれ候補者は口数が減っていった。軽々しくサーキットを走りたい、なんて言うもんじゃないなと反省しました。
撮影協力:袖ケ浦フォレストレースウェイ、株式会社アドバンス
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