古い料理の写真といっても色々あるとは思うんですが、今回私が言っているのは例のよしださんが佐久で買ったおみやげのパッケージのおむすびみたいなのとか、あとは古い本や雑誌のカラーグラビアに載ってるような感じのものです。
古い料理写真は「そういう撮影方法の写真」なのでは
最近、当サイトでは技術班としてお世話になっているテクノ手芸部のよしださんのおみやげを見て声が出た。
なんという良い古さか……。
みると普通に現代の印刷機で刷られているようだ。
ということは「古い」と感じるゆらいは印刷技術の古さや劣化などではなくあくまでも「写真の雰囲気」「そういう撮影方法の写真」だから、だ。
似た話だが、雑誌「暮らしの手帖」はたしか2006年くらいまで古い質感の写真を掲載していた。
2006年というと、冒頭に書いたウェブマスターの記事の1年前だ。写真はすでに「新しい」質感になっていた。「暮らしの手帖」はその時点でなお「古い」風の写真を掲載していたことになる。
当時それを見て、ああこういう写真は物理的に古いのではなく「そういう撮影方法の写真」なんだな、と思った覚えがある。
ならば現代でもそのような手法で写真が撮れるんじゃないか。
どう撮ると古くなるのか教えてもらおう
ではどう撮られた写真を脳は「これは古い写真だ」と判断するのだろう。
私はカメラにはまったく疎く撮影技術にも理解が大変に乏しい。
そこで前述のよしださんと、編集部の安藤を招集した。
カメラを愛し長く写真撮影を楽しみに生きてきた2人である。
この二人が本気でカメラや写真の話をはじめると丸腰の私はなに言ってんだかいっこも分からなくなる。お二人にはできるだけ平易な言葉で説明してもらうようにお願いした。
カメラファンの方にはぬるいと感じる部分もあるかもしれませんが、どうかご了承ください。イベントなどで二人に会ったら濃いめのカメラトークを振ると喜んで応答してくれると思います。
全体にピントが合うと古く感じる
ぼくが昔に紙媒体でお店紹介とか書いてた頃はレストランのコースの全品ならべて、全面にピントあててバチっと撮るとか、そういう特殊なリクエストでした。
ピントっていうのは対象に対して垂直に合うんですよ。でもそれを垂直じゃなくて斜めにできるカメラがあるんです。それでピントを手前にも奥にも全部合わせる。
Instagramの料理写真とかいまの料理写真はボカしてなんぼなところありますが、昔はそうじゃなかった。
ボケボケの料理写真を見ると「全面にピント当てろって先輩に習わなかったのか」と思います。
全面にピントを合わせる
そもそも対象が古い
古くからありそうな食べ物を撮る、古い食器を使う
いまでは料理写真であまり使わない色の背景紙を使う
背景紙を10色持ってきました。物撮りをするときに普段よく使うんです。黄色とか使うとそれだけで写真がポップになります。
最初のおにぎりの写真も背景紙が緑だったからもしかしてと思いまして。
思い切った色の背景紙を使う
コントラストを出したライティング
コントラスト出したライティングで撮る
2018年の食べ物を1970年っぽく撮る
ある程度条件がそろって仕上がってきた。ここまでのTipsをふまえ2018年の食べ物を1970年っぽく撮っていこう(よしださんが)。
写真を見て鳥肌が立つという体験を今までしたことがなかったように思うが、今回はぞわっときて腰も浮いた。
これは古いぞ!
あとはもう、フィルムで撮る
そもそも今回撮ろうとしている写真って、暗い部分の階調が潰れ気味だったりする感じとか、彩度が高めだったりとか、ある種のフィルムの特徴でもあると思うんです。
だから、コダクロームは手に入らないわけですが、ためしにちょっとフィルムでも撮ってみましょうって思いました。
思い切ってフィルムカメラで撮る
最後にそのよしださんのフィルムの一眼レフでメンバーを撮りまして今回の記事の話者アイコンとした次第です。
なんだこの「なにもかもが美しい」という気持ちは
時代は回る。
ださいものもいまやだいたい2周目の評価がきてかっこいいとかかわいいといわれる世の中である。
このまま周回数がどんどん増えて私たちはどこへ行くんだろう。
今回再現する目標にあげた古い写真はどれもかっこよかった。そして再現した写真もうまくいったものは魅力的に撮れた。
2018年の商品1970年風に撮るぞという企画っぽい企画のわりに美の多様性について明るい気持ちになった。
いつの時代のものも、なにもかもが美しい。