特集 2019年4月11日

エレベーター専用改札にダンジョンを感じる

分類してみたら3つのタイプがありました

新宿駅や大阪駅など複雑な構造のターミナル駅をダンジョン駅と呼んだりする。確かにどの改札を出たらどこの出口に出るのかが分かりにくい様はまさにRPGのダンジョンと呼ぶにふさわしい。

しかしもっと小さいスケールで見てみると、駅にはダンジョンっぽい場所が色々ある。中でもエレベーター専用改札が見れば見るほどダンジョンなのだ。

どういうことなのか、一緒に確かめてほしい。

1992年東京生まれ。普段は商品についてくるオマケとかを考えている会社員。好きな食べ物はちくわです。最近子どもが生まれたので「人間ってすごい」と本気で感じています。(動画インタビュー)

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エレベーター専用改札口のタイプは3つ

RPGのダンジョンにはよく「鍵のかかった扉などで閉ざされておりその先に進めない狭い空間」が出てくる。

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それっぽい画像をパワポで作った。この画像でいうと真ん中の勇者がいる空間が今回取り上げる「ダンジョンっぽい空間」

せっかく階層を移動したのに画面が切り替わるとそこから先は進めない小さな空間が広がるだけで泣く泣く前の階層に戻るしかない、というのはRPGでよく目の当たりにするシーンだろう。

そして「エレベーターとそれ専用の改札だけがある空間」がそのシーンを彷彿とさせる。

もちろん我々は切符やICカードという「鍵」を持っているので、多くの場合は封印を解いて先に進めるわけだが、ICカードの残額が足りず改札を通れない時などはまさにダンジョンの罠にはまった感覚になる。

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駅構内図で見ると画像真ん中の空間がそれ。右側のスロープと階段が隣り合っている表示が高床式住居みたいに見えるのもいいな。

この「エレベーターとそれ専用の改札だけがある空間」はなぜか地下鉄に多いように感じるので、まず東京メトロの全ての駅の構内図をWEB上で確認したところ、全部で11の駅でその存在が確認できた。

この11駅を見てまわったところ、エレベーター専用の改札は「はぐれ改札」「あべこべ改札」「ニアミス改札」という3つのタイプに分類することができた。それぞれ見ていこう。

最も一般的な「はぐれ改札」タイプ

エレベーター専用の改札が用意されている最も一般的な要因は、多くの人が利用するメインの改札がホームの両端(もしくは片端寄り)にあり、かつエレベーターはホームの中央寄りにあるためにエレベーター専用の改札が作られるパターンだ。

このパターンではメインの改札とエレベーター専用改札の距離が物理的に離れているためはぐれ改札という名前を勝手につけたい。

このタイプは数が多く、11駅中6駅がはぐれ改札だった。その中でも特にダンジョン度が高いのが有楽町駅だ。

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有楽町駅/有楽町線がダンジョンっぽいなと思ったのがこの記事を書くきっかけでもある
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エレベーターと改札、それを囲むガラスの仕切りだけのミニマムな空間

正直写真だとあまり伝わらない気がしてならないが、このダンジョン感、伝わるだろうか。

この有楽町駅の良さは一面も壁が接していないところだ。通路の真ん中がいきなりガラスで仕切られてエレベーター専用改札が出現しているのである。

つまり改札内の空間が島のように通路の中に浮かんでいるようなもので、ホームからエレベーターを使ってここに出ると、外の通路と隔絶された特殊な空間に出てしまったような不思議な感覚を覚える。

この外の世界とは隔離された狭い空間にいる感覚がダンジョン感ということなんだと思う。この感覚、伝わっているだろうか。

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改札内から見た様子。ここまで来てICカードの残額が足りなかったら「RPGかよ」と声に出して悪態をついてしまう。

写真を撮っている間にもホームからここまで来たもののICカードの残額が足りず再びエレベーターに乗って別な改札へと向かう人がいた。まさに都会に潜むリアルダンジョンである。

ダンジョン感が伝わっているか不安だがどんどんいこう。

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月島駅/有楽町線 はかなりスペースは小さめ

 有楽町駅は一面も壁のない特殊な配置だったが、多くのはぐれ改札は月島駅のような作りになっている。

はぐれ改札タイプのエレベーター専用改札で大事なのはスペースの大きさである。このスペースはなるべく狭い方がダンジョン感が高まる。月島駅はなかなか良い狭さだ。

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エレベーターを出ると目の前にすぐ改札。エレベーターを降りたらすぐ改札を出ろという無言の圧力を感じる。

RPGのダンジョンでもあの空間には閉ざされた扉と階段以外何もない。エレベーター専用改札もシンプルであればあるほどダンジョンっぽさを感じてしまう。

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二重橋前駅/千代田線はスペースがやたらと広い。広すぎるとダンジョン感は少ない。
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京橋駅/銀座線もそれなりに広めのスペース

京橋駅と二重橋前駅は広さもさることながら、エレベーター専用改札口内にちゃんと精算機が設置されていた。精算機があると仮にICカードの残額が足りなくてもここでチャージ出来てしまうので、お金が足りなくてエレベーターでホームに逆戻りというイベントは発生しない。

これだとさらにダンジョン感は損なわれてしまう。いや、駅の利便性を考えれば良いことしかないので本来損なわれるべきものなのだが、今後どの駅も改修によってダンジョン感が薄れていくとしたらちょっと悲しい。

なおさら今のうちにダンジョン感を味わっておかなければいけない。

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半蔵門駅/半蔵門線は精算機ではなく車いす用トイレが改札内にある珍しいパターン

面白いのがはぐれ改札タイプの変わり種、千駄木駅だ。

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一見これまでと同様のエレベーター専用改札に見えるが…
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なんと出口までエレベーター専用に作られているのだ

改札だけではなく出口まではぐれてしまっている。こんな風になっているのは東京メトロでは千駄木駅だけだ。

もちろんここは精算機も改札内に設置されているし、改札内のスペースもそれなりに広いので、ダンジョン内の閉ざされた空間という感じはない。

どちらかというと、地上と改札とエレベーターが同じ階層に並んでいるためダンジョンの入り口っぽさがある。そうか、「東京メトロ」という巨大な地下ダンジョンの入り口が実は千駄木駅にあったのか。これからは千駄木を「はじまりの土地」と呼んでいこう。

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ちなみに千駄木駅のこの改札は曜日や時間帯によっては窓口に誰もおらずカーテンまで閉まっているので都内なのに無人駅っぽさを感じることもできる

改札外にエレベーターの「あべこべ改札」タイプ

次は改札を出た先の出口がエレベーターだけのタイプだ。エレベーターが改札の外にあるのと中にあるの、どちらが正ということもないのだが、数としては圧倒的に改札内にエレベーターがあるパターンが多いので、改札の外にエレベーターがあるこのタイプはあべこべ改札と呼びたい。

このタイプは町屋駅と新高円寺駅の2ヵ所で見つけた。

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町屋駅/千代田線のホーム中央の改札。振り返ると…
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そこには地上行きのエレベーターが待ち構える
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パノラマで撮影するとこんな感じ

残念ながらこのタイプはほとんどダンジョン感はない。「改札外」としての機能を果たすべく券売機が設置されているので、誰でも改札に入ることができる。

駅としてはそうでなくては困るのだが、これでは閉ざされた空間の疑似体験はできない。これが券売機もなく、改札を出たらすぐにエレベーターということであればかなりダンジョン感は高くなっただろう。

しかしそれでは不便すぎるしクレームの嵐だ。冒険が越えられない便利さの壁がここにある。

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新高円寺/丸の内線も町屋駅と同じような構造。ダンジョン感はない。

エレベーターとエレベーターをつなぐ通路もいいぞ

少し脇道にそれるが、駅の中でいうとエレベーターとエレベーターをつなぐための通路もなかなかのダンジョン感なので紹介しておきたい。

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中野新町/丸の内線の構内図。エレベーターとエレベーターをつなぐための通路がある
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実際の通路がこれ。奥にエレベーターがあるが振り返ってもそこにはエレベーターがある
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パノラマで撮るとこんな感じ。エレベーターから降りてエレベーターに乗る人しかここを通らない

純粋にエレベーターとエレベーターをつなぐためだけの通路だ。エレベーター専用改札も狭い方がダンジョンっぽさを感じられることから言っても、要素が限られたミニマムな空間にダンジョンみを感じるのかもしれない。

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これは後楽園駅/都営三田線 基本的には同じ作り
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こちらは王子神谷駅/南北線 一番さびれていて強めのモンスターが出てきそうな通路だ

エレベーターとエレベーターをつなぐ通路はどこもほとんど人の往来がなかった。閑散としているというのもダンジョンらしさをアップする要素かもしれない。

常にここに立っているおじさんとかがいたらもう完全にダンジョンだが実際にいたらマジで怖い。話しかけたら秘伝の粉みたいなやつをくれるかバトルになる(めちゃくちゃ強い)かどちらかだろう。

個性豊かな「ニアミス改札」タイプ

閑話休題。最後のタイプを見ていこう。

一番数の多いはぐれ改札タイプはエレベーターの位置関係的にメインの改札とは離れた位置にあった。そうではなくメインの改札とも近い位置にあるのに駅構造の関係でどうしてもエレベーター専用改札を作らざるを得なかったものも少なからず存在する。

こういったタイプはメインの改札と接近しているということでニアミス改札とこれまた勝手に命名しよう。

このニアミス改札タイプはそれぞれの駅の構造に左右される部分が大きいので、他のタイプよりも個性豊かな点が特徴だ。

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まずは原木中山駅/東西線 かなり立派な面構えではある

エレベーター専用改札としてはかなり広々とスペースが取られており、扱いが立派だ。にも関わらず精算機も設置されておらず、空間としてのミニマムさは保たれている。

これまでの流れでいくと広いスペースが取られているとあまりダンジョンっぽさは感じられないのだが、こんなに広いのに精算機を置かないあたりにダンジョン感を残そうという気概を勝手に見て取りたい。

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エレベーターを出ると目の前にメインの改札も見える

このニアミス改札タイプはエレベーター専用改札からメインの改札が見えることも少なくない。原木中山駅でもエレベーター専用改札の目の前にメインの改札があり、なんとか駅構造を調整して同じ改札に出来なかったものかと思ってしまう。

そしてこの構造だと、エレベーター専用改札を出ようとしてICカードの残額が足りなかった時のダメージがでかい。すぐそばに見えているのに一度エレベーターでホームに戻りメインの改札へ回らなければいけないからだ。

目の前に見えているのにどうしようもできない、という状況が生まれやすいニアミス改札は、はぐれ改札に比べてもダンジョン感が強くなる傾向にある。

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氷川台駅/有楽町線もニアミス改札タイプ

氷川台駅のエレベーター専用改札は精算機がない、空間が小さい、目の前にメインの改札が見えている、と三拍子そろっておりかなりダンジョン度が高い。有楽町駅のような派手さはないものの着実に点を稼いでおり好感が持てる。

たくさん回っているうちに、だんだんとひとつの作品を見ているような気分になってきた。枯山水を見ているような気持ちだ。いっそのことエレベーター専用改札観賞用の縁側とかを設置してもらってもいいですかね。

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個人的にはベストダンジョン賞をあげたいダンジョンクオリティ

氷川台駅の正統派っぷりとは反対に独自の進化を遂げたニアミス改札も存在する。

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それが門前仲町駅/東西線 一見すると普通のエレベーター専用改札だが…
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エレベーターから改札までの距離がやたらと長い

ホームと改札階をつなぐエレベーターと改札までの距離が長いというこれまでになかったパターンだ。ここまで通路を伸ばすならなんとかメインの改札と同じ改札にする術がありそうなものだが、色々難しいのだろう。

エレベーターとエレベーターをつなぐ通路も彷彿とさせるが、精算機が設置されてしまっているので、ダンジョン感としてはそこそこの評価である。

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長い通路を歩かせた後に「チャージが足りないから戻ってね」となるとクレーム必至なので精算機の設置は正しい判断だと思います

さて、これで東京メトロのエレベーター専用改札11駅は制覇することが出来たのだが、最後に東京メトロではないがかなり良いエレベーター専用改札を見つけたのでこれも見てほしい。

東急田園都市線の池尻大橋駅だ。

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池尻大橋駅/田園都市線 少し分かりづらいので注釈を入れた

この駅もメインの改札の目の前にエレベーター専用改札があるニアミス改札タイプなのだが、この駅は上りと下りの各ホーム用にエレベーターがあり、なんとエレベーター専用改札もそれぞれに用意されているのだ。

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構内図を見た方が分かりやすいかもしれない

狭いスペースでエレベーターと改札、そして通路をどのように配置するか悩みぬいた結果、のぼり用とくだり用のエレベーター専用改札がシンメトリーに向かい合う美しい配置が生まれたのだろう。

人の作為が見え隠れするこの配置は洞窟などではなく城や研究所など建物系のダンジョンっぽさがある気がするがどうだろう。その辺りを語るにはもう少しサンプルがないとダメかもしれない。

まだまだ奥が深いぞ、エレベーター専用改札。


まだ見ぬエレベーター専用改札を求めて

最後に僭越ながら今回見てまわった中から個人的なベスト3を選んでみた。
 
第1位:氷川台駅
ダンジョンらしさを感じられる要素がバランスよく存在しており、王道の良さがある
 
第2位:有楽町駅
壁に全く接していない特異性と芸術点の高さを評価
 
第3位:池尻大橋駅
シンメトリーの美しさでエレベーター専用改札のポテンシャルを感じさせてくれた
 
という結果となった。しかしながら世の中にはまだまだたくさんのエレベーター専用改札があるはずだ。もっと色々なエレベーター専用改札を見てみたい。皆さんも「これは!」というものを知っていたら #エレベーター専用改札 でぜひ教えてほしい。
 
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有楽町駅エレベーター専用改札の近くにはたぬきの信楽焼をたくさん集めた「ぽん太の広場」という異様な空間もあるのでこちらもおすすめです。

 

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